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上海生まれの娘と僕は三角関係⑤

僕の娘は上海生まれ

誘拐されたら

娘が2歳になったころ

マンションの契約が切れ家賃が上がり
僕らは別の場所に引っ越す事になる

今の場所より地下鉄で3つほど離れる

これからは実家も歩いては遠い

実家から遠くなる事に両親は猛反対だったけど

条件に合う場所から仕方なく離れる事になる

その場所には駅前に
大きなショッピングモールがOPENしたばかり
そして駅と家の間に大きな警備員もいる公園がある

休みの日は娘を連れて公園に遊びに行くのが
僕の楽しみになっていく

歩くのも徐々に上手くなり ぎこちないが
手をつないで2人で散歩もできるようになり
成長を感じる時期でもある

昼間は天気が良いとママと公園で
日向ぼっこをしている

公園には子連れママが多くいて
自然にママ友も増えて行く

ママ友同士の会話はもっぱら
教育の話が中心

一人っ子政策は段階的に終わりかけではあったが
簡単に脱却できない社会事情がある
今までに異常に一人にお金がかかる社会構造が
構築されてきたからだ

教育こそが格差社会を抜け出す手段として
地方出身者は特に教育熱心になる
子供には自分たちのような教育を受けなかった事で
苦労するような人生を歩んでほしくない

だから皆で一人子を支援する
その関係で塾や赤ちゃん関連施設や子供グッズなどの
値段が品質と比例せず上がり色んなビジネスが生まれる

赤ちゃんは金を産むビジネスと呼ばれる

教育最前線はすさまじい事になっていく中国
この世代が大きくなれば
中国も変わる期待と同時に社会問題も生む
激しすぎる教育戦線

運動しない子供の肥満、視力低下、高校の倍率激化
子供の自殺、先生への賄賂、カンニングや不正
親の疲弊、就職難など色んな問題も話題となる


子供を持つという事は
教育問題を考えるという事でもある

今の中国は、一人っ子に親の想いを詰め込み
お金をかけ過ぎている

物心つかない子に親は教育熱心になっていく

公園ではそんな話題で
盛り上がる

そんなある日 

会社から帰り 妻の劉さんから衝撃の話を聞く

今日の夕方に公園で子供が誘拐された!
というのだ

僕は思わず自分の子を見た

娘は台所の横の廊下で一人
オモチャを散らかし遊んでいた

あー自分の子じゃないと現実を確認し
ホッとしたけど 詳しく聞いた

夕方の公園で一人のお母さんが
子供の名前を叫んでいる

そのうち複数人になり警備員も交じり
一人の子を探している

お母さんは見つからない事に焦り
必死で大声で探していた

日が暮れて行く
小さい子が一人で広い公園から
出る事は考えにくい
探している中で目撃情報があり
その特徴の子供が車に乗って
行ったのを見た人が出てきた

そのぐらいで劉さんは家に戻って来たので
それ以降はよくわかってないが
多分 誘拐されたと 言う

今の時代にそんな事あるの?と
僕は驚くが中国ではまだ 
そんな闇が無いとは言い切れない社会もあった

地方では子供を売り買いする裏社会の噂がある
都会の上海では今時、珍しい話ではあるけど

地方や田舎では未だに変わった風習が
残っているしお金稼ぎをさせるために
小さい頃から教育し育てる闇の集団とかの
噂は絶えない

昔に都市伝説級の話で冗談話として
聞いていた事がリアルに思い出す

それから数日間 公園は封鎖となり 
誘拐はどうやら
本当に起きてたらしいと知る

どこの誰の子かまでは、知るすべはなかったが
誘拐犯からすればきっとターゲットを
絞っていたわけじゃなく適当に連れ出しやすい子を
選んで誘拐した可能性がある
そして、その子は何処に連れていかれたのか?

もう二度と両親と会う事はないだろう
もう見つかる事はきっとない

僕は娘が玩具で一人遊んでいる姿を見て

もし この子が誘拐されたら・・・

突然いなくなったら・・・・

今日までの幸せに満ちた気持ちは一変し
世界は一瞬で変わる

そんな いたたまれない気持ちを感じた

運が悪い・・・
とかそんな言葉で脳は処理できない

子供が事故にあったり
亡くなったりするニュースは毎日のように見る

まるで、それが珍しくもなく世界のどこかで
悲惨な事が起きているという
他人事のように聞き
少しは悲しむがCMになり別の話題に変われば
忘れている
しかし親になり子を育てる中で

毎日毎分、
毎秒と子供の健康やケガや安全を願わない時間はない

気が付けば僕は子供が生まれてから

不安を常に抱きながら
生きている事を改めて思うようになった

会社にいても、実家に行っても
会えない時間の時に、仕事中に妻から電話がなると
僕はいつもドキッとする

帰りに※※買ってきてね!という普通の
電話にホッとしている

たまたま、その時間に、その場にいただけで
運が悪かった人のニュースも他人事じゃなくなる
絶対に巻き込まれたくないし
そんな悲惨な事故、事件が無くなってほしいと
次は自分の子の番かもしれない
いずれ巡り巡って順番が巡ってきたら困る


台所とリビングの間にある廊下で一人
玩具で遊ぶ娘に近づき
僕は娘を強く抱く

無邪気に嫌がる娘

腕の中から抜け出そうとする娘 

絶対に失いたくない

また一歩、僕は親に近づく

子を育てる事は難しい

僕は死ぬまで娘の安全と健康を祈りながら

生きて行くんだと感じた


僕の娘への想いは
彼女が母のお腹に宿ってから
ドンドン積み上げられていく


しかし積み木のように脆いかもしれない
簡単に他人によって崩されるかもしれない

親は常に不安を抱いて子を育てる

歩くことも一生懸命
遊ぶことも一生懸命

一生懸命に生きようとする娘の姿に
幸福を感じ
人間という儚い命を少し考えてしまう

だから 昨日よりも また娘が好きになる

誘拐されたら

上海生まれの娘は、そんな出来後があった事も知らず
僕の腕の中でニコニコ笑ってる

そして、僕はその顔に癒される

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