日本のOKR運用はムーンショットにこだわり過ぎている?日本企業が良く陥るOKRの罠。
OKRとは「Objectives and Key Results」の略で、日本語では「目標と主要な結果」と呼ばれる目標管理指標の1つです。
⇧画像のイメージでObjectives(定性的な目標)1つに対して、Key Results(定量的な主要な結果)を3つ程設定する目標設定方法です。
こちらの記事で詳しく解説しているので是非読んでみてください!
そして、ムーンショットとは、「困難だが実現すれば大きなインパクトのあるワクワクする壮大な目標や挑戦」を指す言葉としてGoogleなどのシリコンバレー企業で使用されている言葉です。
OKRのObjectives(定性的な目標)の部分に、ムーンショットを設定することで会社を全社的に大きな目標に向かって前進させていくことが可能です。
日本のOKR導入は、チャレンジングに着目されすぎている
OKRを導入の目的としてムーンショットが挙げられると思いますが、ムーンショットな目標を追っていく上では、その前提として理解しておかなければならないことがあります。
それは、人事・経営陣と社員側でOKRの意図(目的)やメリットが違うということです。
人事・経営陣のOKRの意図としては、もちろん社員のエンゲージメント高く働いてほしいという点もあると思いますが、どちらかと言うと会社の業績を上げることやイノベーションを起こしたいという点が強いと思います。
反対に社員側のOKRのメリットは、エンゲージメント高く目標を追えるようになることです。
正直なところ、社員側からするとムーンショット(高い目標)を追うことはあまり重要ではありません。
高い目標を追うことや達成することに喜びを感じるのではなく、本質的には目標を通じて自身の自己実現を達成することや自身の成長を実感することが重要だと感じる傾向にあります。
そのため、社員にムーンショットな目標を追ってもらうためには、社員が自らそれを追いたいと思い、かつそれを継続して追えるような環境を整えることが重要だと思います。
高い目標を立てたから高い目標を追ってくれるのではなく、高い目標を追える環境があるから社員も高い目標に臨めるという認識を持つことが大切です。
この観点が抜けた企業では、経営陣だけの思惑で会社を動かそうとするだけの"チャレンジングKPI"のようになってしまい、結果として社員が疲弊して、OKRを辞める選択を取ってしまうことが多いと感じます。
上記の具体的な事例として、X社の事例を紹介します。
X社は既存事業が頭打ちになっていたため、イノベーションを起こさなければいけないという理由からOKRを導入し、ムーンショットな目標として「売上1000万円」の目標を掲げました。
しかし、頭打ち状態の既存事業でムーンショットな目標を立てたところで「そんなの無理でしょ」という雰囲気が蔓延し、そもそも「なんでその目標を追うんですか」という目標に対する不信感も出てしまっていました。
明確な打開策を見いだせないままムーンショットな目標を追わされるだけでは、社員からしたら先の見えないままプレッシャーだけを与え続けられることと変わりありません。
結果としてX社は現状を変えられないままOKRを辞めてしまいました。
X社のようにただムーンショットな目標を設定するだけで、「なぜそれを目指すのか」、「目指した先に何があるのか」などという意味づけが不十分だとこのようにOKRの機能が停止してしまいます。
OKR導入効果は、アライメント、リアルタイム、ミッションドリブンの3つ
前述したように、OKRを導入する際はムーンショットを追える環境づくりが非常に重要です。
このムーンショットを追える環境を整えるOKRのポイントとして、➀アライメント②リアルタイム③ミッションドリブンの3つが前提にあります。
OKRはムーンショットに注目されすぎていると思いますが、この3つを抑えられずにOKRに取り組んでしまうと失敗するケースが多いです。
➀アライメントに関しては、OKRを導入する際にOKRツリーを構成することになるので、導入している会社は既にできていることだと思いますが、非常に大切な要素です。
OKRツリーを通して、自分のやっている仕事が会社にどのように貢献できているのかや、なぜその仕事をやる必要があるのかなどを知ることで会社における自身の存在意義を確認することができます。
これらの部分をしっかり可視化できることは社員のモチベーション維持という意味でもムーンショットを追う環境作りに繋がっていくため重要です。
②リアルタイムは、高い目標に挑戦していくためのサポートになる部分です。とりあえずムーンショットな目標を置いたらその人はそれに向かって頑張れるのか、と言ったら基本そうではありません。
社員側の心境としては、会社の方針に従って高い目標を立てたはいいが、そのまま放っておかれると困ってしまいます。
今の状況や足りない部分の追求、逆に何が上手くいっているからそこをもっと進めていこうという話など、上司が上手く手綱を引いていく必要があります。
ムーンショットな目標であればあるほど、現状と目標へのギャップが大きくなるため、密にコミュニケーションを取らないと、気づいたら達成できないくらいの進捗になっていることも起こりえます。
また、高い目標を追っていることへのプレッシャーで社員が疲弊することなども考えられます。
それを防ぐためにも、リアルタイムにコミュニケーションを行い、目標達成を支援していくことは非常に大切になってきます。
③ミッションドリブンは、端的にいうと"ワクワクする目標を立てる"ことです。
ムーンショットな目標を達成する上で、自らが更に意欲的に目標を追いかけるためのエンジンとして"この目標としてワクワクするか?"が必要になってきます。
まさにOKRでいうとオブジェクトを立てる意味にも繋がってくるのですが、自分のやっていることが会社のメリットだけでなく、自身の自己実現や成長など自分自身のメリットにもなると社員が感じることが重要です。
社員自身が目指していきたい目標を設定することで、能動的に動こうという意識が働きやすくなります。
もちろんリアルタイムでのサポートは必要ですが、ただムーンショットな目標を与えられるよりも間違いなく成果が出ると思います。
前述したように、OKRを導入することで➀アライメントは自動的に満たされるケースが多いです。
しかし、それと同時に②リアルタイム③ミッションドリブンが疎かになりやすいケースも多いです。
しかし、この2つを疎かにしたままムーンショットな目標を四半期に1回立てていくことはX社のように現場の負担だけが大きくなってしまいがちです。
②リアルタイムは現場の声を気にしすぎて、運用が増えることが大変だという理由から辞めてしまうことが多いですが、根気強く行えるかが成功の分かれ目です。
③ミッションドリブンに関しても、導入当初は担当者が目標設定のサポートをしていかなければならない部分であるのですが、「売上を拡大する」のようにただムーンショットであるだけの定性目標を掲げているケースが多く、これでは社員は能動的になりません。
「売上を拡大する」はどちらかというとオブジェクトではなくキーリザルトに近く、会社が求めていることになります。
「自分が共感している会社のミッションの世界観を売上を上げることでどう広げられるか」のように会社の求めていることを追いかけることで自分はどうなりたいのか、と自分の自己実現に繋げた意味づけを繰り返し丁寧にやっていくことが重要です。
そのため、既存制度から移行するような企業では、特に②リアルタイム③ミッションドリブンを意識することが大切です。
まずはリアルタイムでのコミュニケーションを徹底することや会社にも社員にもメリットが感じられるようなオブジェクト設定することを洗練していくことを意識していければ良いと思います。
これをできた上で、次の段階としてのよりムーンショットを追えるような設計へと移行していくことが必要になってくると思います。
最後に
ここまでムーンショットな目標を追うためのOKRのポイントを説明してきましたが、ムーンショットのような高い目標を追うには、本気でやろうというコミットがないと難しいです。
高い目標をただ与えられただけでも一時的には成り立つと思いますが、それでは社員が疲弊していってしまいます。
社員に能動的なモチベーションがなかった時に人が動く原動力となるのは責任感と恐怖です。この2つで縛られている仕事はやはり疲弊が激しいですし、私たちHiManagerが理想としているコーチング型マネジメントとは反対のパワーマネジメントになっていってしまいます。
一時的にでも早急に成果をだいたいのであればそのようなパワーマネジメントでもいいとは思います。しかしそれでは長続きはしないですし、エンゲージメントも低下するため従業員は抜けていくことが容易に想像できます。
まずは、上司が部下の目標をリアルタイムでサポートでき、社員が能動的に高い目標を追えるような環境を整えることが、ムーンショットを意欲的に追える組織への第一歩だと思います。
下記の表で、左上の「不安ゾーン」のようにただ高い目標を設定することでムーンショットを追いかける働き方ではなく、まずは右下の「快適ゾーン」で良いので組織の土台を作ってから、ムーンショットを置くことで表右上の「高業績ゾーン」を目指してみてください。
繰り返しになりますが、長期的な会社の成長と社員のエンゲージメントを考慮してムーンショットのように高い目標を追う際には、➀アライメント②リアルタイム③ミッションドリブンを徹底することで環境を整えることが非常に重要ですので意識してみてください。
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ハイマネージャー
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