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古代エジプトのトリビア

古代エジプトのトリビア

米国の女性バンドThe Banglesは♪Manic Monday♪と♪Walk Like an Egyptian♪で一世を風靡した。前者は今でもBGMやCMで使われることがある。後者は最近聞いて懐かしく思った。今もって「エジプト人のよう歩きなよ」がどういうことか、どういう歩きなのか分からない。というこじつけで今回はエジプトについて少し書くこととしたい。

1.三つあった文字
古代メソポタミア文明といえば楔形文字、古代エジプト文明と言えばヒエログリフというイメージが定着しているような気がする。エジプトでは実際は3つあった。
①ヒエログリフ(聖刻文字)・・BC3200頃~、文字どおり石に刻む文字
②ヒエラティック(神官文字)・・BC3000頃~、①の筆記用文字
③デモティック (民衆文字)・・BC650頃~、②の簡略系或いは崩し字

ヒエログリフは見た目から象形文字といわれるよく言われるが表音も兼ねているようだ。エジプトと言えばパピルス。ここに書く文字がヒエラティックである。古代メソポタミアと同様、書記(スクリプト・官僚)は一般民衆の憧れの職業。ロゼッタストーンにはヒエログリフ、デモティック、ギリシャ文字が書かれている(ギリシャ文字が書かれているのはプトレマイオス朝の時期に作成されたものであるため)。パピルスは古代エジプト語で「王家のもの」という意味で貴重だった(プトレマイオス朝時には輸出品となる)。

2. 古代メソポタミアの影響を受けた古代エジプト
世界最古の文明はやはり古代メソポタミア文明だと以前書いた(文明の開始時期の定義は必ずしも容易ではない)。エジプト古王朝時代より前に文明と言えるものがあったか?乍ら、それをネグればやはり古代メソポタミア先行と考えるのが妥当であろう。
・古王朝初代ファラオのナルメルはメソポタミア地方(現イラク、シリア、パレスチナ)から来ている。
・シュメールから来たファラオ側近がジッグラトと同様の階段型ピラミッドを造ったのが後の四角錐型ピラミッドの原型。

3. ギリシャ語による命名は諧謔精神かコンプレックス
鰐を意味する英語のクロコダイルはギリシャ語のクロコディスである。ピラミッド、オベリスクも同様。ギリシャ人は自国にないエジプトの巨大・壮大なもの見て以下の意味を付けた(語を当てた)。
 ・ピラミッド・・小さなパン
 ・オベリスク・・焼き肉の串
 ・クロコディス・・小さなトカゲ
諧謔精神ととるのか、コンプレックスなのか、或いは馬鹿にしているのか。

4. 残っていれば世界遺産?の古代アレクサンドリア
プトレマイオス朝の首都アレクサンドリアは100万都市と言われ、「世界の結び目」と呼ばれた。知の殿堂の学術研究所ムーセイオン、世界中の書物を集めたアレクサンドリア図書館があったのは多くの人が知るところである。特にギリシャの没落により、多くのギリシャ人スーパーな学者が集まった。エウクレイデス(ユークリッドのこと)、エラトステネス、アルキメデス、ヘロン、プトレマイオスなど。エジプト学者の吉村作治さん(工学博士)によると、彼らは自国で食っていけない穀潰しなので終結したとのこと。失われずに遺跡が残っていれば世界遺産になったのではと思うと、および貴重な書物が失われたのが残念。

5.よくわからない古代エジプト人の肌の色
エジプトの遺跡で人物を描いたものを見ると肌の色が黒いように見えることがある。褐色にも描かれている。今のエジプトは「白いアフリカ」と言われる地域で、元からの人々、アラビア人、ペルシャ人、欧州人、ブラックアフリカ人が混血している。一般的には浅黒い顔立ちでサハラ以南の「黒いアフリカ」のような黒さはない。

ヘロドトスの書『調査・研究』・・『歴史』と言われる書・・によれば、
 ・ヘロドトス自身がエジプト人を実際に見て肌が黒いと書いている。
 ・ヘロドトスが聞いた話で「リビア人(エジプト人と肌の色は同じだった
 と考えてよい)がサハラを南に行き背が低く黒い肌の人々に捕まった」と
 いうのがある(今のニジェールに達したと思われている。ピグミーと遭遇
 した可能性あり)。自分達より色が黒かったということ。

よって、ギリシャ人から見て肌が黒いけれど、ブラックアフリカまでは黒くなかったのだと思う。

6.「エジプトはナイルの賜」の虚実
「エジプトはナイルの賜」は最新の高校世界史Bの教科書にも載っている、ヘロドトスが書いたものである。上記の5の書に実際は、

 「エジプトの最初の王はミンであった。当時、テバイを除いた全エジプトは湿地であったと祭司達は私に語った。モイリス湖(今日では海からナイルを7日間遡ってこの湖に辿りつく)から北側の地域は、その頃は完全に水に浸かっていたそうだ。彼らのこの説は本当だと私は思う。別にとくに頭が良くなくても、この国(注1)をちょっと見ればそれは分かることで、この国が水を征服することによって創られてきたこと、また、この国がモイリス湖から船で三日下った部分(つまり祭司が語らなっかた部分)も含め、確かにナイルの賜であることは間違いない。・・・」
(図も含めジャック・ラカリエール『エジプト~ヘロドトスの旅した国』(新評論)より)

と書いてある。
(注1)この国とはデルタ地帯からメンピィス(メンフィス)までを指すと
    想定

ジャック・ラカリエール『エジプト~ヘロドトスの旅した国』(新評論)より

少し離れたところに、要約すれば「ギリシャのように雨不足による干ばつの心配がなく、川が耕地を耕してくれるので種を播くだけでよく苦労要らず」という趣旨のことを書いている。直截に「エジプト文明の発展はナイルの賜」と書いている訳ではない。

ついでながら、世界七不思議の一つ「ギザの大ピラミッド(クフ王のピラミッド)」がある。今は不思議なものは何もないとされている。ヘロドトスは時代的に造っているところは当然見ていないが、祭司から聞いたこととして作り方に言及している。
・ヘロドトスがエジプトを旅したのはエジプトがハカーマニシュ朝ペルシア(アケメネス朝ペルシア)に征服されていたBC5世紀)。
・ピラミッドが築かれたのはそれより遥か昔の古王国時代

<参考:Walk Like an Egyptian / The Banglesの1番の歌詞>
All the old paintings on the tomb
They do the sand dance, don't you know?
If they move too quick (oh-way-oh)
They're falling down like a domino

All the bazaar men by the Nile
They got the money on a bet
Gold crocodiles (oh-way-oh)
They snap their teeth on your cigarette

Foreign types with the hookah pipes say
(Way-oh-way-oh, ooh-way-oh-way-oh)
Walk like an Egyptian

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