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レビュー「わたしの好きなアルバム10作品」 第四回 愛していると云ってくれ

「愛していると云ってくれ」

意表を突かれる朗読、それと組曲みたいな次曲の後にシングル曲と楽曲提供曲等が続いて、六分を超える大作の二曲で終わるという充実、つまり、構成力が際だっている中島みゆきの「愛していると云ってくれ」です。起承転結があるなら、起と結の役割を充分に果たしている「「元気ですか」」と「怜子」、「おまえの家」と「世情」ですが、本作の充実感を更に後押ししているのが、シングル曲の「わかれうた」と楽曲提供曲の「化粧」です。唯一、明るい曲調の「ミルク32」や「おまえの家」の雨や雷の音、朗読の後ろで流れる音楽や紙をめくる音は良好なアクセントになっています。構成の充実に反して、本作の歌の数々は、失恋の歌を中心に孤独、屈辱、劣等感、疎外感、等々、負の感情がいっぱいです。構成の充実と多くの負の感情、この組み合わせは、どこか、違和感を感じてしまうのは、取り乱すことなく意外にも冷静と思ってしまうからです。とは言え、次へ向かう万全な旅支度、そのように解釈することも可能なのかもしれません。中島みゆきの代表曲の一つでもある「時代」では、生まれ変わって歩き出すという歌詞がありますが、そんな歌詞や場面を思い出さずにはいられない本作です。

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