見出し画像

幻とのつきあい方 (名盤049)

「幻とのつきあい方」

「幻とのつきあい方」はゆらゆら帝国の解散後、ヴォーカルとギター等を担当していた坂本慎太郎が2011年に発表したファースト・アルバムです。アルバム・ジャケットはマネキンと本人のツーショット、寄り添うようにどこかソロになったことに対して不安や動揺を抱いているような印象を与えます。また、ぼんやりとしたモノクロ写真が幻を連想させられます。タイトルとジャケットの一致、本人とマネキン、それらをなぞるようにソロになったことと本作が発表された年に東日本大震災があったことを示す内容になっています。音楽的にはロックというよりも捻りを効かせていますがJ・POP寄りの肌触り、坂本慎太郎が凄いのはわたし自身の音楽の趣向、その許容範囲を超えていても素晴らしいと思わせるところです。例えるなら1989年にエレファントカシマシが発表した「浮世の夢」を聴いたときの驚きに似ています。合わせて本作は東日本大震災を連想させられますが、1995年の阪神・淡路大震災と関わりの深いザ・タイマーズが同年に発表した「復活!!The Timers 」を連想させられます。恐怖を与え続けたゆらゆら帝国あるいは坂本慎太郎、本作はそれを直に示さなかったことは好感触ですが、ファンタジーよりも現実のほうが恐ろしいことを確認する作品になったような気もします。恐怖を全面に押し出すと説得力に欠ける結果になっただろうし、瞬発力による配慮だったら尚更に良いですが、いずれにしても不思議な歯応えのマカロンを食べたことがない子供に与え、びっくりさせて喜ばせようとする姿勢が好感触な作品です。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?