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新常識!2対1をつくる理論!

 今日は「2対1をつくる理論」というテーマでお話させていただきます。
 新常識と書いておきながら、スペインでは、もう10年以上前…2010年くらいに言われていたフットボール哲学のひとつです。僕らが好きなスペインというのは、テクニックがあり、集団でボールを回して攻撃にいくイメージがあります。実際やったことがある選手はわかると思うのですが、試合でやるのはとても難しいです。
 
 11人でボールを回そうとすると、右サイドから左サイド、左サイドから右サイド、後ろに下げて落ち着かせて、またサイド…みたいな感じになります。スペインのようなパス回しはできません。スペインのパス回しのことを、僕らは「スペイン産ポゼッションフットボール」と言っています。スペインのパス回しは、他の国で見るパス回しと何か違いませんか?
 日本代表もパス回しをするのですが、スペインとは違います。ブラジルもパス回しをしますが、スペインとは違います。
 
 スペインのパス回しというのは、パスを出す角度に原則があります。どこに出すべきかというルールがあります。バラバラになることなく集団でボールを回せるのです。
 集団でパスを回すには、いろいろな決まりが必要です。それぞれが自分の感性で自由にプレーしてしまっては、相手に合わせて動くことも難しくなります。結果的に、バラバラになりがちです。スペインは決まったプレー原則があり、有名なフットボール哲学があります。だから、集団で動きやすいです。その中でも、他の国と違う感じが出る理由のひとつが「2対1をつくる」という考えです。
 
 サッカーというスポーツは、フィールド全体で考えると11人対11人です。ですが、スモールフィールド(ボールがある場所)を切り取って見ると、バトルする人数はほとんどの場合差が生まれています。
 例えば、自分がサイドの高い位置でボールを持っていて、相手サイドバックが守備をしているときがあるとします。味方のサイドバックがオーバーラップしてきてくれたら、これは瞬間的に「2対1」になります。相手もセンターバックがカバーリングに来たり、ボランチがサイドまで流れて守備をしに来たりします。つまり、バトルする人数は変動します。「2対1をつくる」というのは、ボールがある場所で、ボールもをっている人と、サポートしている人の2人で、相手デイフェンダー1人にしかけるということです。
 
 スペインの試合を見ていると、この「2対1をつくる」のを、自然にやっています。だから、リズムのいいパスで相手守備陣形を崩していけます。他の国のように、フリーの選手にパスを出したり、動きで相手のマークを外した選手にパスを出すというのは、スペインでは「例外」扱いされます。「どうやって2対1をつくるか」「誰と一緒に2対1をつくるか」「どの場所で2対1をつくるか」「どのディフェンダーを相手に2対1をつくるか」こういったことを考えているのです。
 
 僕もスペインでプレーしたいたので体にしみ込んでるのですが、ボールを持った時に「どの方向にドリブルすれば、どの相手ディフェンダーに対して2対1をつくれるのか」みたいなことを考えてドリブルします。
 
 この「2対1をつくる」というのは「どのサイズでスペースを切り取るのか」みたいな「スペースを見分ける感覚」が大切になってきます。スペインの選手たちは、この辺りの感覚が出来上がっているのです。だから、相手のディフェンダーがスペースを見分けきれずに「人数は足りている」と勘違いしてしまうのです。その隙に、2対1をつくられて簡単なワンツーパスで自然と守備陣形を崩されてしまうのです。
 
 スペインのパス回しは「相手がいるのに・・・守備陣形も整っていて、人数も足りているはずなのに、シンプルなパス回しで崩せる」のです。それは、2対1をつくっているからです。
 
 ちなみに、こちらが2対1をつくろうと2人の距離を縮めて、相手ディフェンダー1人に向かって行ったときに、しつこく相手もついてきて4人がめちゃくちゃ狭いスペースに密集してくるときがあります。これは、逆に大チャンスです。近づいてきた2人目のディフェンダーがさっきまで守っていたスペースが大きく空きます。そこに味方が入ってきたらフリーでボールを受けてプレーすることができます。
 相手のディフェンダーが守備しに来たら、ディフェンダーがさっきまで守っていたスペースを使えば良いのです。つまり、この「2対1をつくる攻撃」に終わりはありません。相手は、後手に回って修正し続けなければならないのです。ずっと走らされる状態になります。スペインが長時間パス回ししていて、守備が全然機能してない試合はこうやって出来上がります。
 
 狭いスペースで2対1をつくろうとすれば、守備をする側は、どこかに大きなスペースを作ってまで守備に行かなければなりません。守備側はかなりの危険性を背負って守備しなければいけません。2人目のディフェンダーが近づいてきてくれたら、大きなスペースができます。攻撃側は、そこを使ってドリブル突破したり、もう一度その広いスペースで2対1をつくったりできるのです。
 
 「2対1をつくる」という話を、ぜひ自分がやりやすいチームメイトと共有してください。実際にトレーニングや試合でやってみてください。間違いなく、今よりも随分とパス回しがしやすくなります。慣れてくると、相手ディフェンダーからのプレスを全く感じなくなります。
 
 今日は「2対1をつくる理論」というテーマでお話させていただきました。

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