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まずは小さく信頼する : マネジメントにおける信頼について

エンジニアリングマネージャーとして日々直面する課題やタスクは多岐にわたります。また、技術的な課題の解決からチームのモチベーション管理、プロジェクトの進行監督まで、多様な役割を担うのがマネージャーの責務でもあります。いかにマネージャーに技術的なスキルや経験が豊富であっても、課題に追われ責務を負う状況の中で真に価値をもたらすのは、人間関係の中核とも言える「信頼関係の構築」です。これができないと、状況や環境が異なる状況で対応できず、チームの調和や効率が大きく損なわれる可能性があります。

今回は信頼関係の構築、もしくは信頼そのものについて書き留めます。

信頼とは何か

さて、信頼とは一体何でしょうか?多くの定義が存在する中、私は信頼を「期待に答えてくれる可能性の高さ」と捉えています。それは、相手が自分を尊重してくれ、秘密を守り、正直に意見を伝え、そして依頼されたタスクを完遂できる能力を持つことを指します。
ただし、注意したいのは、信頼はお互いに良好な関係を持つための「いい感じのもの」ではなく、具体的な価値があるものとして捉えるべきであるということです。

アメリカの作家 Stephen M.R. Coveyは著書 "The Speed of Trust" の中で、

Trust is not merely a soft, social virtue: rather, trust is a pragmatic, hard-edged, economic, and actionable asset.
信頼とは、単にソフトで社会的な美徳ではない。むしろ信頼とは、現実的で、硬直的で、経済的で、実行可能な資産なのだ。

Stephen M.R. Covey "The Speed of Trust: The One Thing that Changes Everything"

と述べています。非常に重要な考え方だと思います。

「まず信頼する」というマネジメント

とはいえ、完璧な人は存在しないため、信頼は一朝一夕に築けるものではありません。信頼とは継続的なコミュニケーションや成功体験を通じてゆっくりと培われていくものです。

アメリカの小説家 Ernest Hemingway が残した言葉と言われているもので、

The best way to find out if you can trust somebody is to trust them.
誰かを信頼できるかどうかを知る最良の方法は、その人を信頼すること。

Ernest Hemingway

という文があります。(ただ、この出典を見つけることができませんでしたので、本当に Hemingway の言葉かは怪しいのですが。)

これが意味することは「信頼は過度な警戒や疑念に基づいてするのではなく、先に信頼することで、その信頼に答えうるかを確認するのが良い」ということです。

マネジメントの分野でも同様で「まず信頼する」ことが重要であると考えます。まずは信頼して任せ、相手の行動や言動が信頼に足るかを見極めるのです。信頼されたメンバーは「信頼されている」というだけで、仕事の質が向上します。その上で、本当に「期待に答えてくれる可能性の高さ」があるかを確認すればよいのです。

「まずは小さく信頼」し、信頼を積み重ねる

ただいきなり「先に信頼する」と言っても、諸手を挙げて信頼する、というわけにも行かないのがマネジメントの現場の現状です。そのようなときは、いきなり大きな仕事を前に信頼して任せるのではなく「まずは小さく信頼する」ことから始めてみるのも一つの方法です。タスクを小さく分け、その一部を信頼して任せる。そしてその後の結果を確認し、徐々に範囲を広げていく。そうすることでリスクを抑えながら、仕事の進行を早め、メンバーの成長を促進することができるようになります。

かつてのアメリカ大統領ロナルド・レーガンは、アメリカとソ連の関係について議論する際にこのことわざをしばしば引用していました。

Trust, but verify.
信頼せよ、されど確認せよ

Ronald Reagan

まさにこの言葉の通り、信頼し、確認し、そしてまた信頼する。信頼を積み重ねていくようマネジメントをすることが大事です。

失敗からの学び

もちろん、全てがうまくいくとは限りません。信頼関係を失ってマイクロマネジメントに走ってしまうこともあれば、過度な信頼にメンバーが答えられず大失敗することもあるでしょう。しかし、信頼は一度失敗して終わりではなく、繰り返し築き上げることができると考えましょう。一般的には、失った信頼を回復するのは難しいとも考えられます。しかし、失敗を受け入れ、双方が反省することで、深い信頼関係が形成されます。そしてその信頼関係こそが組織をより強固にする鍵となるでしょう。


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