【レポート】先進ベンチャーのOKR運用〜株式会社コロプラ様〜
2022年2月17日に、ハイマネージャー主催「OKR勉強会〜先進ベンチャーから学ぶ ”成果の質” を高めるOKR運用〜」を開催しました。
「日本ではOKRの具体的な事例がなかなかない...」
「導入したいと思っても、事例がないと不安...」
「導入していても自分達のやり方があっているのか分からない...」
そんな声にお答えして、OKRを実際に運用されている企業さまをお招きして、定期的にOKR勉強会を開催しています。
このレポートでは、株式会社コロプラ第1バックエンドエンジニア部部長の田中諒さんより、OKRの導入プロセスや運用のポイントについてお話しいただきました。
組織体制の現状
弊社は従業員が単体で900名程度、ゲーム開発に関わるエンジニア・クリエイターが8割を占めていて、組織体制としてはほぼ職能別組織となっています。
職能別組織がいくつか並ぶ中で、現在OKRを導入しているのは、私が所属しているサーバーエンジニア部署である技術基盤本部のみとなっています。
2020年の4月頃から本格的に運用を開始したので、もうすぐ2年となります。
少し話が逸れてしまうんですけれども、ゲーム開発の現場がどうなっているのか、イメージを掴んでいただいた方がこの後の説明がスムーズかなと思いますので、もう少しだけ紹介させてください。
ゲームの開発の現場は「マトリクス組織」という形態を採っています。各ゲームタイトルは、職能別組織からメンバーをアサインしてプロジェクトを構成しています。
マトリクス組織においては「職能」と「事業」のバランスを取る管理職の役割が重要になると感じています。
OKRが「組織一丸の仕組み化」に
そうした環境の中で、コロプラサーバーエンジニア部署がOKRに取り組み続ける理由は、「組織一丸の仕組み化」ができている、そこに高い再現性があるからと私は整理しています。
「組織一丸の仕組み化」の大きなポイントとしては、OKRの導入により組織の全体像が可視化され、非常に高い透明性を持つようになりました。
以前は掲げた目標が浸透せずに他人事になってしまう懸念がありましたが、OKRでは組織全体の目標がどういう文脈で繋がっているのかが、全員に見えるようになります。
その結果、それぞれが自部署の立ち位置からその文脈にどう乗るか、どうやって組織目標にコミットするかを意識した目標を立てることができています。
「トップダウン」と「ボトムアップ」のミックス
全体像と目標設定の文脈について、コロプラで実際に使用しているツリーを例に説明します。
まず全体像です。
わたしたちのツリーは経営層のCTOから始まり、現場にまで行き渡っています。
このツリーはHiManager上で誰でも確認できるので、現場のメンバーからもトップの意思がはっきりと見えますし、逆にトップからも、どういった文脈で現場の取り組みに結びついているのかを確認することができています。
次に文脈という観点で、最近ツリーに加わったある新作開発チームの目標設定を見てみます。
本部全体としては「日本一のゲームバックエンド組織になる」という野心を掲げています。
この野心は、「面白いゲームを作る」「それを支える高い技術を持つ」「その技術について外部に発表する」といった指標によって達成度合いを測ることができるものとしています。
本部の野心に対し、その下の新作開発部署からは「次のトップタイトルを創る」という野心を掲げて応えています。
この部署では、新たに参加した新作開発チームに対して「担当する新作の開発を進めながら、その次の新作にもコミットする方法を考えて欲しい」というリクエストを出しました。
このリクエストを受けて、チームは「これからの新作のスタンダードとなる機能を開発する」という野心を掲げて応えています。
OKRはトップダウンでもボトムアップでも可能だと言われていますが、相互に提案・合意形成をした上で目標を決定するミックス型がいいとされています。
ただ、会社組織としては経営の意思がどうしても働くので、起点はトップダウンであるべきだろうと私は考えています。なので人に説明する際には「トップが方向性や期待を示した上でのボトムアップ」という説明をしています。
OKRは運用のフォーマットがほぼ完成している
「組織一丸の仕組み化」、2つ目のポイントは、運用フォーマットがほぼ完成しているという点にあるかなと思っています。
OKRがよく比べられるものとして「MBO」や「KPI」がありますが、それらは上司と部下の認識のズレだったり、変化する状況と現在の施策のズレを埋めるために、1on1や定例MTGといった場を自分たちで追加する必要がありますが、
OKRは四半期に1度の目標設定と振り返り、それから毎週のチェックインとウィンセッションという、目標管理上でズレを生まない仕組みが最初から用意されているので、適切な目標設定とその実行に注力することができています。
OKRが「I Message」のコミュニケーションを生む
最後のポイントです。OKRが生み出すコミュニケーションが「I Message」主体になっているという点をあげておきたいと思います。
野心的な目標設定。これは「私は◯◯で一番になりたい」「私たちは◯◯で一番になりたい」という「私」の意思表明です。
ウィンセッションを通して聞こえる「私は〇〇を頑張りました」「私は〇〇さんの〇〇な行動に感動しました」。これらは「私」を主語にした称賛の声です。
目標設定することで生まれる主体性を「 I Message / You Message 」の例として説明するのはこじつけになってしまいますが、「 I Message 」での称賛は、心理的安全性が高く、人の主体性を引き出す効果を持っているといいます。
コロナ渦のリモートワークに効いた「ウィンセッション」
特に心理的安全性という点でいうと、コロナ渦でリモートワークに移行したタイミングでウィンセッションを実施できたことは非常に有用だったなと思っています。
リモートワークではちょっと隣の人と雑談を、ということができないですし、オンラインミーティングでも特に意図がなければカメラをOFFにしている人が多いのではないかと思います。
それがウィンセッションという場では皆がその意図を理解してカメラをONにしてくれますし、誉めたり誉められたりの照れもあって笑顔を見せ合うことができています。
ウィンセッションを始めるようになって、コロナ禍で失ってしまった大事な時間を取り戻すことができたと感じました。
OKRを設定する時のコツ
次に、OKRを運用する上で配慮したこと、工夫したことについて話をしていきます。
まず最初は、OKRのマニュアルにもよく書いてある内容ですが、組織目標は大きく定めましょう。
組織目標の下に、チーム目標、個人目標と続くので、全体が共感可能で後々にブレない目標を、しっかり時間をかけて考えるのがいいと思っています。野心的でテンションの上がる目標にすることがポイントです。
KeyResultは設定に悩む方も多いかなと思いますが、掲げた大きな目標を一度で達成する必要はありません。
SMARTの法則にしたがって、明確で / 測定可能かつ実現可能 / 文脈的に関連性があり / 達成までの期限がある 。そんな定量的な成果目標を立てるのがコツです。
例えば、目標が「〇〇で日本一になる」と掲げるならば、そのKRは「ランキング1位を獲得」ではなくて、「今期の〇〇ランキングの順位を◯つあげる」というイメージです。
OKRをどのように導入・展開していったのか
最初にOKRを導入するチームも、なるべく確度の高いチームを選んだ方がいいかなと思っています。組織によるかなと思っているんですけれども、コロプラの場合は、基盤系のチームで検証し、本導入は管理職から少しずつ展開をしました。
人数規模が少ないチームの方が導入は簡単ですし、高い目標を設定するという意味では、管理職のようにもともと目線が高い人たちでスタートするのがいいと思っています。
OKR導入のハードルが高かったマトリックス組織では、急いで展開すると理解を伴わずにタスクが増えただけ、という印象を与える可能性があったので、1Qまるまる使うくらいの気持ちで調整を行いました。
職能組織におけるマネージャーの立場からは、全力で事業の未来にもコミットできる方針を考えるということをやりました。それを1on1でメンバー個別に共有し、あとはウィンセッション単体から現場に導入しました。
ウィンセッションはコロナ禍で有用だったと説明させていただいたんですけれども、ウィンセッション単体だけであれば、組織に受け入れられる確信はありました。
なので、まずは「ウィンセッション」だけを導入して、だんだんと馴染んできてから「目標設定」の場だったり「チェックイン」を導入する、という展開をしていきました。
最後のコツです。運用中のハードルも、マトリクス型組織を意識して下げています。
まず、チェックインで報告する今週のプライオリティは、OKRに関連するものが第一位でなくてもいいよ、という状態にしました。
マトリクス組織においては「職能」と「事業」のバランスに注意が必要で、あくまで事業を成功に導くことが重要である、と明言しています。
職能別組織が掲げたOKRが、事業よりも優先度が高くなってしまわないように注意を払いました。
同様に、ウィンセッションでの賞賛内容もOKRに紐づかなくてよい、としています。
ウィンセッションは、純粋に同僚への賞賛を送る場にしたいという思いで運用しています。
OKRの「実行力」を感じた今クォーター
最後は、コロプラの技術基盤本部の現状とこれからについて、という話で締めくくらせてください。
先ほど例としてもあげさせていただいた通り、我々は「日本一のゲームバックエンド組織になる」という大目標を持っています。
今クォーターでは「外部発信の強化」と「ブランディング」についてのKRを組み込んでいました。
具体的には connpass上での勉強会の開催や、技術ブログの開設といったことを始めました。今日私がイベントに登壇したのも、その一環かなと思っています。
これまで露出の少なかった会社なので、内部にいる自分も驚いているんですけれども、発信のための取り組みを組織全体で始めたのは、大きな変化かなと思っています。
この変化をもたらしたという意味で、掲げた目標に対しての実行力をOKRは確かに持っているんじゃないかなと感じています。
技術も文化もひっくるめて魅力的な会社であり続けたい。コロプラのそんな姿を知ってもらいたいという思いを持って、これからも日本一を目指していきます。
以上、コロプラにおけるOKR運用事例のご紹介でした。本日はこのような機会をいただき、誠にありがとうございました。
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