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運動部活動の現状6:外部指導者(3)-2「トレーナー」の必要性と実態

運動部活動には「トレーナー」が必要かどうか。「そりゃ、いた方がいいよね」って言ってくれる方は多いけど、それだけでは話が進まない分野もあります。外傷障害対応に不安を抱えているという先生が多い、という以外にもトレーナー活用の必要性や効果などについて先行研究のいくつかを挙げてみると

中村(2013)
①学校におけるスポーツ傷害の管理・予防にAT もしくは同領域に精通した
 専門家を配置すること
②アスレティックトレーニング領域に関する理論的・実践的な介入を
 行うことが重要である

石郷岡(2017)
高体連への登録者数が多い4競技で顧問をつとめる教員に対してトレーナー活用調査を行った結果
①トレーナー介入によって怪我人の減少を実感していること
②トレーナーの周知がまだまだ不十分であること

を挙げている。

日本スポーツ協会(旧 日本体育協会)アスレティックトレーナー(AT)資格ではその役割の中に外傷・障害予防、応急処置、リハビリテーション、コンディショニングなどが含まれている。
また、NSCA(National Strength and Conditioning Association)では
適切なレジスタンストレーニングがパフォーマンス向上だけでなく、外傷障害リスクを減らすことを青少年のレジスタンストレーニングに対するポジションステイトメントの中で述べている。

わが国での「トレーナー」の起源

トレーナーには多くの立場の人間が含まれているけど、元々は治療家からだった。日本においては国が唯一認めた資格が存在しないこともあり、

それぞれが思うがままに活動してきた(田中,2012)現状がある。

立場が充分に認知されていないことや、サポート側に充分な人材配置をできていないこともあり、日本スポーツ協会のアスレティックトレーナーも本来の専門性とは異なる配置、役割を担っていることが指摘されている

それぞれにとってのトレーナーは、自分が接したことがある人。高校生に聞いてもそれは同じ。よくよく聞くと接骨院の先生だったり、理学療法士さんだったり、トレーニング指導の方だったり。また、それぞれが複数分野にまたがって活動していることも色々な混乱を生んでいる状況に繋がっている。

【参考】
日本体育協会(2010)JASA-ATマスタープラン策定に向けて

田中淳(2012)我が国における「スポーツトレーナー」資格制度の成立過程とその課題.現代社会文化研究,55:201-218.

中村浩也(2013)学校教育機関におけるスポーツ傷害の管理と予防に関する研究アスレティックトレーニング支援モデルによる実践的介入の効果.東京学芸大学博士論文.

石郷岡旭・山本利春・笠原政志(2017)高等学校運動部活動におけるスポーツトレーナー介入の実態に関する研究.日本アスレティックトレーニング学会誌,2(2):125-132.

NSCA JAPAN(online) 青少年のレジスタンストレーニング:NSCAポジションステイトメント最新版.
http://www.nsca-japan.or.jp/12_database/ps_youth.pdf,(参照日2018年1月4日)

読んでいただきありがとうございます。日々の雑感やスポーツ、運動にまつわる数字を眺めてまとめています。普段はトレーニングサポートや講義を行なっています。