3か国を渡り歩いたメルカリのPMが語る「OKRが機能するための3つの条件」とは?
「OKRをとりあえず入れてみた、という状態になっていないですか?」
株式会社メルカリでプロダクトマネージャーを務める正木貴大さんは、そう語ります。
OKRを運用していく時、
「OKRをどのように立てたらいいか?」と
OKRのことだけに目が向いてしまうことが多いのではないでしょうか?
しかし、正木さんのお話からは、「バリュー」「採用」「評価」など、OKRと他の人事施策を連携させることの重要性が垣間見えます。
日本、アメリカ、イギリスと3か国を渡り歩いた正木さんが考える、「OKRが機能するための3つの条件」とは?
ハイマネージャー主催「OKR / CFR / 1on1 勉強会 #2 」のレポートです。
「OKRが機能する条件」とは
よろしくお願いします。メルカリの正木と申します。
今日は、「OKRが機能する条件とは」というお題で発表させて頂きたいと思います。
まず簡単に自己紹介なんですけれども、メルカリでプロダクトマネージャー(PM)を3年ほどやっています。
入社してから1か月ほど日本とアメリカのプロジェクトをやっていて、その後2年ほどイギリスのプロダクトをずっとやっていました。最後の1年はロンドンに実際に行って、現地でプロダクトマネジメントをしました。
株式会社メルカリ プロダクトマネージャーの正木さん
去年の秋に帰ってきて、今は日本のプロダクトのPMとして携わらせて頂いています。
OKRを「とりあえず入れてみた」という状態になっていないか?
簡単にメルカリの紹介をさせて頂きたいと思うんですけれども、
会社の設立は2013年の2月、今ちょうど6年半くらいになります。オフィスは東京・仙台・福岡、アメリカにパロ・アルトとポートランド、それからボストンに研究開発のオフィスがあります。現在連結で1800人ほど社員がいる形です。
つい最近発表されたんですけれども、第一四半期の業績が、お客様の取引総額(GMV)で1268億円くらいになっています。
さて、ここからが本題です。
OKRを入れてはみたけど、なかなかうまく回らない状況は色々あるかなと思っていて。
例えば、事業部の一部で入れているけど全体に広がらない...であったりとか、回っているけど評価しづらく「本当にこれ回っているんだっけ?」みたいな話があったりとか、「もう機能しなくて結局諦めました...」という話も耳にします。
OKRは手法でしかないので、「とりあえず入れてみた」みたいな状態になっていないのかな?というのが、ちょっと気になるところではあります。
いくつかの会社でお手伝いさせて頂いている中で、OKRを入れられている企業さんもあるんですけれども、
やっぱり「とりあえず入れてみた」という話が多いなと思っていて、準備って整っているのかな?というところが、私個人として感じている課題感です。
メルカリに3年いる中で見えてきた「OKRが機能する条件」を、今日はご紹介したいと思います。
「OKRが機能するための条件」の2つの軸
OKRが機能するための条件は大きく2つの軸があって、
「組織・マネジメントに求められること」と「メンバーに求められること」です。基本的にこの2つは対になっていると思っています。
まずは、「バリューの追及」は組織に求められること、そして「バリューへの共感」はメンバーに求められることです。
2つ目は、組織として「ボトムアップの体制」が必要だということと、メンバーに求められるのは「逆算思考」です。
最後ですね。組織側としては「学びの促進」がかなり重要になってきます。そしてメンバーはそれに応える形で「学びを次のアクションに生かす」という向上心、常に成長していくマインドセットが重要になってくる。
以上の3つが、OKRが機能するための条件になってくると考えています。
バリューは「メンバーの目線を合わせる」第一歩
まずは、バリューですね。
なぜOKRを機能させるためにバリューが大事になるかというと、「メンバーの目線を合わせる第一歩」だからです。
OKRは、「会社のミッション・目標」という1つのゴールに対して、みんなが同じ方向を向いてアクションするための手法です。
なので、そもそもバリューやミッションに沿っていない人が揃ってしまうと、メンバーの目線が合わずワークしづらい。
では何をチェックすべきかというと、一番重要なのは採用なのかなと思っています。
メルカリでは、採用エントリーの段階でバリューに関する問いをかなり強く出しています。
選考基準にも、「バリューにどれくらい沿っているか」という項目がしっかり入っており、それを踏まえて合否を決めています。中に入ってきた人のマインドセットをいきなり変えるのはなかなか難しいので…。
それから、評価も重要です。「バリューがどれだけ自分の中で達成できていたのか」を、期末に自己評価する仕組みになっています。
あとは、日頃からバリューに触れる機会をいかに作れているかもカギになってくるかなと思います。細かいところだとslackのリアクション、会議室の名前だったり、あとは賞ですね。
弊社の3つのバリュー「All for One」「Be a Pro」「Go Bold」のそれぞれに賞を設けて、四半期ごとにバリューに沿った行動をしたメンバーに表彰しています。
「待ち」のメンバーがいるとOKRはワークしない
次は「逆算思考」と「ボトムアップ体制」という2つ目の観点です。
なぜこの観点が大事か、という話なんですけれども
そもそもOKRの考え方として、トップダウンの思考だとワークしません。自分から目標を立てて、成長していくというところがOKRの醍醐味です。
上から何かが降ってくるのを期待している「待ち」の状態の人がいることは、そもそもOKRが機能しない一つの原因かなと思っています。
マネージャーに対する2つのチェックポイント
やっぱり、マネジメント層はメンバーの行動を支援することが重要になってくると思っています。メルカリではいくつかのチェックポイントを設けています。
一つ目は、「マネージャーは心理的安全性を確保できているか?」
元グーグルで現在は人材育成のコンサルティングをやられているピョートルさんという方は、「シンパシー(同情)・エンパシー(共感)・コンパッション(思いやり)」という3点が揃って初めて心理的安全性に繋がると言われています。
二つ目は、「マネージャーとメンバーが、目標について一緒に考える機会が作られているか?」
つまり、1on1などのチェックポイントの場が作られているかどうか、というところになります。
マネージャーが目標を押し付けるのではなく、「どうしたら挑戦的で野心的な目標達成をできるのか」を、二人三脚で相談して擦り合わせる場が必要です。
1on1はメルカリでもかなり推奨しています。ほとんどのメンバーが毎週ないしは隔週で1on1を入れている状態です。そこで、軌道修正も多くできるようにしています。
チェックインの段階で「それは無理難題だよね」という話になったら、改めてストレッチなゴールを設定する機会を設けるようにしています。
もうひとつがマネージャーへの投資というところなんですけれども、マネージャーは専門職なので、プレイングしながらマネジメントするのはかなり難しいかなと感じています。
マネージャーに求められることのひとつとしてコーチングだったりとか、メンバーとの対話スキルを求められます。
なので、メルカリはそこに対する投資をかなりやっている印象です。
学ぶ姿勢は「なんでそうなったのか」という問いかけから
最後、「学びの促進」と「向上心」というところですね。
これがなんでOKRにとって大事なのか、というところなんですけれども、
OKRは「ストレッチな目標を掲げる」というのがひとつコンセプトとしてあります。なので、月並みな目標を設定しない、向上心や成長意欲といったものが必要です。
そのためには、失敗あるいは成功してから「なんでそうなったのか」と問いかけて、常に学びを得に行く姿勢が大事になってきます。
メルカリはこれだけ大きくなった組織ではあるんですけれども、
やはり小さな組織であればあるほど、一人ひとりのメンバーが失敗から得られる学びの大きさが貴重です。
その失敗を経て、次にどう生かすか。そこが、事業をドライブさせるためのカギになってくるかなと思っています。
「学びになる失敗はウェルカム」という風土をつくるために
さらに、学んだことを「チーム」でシェアする文化が必要になってくるのかなと思っています。
メルカリでは、例えばアプリの中でのエラーや、施策のテストがうまくいかなかった時の学びを、常にslackだったりとか社内のwikiに共有して誰でもアクセスできるという状態を作っています。
失敗を共有し、自分のチームや他のチームでも施策として活かされる形を作ることで、「学びになる失敗はウェルカム」という風土が出来上がってきます。
結果として、チャレンジングな環境だったり、向上心の醸成に繋がるのかなと。
もうひとつは1on1での振り返り。「個人」としてうまくいった、うまくいっていないという話は、施策ベースでなくてもデイリーで起こることです。
なので、そういった振り返りを週次でスピーディーに回していくことも重要だと思っています。
まとめ
最後のまとめです。
OKRが機能するための条件は、1つは「バリュー・ミッションが浸透しているか」。それを浸透させるためには評価だったり採用面での基準を厳密に決めていく必要をかなり感じています。
もう1つが、メンバー各々が逆算して考えて意思決定することが自然に組みあがっていくようなボトムアップ体制をつくること。ここはマネジメント層のコミットが必要になってくるところだと思っています。
最後は失敗を歓迎し学びを促進することで向上心を醸成すること、という風になります。
ここからはおまけです。
メルカリは自社でツールを作っていてOKRの管理を行っています。一人ひとりのOKRが他の人にもアクセスできる状態になっています。
オープンな環境を作っていくことで他の人のOKRを支援するだったりとか、自分のOKRのアップデートをかけていく、というようなことをやっています。
以上です。ありがとうございました。
会場は株式会社リンクトブレイン様のオフィスをお借りしました!
有難うございました!
次回イベントのご紹介〜OKR/1on1/CFR勉強会#4〜
次回の「OKR/1on1/CFR勉強会#4」は2月26日(水)の開催。
OKR勉強会 OKR成功企業の運用ポイント 近年、Googleも取り入れて話題になっている”OKR”
ただ、新しい手法である”OKR”導入は日本企業ではなかなか難しく 導入に苦戦しているかと思います。
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ハイマネージャー
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