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観るサイクリスト ~自転車映画レビュー~ 弱虫ペダル

ただの自転車好きが勝手に自転車映画を批評します。
基本的にネタばれを気にせずつらつらと書いていきますので、気になる方は注意してください。

『弱虫ペダル』

コミックス累計発行部数2500万部を突破した渡辺航氏による同名スポーツ青春漫画を実写映画化。監督は三木康一郎。出演は永瀬廉、伊藤健太郎、橋本環奈ら。

私は原作は読んでいました。アニメは2期まで。小説、舞台、ドラマは未鑑賞です。


原作漫画は映画向きではないのか?

まず、今回の話は序盤のインターハイ県予選までとなっていて、この判断は非常にクレバーで良かったと思います。インターハイが始まっちゃうと、いろんなキャラを描かないといけないですからね。2時間程度という尺を考えると、この判断は正解と言っていいでしょう。

で、この序盤に限っては、割と実写映画化に向いているんじゃないかと思っていました。というのも、鑑賞前に原作を読み直した結果、物語の肝が結構しっかりしていて、なおかつ結構映画化するうえで障害になりにくいんじゃないかなとか、感じてたんです。

その軸っていうのは①主人公の成長、②自転車関連シーンの説得力。
で、この2つというのは、別に漫画原作じゃなくても大切になるので、特別この漫画が映画化に向いていないってこともないんじゃないかと感じたわけです。
この2つがしっかりしていれば、問題ないだろう。

と思っていたんですが。。。。


ポイントはクリアしていると思うけれど、、、

※ここからは口語調で書かせていただきます。

実際に観てみて、漫画の映画化ってそんなに単純な話じゃないんだなーと、すごい感じましたねー。前述した2つの軸は割と描けているように思うんです。ですが、全然映画に入り込めなかった。。。
というのも、原作をそのまんま実写化した結果、違和感しかないようなシーンが多発していて、それがめちゃめちゃノイズになってるんですよ。

例を挙げていくとキリがないんですけど、例えば小野田君と今泉君が最初に会話するシーン。初対面の人に「おい、メガネ。勝負しろ。」って声かけるんですけど、こんな失礼なヤツいるか⁉いまどき田舎のヤンキーだってこんな言い方しないでしょ。(笑)
ココだけ見ると、今泉君は完全に狂人なんだけど、そのあとは割と普通の常識人っていうね。

で、その時後ろの女子たちが「きゃー、カッコいい!!」みたいなこと言って騒いでるんですよ。なんかよくこういうシーン見るけど、もうやめない!?非現実的すぎて興ざめだよ(笑)
まぁ、今泉君が女子にモテモテっていう設定が後に生きてくるとかなら分かるんですけど、やっぱりそんなことないっていうね。

あと一年生ウェルカムレース。終わった後に負けた鳴子くんが、夕日に向かって叫ぶっていうシーンがあって、これが絵面的に超ダサいシーンになっちゃってるんだよね。というか、なんであんなに悔しがってるのか説明がないから「えっ?」みたい思わざるを得ない。ちなみに、原作だとギャグっぽいサラって流すシーンなんだけど、映画では無駄に長ぇ。(笑)

最後に、寒咲幹の隣にいる橘綾。原作だと自転車オタクの寒咲幹にツッコミを入れるキャラクターなんです。でも、今回映画版に出てくる寒咲幹って、そんなにオタクっぽさなくて、存在意義が……。寒咲幹がいるシーンに毎回出てくる割に、毎回ピントが合ってないから逆にスゲー気になるんだよね。(笑)
で、この橘綾が小野田君に「あいつあんな堂々としてたっけ?」って言うところがあるんだけどさ、これは映画的に表現しようよ。セリフにしちゃ白けちゃうよ。
この橘綾っていう登場人物はこのセリフを言う以外の役割が一切ないんですよね。この違和感しか残さないセリフを言うだけという超残念な役に成り下がってますね。

こんな感じで、ただ原作にあるという理由だけで、こんな違和感しかないようなシーンがあって、私にはこれが良作とは思えなかったです。。。

とはいえ①主人公の成長というのはブレずに描けているので、この点において、この映画を高く評価する方がいるというのは、理解できます。
また、②自転車関連シーンの説得力という部分も、、、まぁ悪くないような、、、気がしなくもないような、どうなんでしょう。(笑)

最後歯切れが悪くなりましたが、僕は気になっちゃったんです。


自転車映画として・・・気になる俺が悪いんだろうな

はい、②自転車関連のシーンについて、きになっちゃったポイントをいくつかに分けてみていきます。

ライディング的な部分ですが、やっぱり素人くさいと感じちゃうシーンが多いっすわ。
これに関しては、スポーツ車に乗らない方なら感じない程度には乗れているようにも見えるので、気にする俺が悪いんだろうとは思うけど、せっかくだから書かせてくれ。(笑)

気になるところたくさんあったんだけど、一番はやっぱり小野田君のハイケイデンス走法。実写として見せられるとちょっと無理があるし、無理してるのが映像として伝わってきちゃうんですよ。
どういうことかというと、ケイデンス上げ過ぎると足がついていかなくて、お尻が跳ねちゃうんです。慣れてない人だとケイデンス100とかでも跳ねちゃうし、うまい人だと120越えても跳ねないんです。下は参考動画。

で、映画の小野田君だけど。。。跳ねちゃってるんだよね。(笑)
あれ見ちゃうと、あっ無理してんだなとか思っちゃうんですよ。まぁ、自転車乗らない人からすれば、感じない程度なのかもしれないですけどね。こればっかりは私には分からないので、分かる方いたらコメントで教えてほしいくらいです。

次に、自転車そのもの。
これに関しては、おおむね原作を忠実に再現していて、変に思うことはなかったです。小野田君のママチャリを除いて・・・。
劇中で寒咲幹が小野田君のママチャリにフロントディレーラー付けたって簡単に言うんだけどさ、ってことはBB変えて、クランク変えて、シフター装着して、テンショナー付けてって思い付きでできる作業じゃないぞ。(笑)
というか、チェーンどうしてんだろ?厚歯?だったら、変速スムーズにいくのか?とか余計な思考が入っちゃって映画に集中できない!(笑)
ちなみに、映画で使用した実車の構成がワイズロードに載っていたので、リンクを貼っておきます。気になる方は参考に改造してみてもいいんじゃないでしょうか。


最後に、レース的な部分。

コレについて県予選の所で、不覚にも大爆笑してしまいました。
田所さんを逃げに入れたのに、なぜか鳴子くんに集団けん引を命じる金城。逃げにメンバー入れた意味ねぇ!!!!金城、お前無能か!
しかも、鳴子くんまさかの全力引き!!!!

さらに、田所さん逃げで他のチーム振り落として単独先行するシーンがあるんですよ!てことは、集団引かなければ逃げ切り勝利できてたじゃねぇか!(笑)

もう完全に自転車コントでした。(笑)

で、勝負どころの山に入って総北を他のチームが邪魔するみたいなところなんだけど、「いやっ、逃げ吸収してなくない!?」っていうね。お前らが逃げを追わないと、田所さん逃げ切っちゃうだろ!(笑)


まぁこれで、最後にしますが小野田君の100人抜きのシーンはそこまで気にならなかったです。というのも、エヴェネプールって選手が同じように勝負どころの坂の前で落車に巻き込まれて、そっからマジで100人くらい抜いたことがあったからです。日本語字幕の動画があったので、載せておきます。

映像はここで終わっていますが、こっから先頭に追い付いて、最後の20キロから一人抜け出して単独勝利という小野田君も真っ青な勝ち方しています。しかも、このレースはなんとジュニアの世界選手権です。(笑)


まとめ 映画って難しい

今回の映画は主人公の成長をしっかり描けていて、自転車レースも(雑な言い回しで恐縮ですが)素人にはバレない程度に迫力ある映像にできていると思います。ただ、どうしても細かい部分の違和感、あり得なさがノイズとなってしまうような作品でした。

まぁ、ぶっちゃけると、人気漫画の実写化・ジャニーズ主演という地雷臭しかしない映画ということを考えれば、まぁよくやっているのかもしれないですね。

ジャニーズか橋本環奈が好きで、自転車に全く興味なく、細かいこと気にしない方にはオススメです。

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