米国株マーケット考察 2020.10.8


マーケットサマリー

米国株式相場は、急反発。ダウ工業株30種平均は前日終値比530.70ドル高の2万8303.46ドルで終了。一方、ナスダック総合指数は210.00ポイント高の1万1364.60で引けました。

前日(10/6)、米議会与野党は追加対策の財政出動規模をめぐって対立し、協議が難航していたことに痺れを切らし、トランプ米大統領は追加の新型コロナウイルス経済対策の協議を、11月3日の大統領選後まで停止するよう与党共和党にを指示しました。ダウ工業株30種平均はこれを嫌気し、375ドル安で引けました。

ところが、トランプ大統領はその後ツイッターに、(1) 250億ドル(約2兆6500億円)規模の航空会社支援策と、(2) 1350億ドル規模の中小企業支援策を「議会が直ちに承認すべきだ」と投稿。
また、1人当たり1200ドルの現金給付の実施を支持する考えも示しました。更に、自身が再選されれば、大規模な景気支援策を打ち出すことにも言及しました。この辺は大統領選を睨んでの発言っぽいような気がしますが。。。

これを受けまして、株式市場に追加対策が一部実現するとの期待が広がり、昨日(10/7)のダウ工業株30種平均の上げ幅は7月中旬以来、約3カ月ぶりの大きさとなりました。

冷静に見れば、結局2日合計で概ねフラットまで戻したに過ぎません。ニュースの見出しに右往左往が全開という感じです。これも一種の「10月の驚く出来事」( オクトーバー・サプライズ )なのかも知れません。

9月開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)の議事要旨が公開され、参加者が経済対策の不足や遅れが景気回復を遅らせることを懸念していることが示されました。

また、パウエルFRB議長の講演では政策が物価から雇用にフォーカスする平均インフレ率目標に変更されたものの、マイナス金利導入には消極的な言及を行っていました。

これに関しては、相場には何ら影響がありませんでした。
一言で申し上げますと、今の株式市場は非常に楽観的で、ニュースのいいとこ取りをしている感がとても強いです。

株式市場は米大統領にトランプ氏が再選されても、バイデン氏が当選しても、かなりの規模を伴った経済対策が打ち出されるのでは?とまで想定し始めているようです。

更に踏み込みますと、11月の大統領選でバイデン氏が勝利により、トランプ大統領が提示しているより遥かに大きな追加経済対策と、FRBの労働市場回復にフォーカスした金融緩和政策と相まって、株式市場が上昇するシナリオまでも織り込んで来ています。

但し、米下院の反トラスト小委員会が、GAFAの支配力の抑制を目指す反トラスト法改革案を提示しました。議会で承認されれば、巨大IT企業の分割につながる可能性もあり、これは相場の波乱原因になり得る可能性はあります。

来週から米国では第3・四半期(7-9月)の企業決算結果の発表が始まります。
市場ではS&P500企業の利益は第2・四半期(4-6月)よりは減益幅は縮小するものの、21.3%の減益が予想されています。予想対比、減益幅が小さい場合、かなりの相場上昇要因となるでしょう。

それは、タイミング的にも、トランプ大統領にとって大統領選での追い風と成り得ます。グローバリスト vs アンチグローバリストとの戦いの行方次第で、来年以降の世界動向は経済にのみならず、政治面でも大きく変動する可能性があります。

米国のメインストリームメディアや日本のメディアは既にグローバリスト勝ちを予測していますが、2016年の再来になる可能性もあると脳裏に残しておいた方が良いと思われます。


用語解説


-「10月の驚く出来事」( オクトーバー・サプライズ )ーアメリカ合衆国大統領選挙が実施される年において、本選挙投票の1か月前の10月に選挙戦に大きな影響を与えるサプライズ(出来事)のことを指します。
2020年大統領選挙は新型コロナウイルスの世界的流行の最中で、2020年10月1日以降に現職の共和党候補ドナルド・トランプをはじめとする数人の共和党関係者の感染が発覚し、ホワイトハウスでクラスターが発生したとみられます。ガーディアン紙は「史上最大のオクトーバー・サプライズになりかねない事態」と評しました。

-平均インフレ率目標ー「平均インフレ率目標」は、完全雇用と物価の安定性という議会からFRBへのデュアルマンデート(2つの使命)の観点から見ても適切な政策と言えます。
FRBが物価の安定性を維持しようとする場合、どの目標水準が安定的かを特定しなければならないことは明白だからです。
但し、米国は現在ゼロ金利制約に近い金利環境にありますから、景気を刺激するための金利の一段の低下が不可能である環境に居ますから、万が一景気後退が発生すれば、FRBにとってマンデートを達成することは困難になります。


立沢 賢一(たつざわ けんいち)
元HSBC証券社長。
会社経営、投資コンサルタントとして活躍の傍ら、米国宝石協会(GIA)会員など多彩な活動を続けている。投資戦略、情報リテラシーの向上に貢献します。

・立沢賢一 世界の教養チャンネル
http://www.youtube.com/c/TatsuzawaKenichi

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