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シャングリラへゆく⑤人々を狂わす麗江の宴

理想郷のことを人はシャングリラと呼ぶ

雲南の香りに魅せられて僕は旅をした
冒険家が探し求めたシャングリラに想いをよせ
奥へ奥へ雲南省の秘境を旅した記録
「シャングリラへゆく」は第二部です
第一部「チベットへゆく」はこちらから

人々を狂わす麗江の宴

僕は雲南省 麗江古城に旅に来ていた

十数年前に初めて来た時に
知り合った旅館経営を始めようとする
黒竜江省出身の男性のちょうさんと出会い

彼は旅館ビジネスで成功し夢を掴んでいた
僕らは趙さんと再会し

1時間ほど昔話をしながら
お茶を飲んだ後、家に食事に誘われる
両親も麗江にいるので、皆で行く事になり
5人で趙さんの家に呼ばれた

趙さんの家は麗江古城から車で20分程離れた山の上

門をくぐると
大きな池と庭があり奥に母屋がみえ広さに驚いた

キッチンには4つの大きなテーブルが置いてある
まるでレストラン

台所と食事するスペース

5,6ある客間と何個かの茶室
まるで旅館のような家

何個かの茶室がある

話を聞いてると毎日、誰かが宿泊に来るらしく
知り合いや友人や、商売仲間やら
本人の知らない人まで
長期滞在していくらしい

部屋も旅館なみに綺麗だった

もちろん宿泊費は無料で掃除などの世話役もいる

麗江に来る前に趙さんから 
なんで ここに泊まらないの?と聞かれたけど
どんな家かも知らないので
流石に気を使うし悪いと思って遠慮していた妻
趙さんは
旅館をキャンセルし今日止まればいいよ
というけど流石に今さらなので
ご飯食べたら古城の宿に戻るよ となる

食事まで時間があり庭の茶台で
また、お茶会

趙さんは
見たことない水タバコの木製パイプを取り出し
ぷかぷかと吸い出した

大きな木製のパイプで水タバコを吸う趙さん

初めて見る人はみんな驚くらしい
ぶくぶくぶくと言いながら煙をはく

美味しい?と聞く前に デカくて邪魔だろ!という話で
盛り上がり、旅行に行く時は
持っていくのか行かないのかで議論!

そうこうしていると食事の準備も整いだし
料理人が呼びに来て僕らはテーブルに座る

食事に招待されたのは僕らだけと思いきや
先ほどからも数名が庭に居たり
次から次へと知らない人が
やってきてテーブルに座り
気が付けば、17.8人いる

大きな丸い中華テーブルが2つは埋まり
次々と料理も運びこまれ宴会が自然と始まっていく

ワインを継がれ乾杯

雲南の食は山の味覚
山菜料理が多く新鮮
そして この季節は松茸の収穫時期だったので
松茸を刺身で初めて食べた

松茸の刺身

香りが半端なく強く 昨日山で取ったモノらしい
雲南省は産地だけあって安い
そして、高級食材という認識もない
日本人が騒ぐから値があがってると言われた

食べる前からテーブルを囲む この人達は
一体だれ?と僕は思って妻に聞いても
いちいち紹介なんてしないのが中国流

そこにいるのが誰であろうと関係なく会話し
楽しく過ごせたら それでいい
仲良くなれば、連絡を聞けばいい

そんな感じで知らないものが集まり
お互いに自分の話をしながら
会話の中で少しずつお互いを
理解する事になる

古城で商売をしたいと思う人
趙さんの友人と名乗る人
この家に数か月前から住みついてる人
商売仲間で翡翠ひすいや石を売る人
商売仲間でお茶を売る人
商売仲間で旅館業をする人
観光地でバギーツアーを経営する人
麗江の夜のバーを仕切ってる人
公安の上層部
銀行の支店長
村役場の幹部
ワイン売りの女性
などなど

お互いに仕事の話や趣味の話をしながら
お酒をのみ宴をしていた

色んな人がいて、皆それぞれ会話を楽しみ
酒を飲み酔っていく

話が進む中で公安幹部の人が
自慢話を始める
俺の家系は愛新覚羅あいしんかくらの家系だ!
と言っている

愛新覚羅あいしんかくらとは少数民族の満民族まんみんぞく
の皇族家系の名

唯一中華を統一した少数民族で
最後の王朝 大清国だいしんこく
日本にも馴染みのある
ラストエンペラーこと愛新覚羅溥儀あいしんかくらふぎ
と名が同じ一族だという

彼らの一族は辛亥革命しんがいかくめい以後に紫禁城しきんじょうを追われたラストエンペラーの悲劇と共に漢民族に
地位を譲った後は内戦、その後は文革により
危機的状況に追い込まれ
愛新覚羅の名を捨て生き延びていく運命をたどる
愛新覚羅というだけで文革の餌食になり
名を捨てて生き延びていく

その時に金という名に変わる人が多かった

この大陸で負けるという事は数千年間の
歴史が物語るように滅亡へと追い込まれる
事を意味する

僕はそんなスゴイ家系の人なの?
サイン貰おうかな~といい
まさか麗江で愛新覚羅と会えるとは
半分冗談、半分本気でいうと

妻は、別に珍しくないから・・・と冷静
直系なら別だけど一族は各地に散らばり
名を変えて生きているからねと

孔子の村に行けば山ほど孔子いるから・・・
それと同じ
あなた あんなオッサンのサイン欲しいの?

まぁ溥儀ふぎの子孫なら欲しいけど
流石に麗江公安オッサンのサインは
要らないか(笑)
やけに冷めてる妻と単純な僕

そして一番興奮していたのは
実は妻の父だった

妻の名はりゅう
父も そんな公安幹部の
自慢話に興奮していて
酒の勢いで余計な事を言い出した

俺の家系も 漢民族の劉邦りゅうほうの家系だ!
自慢気に胸をはる

劉邦りゅうほうとは
秦の始皇帝の後の時代
前漢の初代皇帝(三国志の前の時代)である

三国志の劉備玄徳りゅうびげんとくはその末裔の一人
とされている為 漢民族復興として担がれた人物

実は劉さんの父は
10年程前から、中国の老人の間で流行っていた
姓の家系ルーツを探る会があり
劉という家系のルーツ探索に
参加していた
(老人の趣味みたいな感覚)

長年の調査の結果
劉邦りゅうほうの弟にまでたどり着いたらしい

その話を聞いて当時僕はかなり驚き
えつ!僕の妻の劉さんって・・・もしかして
あの劉邦りゅうほうの血スジ??

教科書や漫画になる歴史上の人物の?
そんな偉大な家系と大和ド平民やまとドへいみんの僕は結婚してたの?

そういわれると
妻の父の顔が劉邦りゅうほうに見えない事もない

その時の妻は
この日本人 ほんとバカ!という顔で僕を見る

劉なんて苗字 この国に山ほどいるから
劉と名乗る人は
全員 嫌でも劉邦にたどり着く!と断言
僕の妄想を一掃し全くもって興味なし
まぁ人類皆兄弟だから

とはいえ辿り着くなら
もうスゴイよ~キングダムだわ
スゴイぞ俺の妻!
という事は・・・

横にいた娘を見て
コイツ勇者の血を引く子だったのか・・・という
想いにかられる僕
妻に言うとバカにされるので
こっそり
日本で劉邦の漫画を買ってきて娘にプレゼント!
絶対読め!お前のご先祖様の本だから(笑)

でも全く日本語読めない娘だったというオチ
という「僕の子勇者の子?事件」があった

そして宴会の席でお父さんは
愛新覚羅一族のような
少数民族には負けてられないという顔をして
やけに俺たちは漢民族だ的な会話を
ちょくちょく挟んでいたようだ

もうお酒飲んでるし、半分冗談、半分本気
僕には面白過ぎた話だった

この中で僕はワイン売りの女性の
行動が妙に気になっていく

というのは、次から次へとワインを抜き
皆に飲ませている

初めはワイン売りとは知らず、趙さんの愛人かな
とか知り合いかなとか思って見ていたけど

やけにワインを飲ませてくる
ワインが大量に消費されていく
本当に次から次へと

次第に
会話や状況の中から色んな思惑が
うごめいている事に気づく

ただの楽しい
飲み会ではなかった(僕ら以外は)

皆、どこかで
お互いを利用しようと企んでいる

商売する上で仲良くなりたい人
賄賂が欲しい役人
銀行支店長には投資を呼び込みたい
公安はマフィア対策に必要
商売仲間は互いに儲かる客誘導に
旅館業の仲間は価格破壊を起こさない為に

この土地で商売するには
裏の繋がりが必要

中国での商売は人脈第一と言われる
趙さんは、彼らの機嫌を損ねないように
また、この街で商売ができる地盤を維持し
ビジネスを拡大させ発展させる為に
交友関係に精神を吸い取られているかのように
気を遣ってるのが感じ取れた

そこにワイン売りの女性は目をつけ
ワイン会社から派遣され
この家に出い入り

毎日、宴会を開かせ、ワインを水のように
消費させる

恐らくワイン代は趙さん側で支払う
料理はいっても原価は安い
役人や仕事仲間を接待し仲良くなる
麗江を裏で仕切りたい人たちの輪
虎視眈々とお金を狙う皆の関係

そういう風に見えだすと
趙さんの苦労も肌で感じつつ
楽しくお酒を飲んでいるのは
僕らだけだった

人々を狂わす麗江の宴

帰り際に趙さんに
次、会えるのいつになるかな? 
また10年後かもね?と言うと
次は、ここに泊まりなよ!と誘われた

理想郷は遠くから見るから理想郷であって
中に入れば、理想郷ではなくなる

これも麗江古城の現実

さぁ 明日は
僕が行きたかった場所
香格里拉県シャングリラけんへ移動する

香格里拉しゃんぐりらにある黄金郷 へ続く

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