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ひとり親パパと娘のふたりきりな日常の話 その7

こんちわ。
東京で映像クリエイターをしている
1児のシングルファーザーのKENと申します。

シングルファーザーになるまでのお話はこちらから

身内にも友人にも行政サービスも頼れず、民間サービスだとコストがかかりすぎる。
なのでいっそのことリモートワークをメインに移行できるように単価設定を見直し、お客さんにも説明をした。
これで2022年、最初の年はなんとか乗り越えた。
一方で本職とは別にコロナ禍がきっかけで始めたバイトがあった。
「オンライン動画編集スクールの講師」だ。

緊急事態宣言が発令されて

話はさかのぼって離婚する前、しかも元嫁が「出家する!」とか言い出す前、2020年の話になる。
4月の終わりに緊急事態宣言が発令された。
不要不急の外出はできなくなり、飲食店はどこも開いておらず、スーパーも食料品店だけが開いていた。
僕へのお仕事の依頼も途端に途絶えた。

緊急事態宣言の発令前に受注していた案件は継続していて、リモートワークで対応していたものの、やはり新規案件の依頼が来ない。
僕はフリーランスなので仕事がなければそのまま無収入だ。

政府が色々と対応してくれて持続化給付金などでなんとかしていたが、それでもコロナがいつまで続くのかもわからないし、毎日感染者が増えたニュースもやっていて今後の見通しがつかなかった。

クラウドソーシングで映像編集の仕事を探してみる

そんなわけで少しでも糊口がしのげるようにオンラインで仕事を探してみた。
その当時すでに「クラウドワークス」や「ランサーズ」などのクラウドソーシングサイトがあったのだが僕はまだ登録していなかった。
さらに調べると「ココナラ」ももはやビジネスツールとして成立しているようだ。「ココナラ」は以前から知ってはいたが、趣味の延長でお小遣いを稼ぐくらいのイメージだった。

で、色々見てみるとものすごく単価が安い。

時給でも日給でもない案件単位での完全グロス請け。
単価も1万円とか、安くて500円(!)なんてのもある。
時給じゃないよ。1案件単位で、だよ。

しかもそれに応募者が殺到している。
いくらなんでもこれは受けられない。

結局クラウドソーシングで映像編集をするお仕事は現在まで受けていない。
その代わり、
「オンライン動画編集スクールの講師」
のお仕事を見つけた。

オンライン動画編集スクールの講師

内容はざっくり言って

  • スクールが用意したテキスト動画で生徒は編集ソフトの使い方を自習する

  • 講師は週に一回1時間、zoomを使ったマンツーマンで生徒に編集ソフトの使い方をアドバイスする

  • 請け負う生徒の人数は任意

  • 時給1500円

こんな感じだった。
クラウドソーシングサイトで見つけたものだが、大元のスクールのサイトらしきところに金額やカリキュラムが書いてない。
載せている情報は卒業生の声や動画編集に関するブログだ。

モヤモヤしたが僕は生徒ではなく講師となるのであまり深く考えずに応募した。

問題点の多いオンライン動画編集スクール

僕はお試しで男性が5人、女性が一人の合計6人の生徒さんを引き受けた。
驚くべきことに生徒さんは全員が中年以上だった。

具体的に年齢は聞いていないが、ズームでお顔を見る限り40代〜50代くらい。
スクールというから20代くらいを想像していたが全く違っていた。
まあ学ぶ事に年齢は関係ないから構わないんだけど。

それはともかく問題点が結構あったので一旦箇条書きで挙げてみる

  1. テキスト動画の質が悪すぎる

  2. 包括的な仕事の流れの説明がない

  3. 映像編集の楽しさを伝えていない

  4. 不透明さと横のつながりの断絶

  5. 無駄に学習期間が長い

  6. 生徒が支払っている金額が高額

  7. 生徒のPCスペックに問題がある

  8. 生徒同士の交流がない

  9. 生徒がお金の事しか考えていない

テキスト動画の質が悪すぎる

一応事前準備やテクニック紹介なども用意されてはいるけれど、全体的にテキスト動画の質が悪い。というかダサい。
使っている動画素材も良くないし、説明もわかりにくい。
ナレーションも入れて説明されているけど読みも良くないし非常に手抜き感がある。
教えている内容も重要な要素が抜けている。
僕の目線からするとなぜこれを教えない?と思ってしまう。
ワードプレスで作成されているサイトに埋め込まれているテキスト動画を見るのだが、せっかくWPを使っているのに文字としての説明もない。
各テキスト動画はサイトの右側のスペースにズラッと並んでいるのだが、各セクションでの整理がうまくいっておらず異常に長いサイトをひたすらスクロールしながら目当ての動画を探す仕組みになっている。

(やりずれぇ・・・)

包括的な仕事の流れの説明がない

一個人の趣味でやるなら問題ないけれど、
仕事…つまりプロとして映像編集をするのだとすると、全体の流れを理解する必要がある。
特に映像業界は分業化されており、編集の前には企画も撮影も行われている。
編集の後であってもMA(音の整音)やナレーション、本編集のスタジオに入るならデータの受け渡し方だってある。
自分がどのような立場で、なにを求められているかも理解せずにお仕事をするのはあまりに危険だと思う。

もちろん映像業界は媒体ごとに違いがあって、僕の場合だとTVCMなど広告の世界だし、テレビ番組や企業VP、ミュージックビデオやYou Tube動画や、Tik TokなどSNS動画の世界もある。
たしかにそれぞれの業界のお作法みたいなものはあるのだけど、それにしたって動画(映像)編集であることには変わりない。

動画スクールだとその辺はあまり説明されておらず、とにかく案件獲得がどーのこーのって話になっている気がする。

映像編集の楽しさを伝えていない

動画、というか映像って本来は楽しいものだと思う。
映画・ドラマ・アニメ・広告・アート・・・
そもそも娯楽として出発しているし、
映像は総合芸術と言われる分野でもある。
そして編集という、映像を操るパートはとても奥が深いし楽しいものだ。

だれにだって好きな映画やドラマ、アニメ、ミュージックビデオがあると思う。
それらは実際に作っている人たちの情熱と努力によって成立しているものだ。僕個人としては、それはとても崇高なものだとさえ思っている。

ところが、スクールではそのあたりに全く言及していない。

ソフトの使い方と案件の獲得方法のお作法。
たしかにそれも必要なことなのかもしれないけれど、本来は映像が好きな人がより良く映像を作る方法を学ぶ場所ではないのか?

なんというか…失礼な言い方かもしれないけど、工場の流れ作業をひたすら教えているような。
全然クリエイティブな要素を感じない。

案件獲得とお金稼ぎだけを目標にしているのだろうか?
それだとつまらないし、モチベーションは維持できないと思う。
なにより「好きでやっている人」には到底勝てっこない。


不透明さと横のつながりの断絶

僕が請け負ったスクールではなにやら意図的に横のつながりを断絶させているフシがあるように感じた。
講師同士のやりとりもほぼないし、ギャランティに関しても非公開。後でこっそり聞いたが、どうも講師によって時給に違いがあるようだ。
これは生徒同士でも同じで生徒同士の交流は不可能だし、どうも支払った金額が時期によってバラバラっぽい。
公式サイトに金額が書いていないのはその辺が理由なのではないかと思っている。

講師には生徒へのズーム講義以外にもテキスト動画を作る仕事があった。
しかしあまりの安さが割に合わず僕はやろうと思わなかった。
こういうのってすごく丁寧に作らないといけないし、間違いがないように慎重に作らないといけない。
結果、時間がかかる事なので安い金額ではとても作れない。
発注をかけている運営は映像を作ったことがあるのだろうか?
僕は少し疑問に感じてしまった。

結構テキスト動画の内容に思うところがあったので、結局僕は自分が教えている箇所に関して個人的に自分でテキスト動画を作り、わかりやすいように補足していた。

無駄に学習期間が長い

実際の所、学習に終わりは無くて僕自身も23年間映像編集をしているが、それでも学習し続けないとあっという間に売れなくなってしまう。
フリーランスというのはそういうものだ。

なのでここで言う学習期間が長いというのはスクールの受講期間がダラダラと長期間になっているのが問題だ。

このスクールでは1年コースと半年コースに分かれていた。

一年!
オンラインのコースで一年は長くない?
大した内容でもないのにダラダラと一年もかける必要があるのだろうか?

実際の仕事の現場に入ると足りない技術や知識を思い知らされて慌てながら必死になって勉強することになる。
だけど、その業界に入る前の学生の状態ではそんな危機感は無い。

ちなみに僕はエディターとしてデビューしたのは就職して半年後だった。
スタジオ勤務なので今みたいにソフトの使い方がわかれば良いという話ではなく、マシンルームのプロ機材の使い方や編集室の配線、顧客対応や前後のデータの受け渡しなど覚えなければならない事がかなりあった。

だから毎日勉強しなければならなかったし、ソフトもひたすら一日中触っていた。

今、動画編集の勉強している人がこの記事を読んでいるなら、
ぜひ覚えておいてほしい。

短期間に集中して学習をしないとすぐに忘れる。
一方で、学習していない時間の分だけ学習したことを忘れる。

とにかく何時間も座って手を動かさないといけない。
理屈は後からついてくるのでとにかく何時間でもかけて体で覚える必要があるのだ。

生徒が支払っている金額が高額

これもすごく気になった。
ズームを使ったオンラインとはいえマンツーマンで教えるにしても、週に一度、たったの一時間だ。
でもってわかりにくいテキスト動画。
僕はある時生徒さんにさりげなく金額を聞いてみた。

教えている側が生徒に金額を聞くのも変な話だが、その情報は講師側にはないのだから仕方がない。

するとその金額に驚いた。

一年コースで60万円!

マジか。
高い。高すぎる。
これをダラダラと一年も続けて60万円もかけるとは。

ありえない。

これがオンラインじゃなくて対面で機材も用意し、手取り足取り教えて毎日2〜3時間の集中した講義や実習であればまだ理解できる。

それがオンラインでしかも内容はほとんどテキスト動画を使った自習。

講師を時給1500円ぽっちで働かせておきながら、
生徒からは60万円も支払わせるとは。

これは確実に運営側がぼったくってる。

「これからは動画編集でだれでも稼げる!」
「毎月50万円は余裕!」
「だれでも自宅にいながら楽に副業!」

みたいな煽り文句に騙されてしまったのだろうか・・・
僕のような講師も、夢を見た哀れな生徒も完全にカモにされているのか。

運営のえげつない拝金主義も問題だけど、安易に乗せられる生徒も問題だと思った。(そして講師としての僕も)

生徒のPCスペックに問題がある

一応スクールからの簡単な解説もあるのだけど、動画の編集にはそれなりのスペックがあるPCが必要になる。
3DCGほどのスペックではなくとも、安定して映像が再生できる環境が最低限必要だ。
もちろん動画はデータ容量をかなり使うのでそれが入るストレージが必要だし、色々な処理を行うからメモリも大盛りにしないとダメだ。

そのあたりの説明が行き届いていないのか、生徒さんのPCスペックが軒並み足りていなかった。

他の講師の方に聞いたが、ひどいのになるとそもそもPCを持っておらず、手持ちのスマホでできるか?と聞いてきた生徒もいたそうだ。
すでに受講料を払っているにもかかわらずだ。
・・・まあ一応今ではスマホでできる動画編集もあるにはあるけど、そもそもPCで行う動画編集を教えるのが最低条件だ。

僕も相談に乗って必要なスペックについて解説し、安く済ませられるようにマウスコンピューターのPCを紹介したりした。
(ついでにいうと僕は生粋のMacユーザーなのでWin機はあまり詳しくない)
しかし、ネットでPCを買うという選択肢がないのか、近所の家電量販店で無意味に割高なPCを買っていた。
当然余計なソフトやらウイルスソフトまでてんこ盛りになっていた。
(最近はよほど変な事をしないかぎりウイルスはWindows Defenderで十分だ。むしろウイルス対策ソフトが悪さをする事が多い)
そしてなぜかノートPC。
別にノートPCがダメだとは言わないけれど、本当に外出先で動画編集するの?
マウスも10キー付きキーボードも使わずに動画編集するの?
それでもってノートPCの狭い画面で動画編集するの?

細かく説明したはずなんだけどな。

年配の方が知識不足で損しちゃうのは仕方がないのだろうか。

生徒同士の交流がない

何かを教わった時、
教わった内容を本当にモノにする時とはどんな時だろうか?
僕は「他の誰かに教えた時」だと思っている。
誰かに教える時に初めて自分が

どのように理解しているのか?
どこが間違っているか?
どこが理解できていないのか?

などを理解できる。
言語化するのはとても重要なのだ。

知識はインプットだけではなくアウトプットも必要で、本当は生徒同士で教え合うべきだと思う。

岩明 均 (著) 「ヒストリエ」より

でもこのスクールではどういう訳か生徒同士の交流ができないようになっている。
グループディスカッションなどを行えば、生徒同士で教えあって足りない所に気づいたり、補え合えたり、さらに言えば講師が検討すべき修正点も見えてくるはずなのだ。

スクールや講師に対する批判をさせないように分断してるのではないか?
と僕は邪推してしまう。

生徒がお金の事しか考えていない

これも気になった。
色々と教えていても、生徒が気にしているのは

「どうしたら稼げますか?」
とか
「いくら稼げますか?」

ばかりだ。

編集技術であったり知識に興味が無い。
そもそも「好きな映画は?」とか聞いても答えられない。
最初っから動画(というか映像作品)に興味がないのだ。

頭の中は楽に稼げるかどうかばかり。

いつもはボケーッと無言で僕の講義を聞いているのだが、ある時僕の仕事の見積もりを見せてみた。
すると生徒さんはその時だけものすごくテンションが上がる。

夢を見せるつもりはないのだけど、現実に僕が「このような日程感でこの程度稼いでいる」というのを見ると、その金額にしか目に入っていないようだった。

僕がそれまで20数年働いてキャリアを構築し、研究と学習と実践を続けた結果だというのに、その部分がまるで見えていない。それを今教えているというのに。

結局の所、スクール運営はこのような生徒さん達を相手にしていて、真にケアする様子は無い。
一応心構え的な講座も用意してはいるのだけど、生徒さんは軒並みそのような精神論には興味がない。

勉強する気が無い人はお金だけ取られて置いてきぼりになる。
それはもう仕方のない事ではあるのだけど、本来なら受講する前にきちんと説明しないとダメだと思う。
さらに言えば最低でも講義開始から一ヶ月までは返金対応できるようにすべきだし、講師の側からも勧告した方が良いと思う。

動画編集が向いていないと気づく人もいれば、
動画編集が好きになる人もいる。
好きになって続けられるようになるならそれで良いのだけれど、
向いていない・映像に興味もない人が、ダラダラと叶わない「楽に稼げる幻想」に浸って半年や一年も無駄にするのは正直不幸だと思う。

運営からすればカモだと思っているのかもしれないけれど、それはやっぱり倫理的にどうなの?と僕は思ってしまう。


初心者狩りが横行する世界

受けてしまった以上、1年間対応したけれど、結局ほとんどの生徒が途中で辞めてしまい、最終的には一人だけが残った。
僕も今後こういうお仕事は受けたくないと思ってしまった。

年配の方が多かったのも気になったけど、情報弱者やお金に目が眩んだ人たちがあっさりとカモにされてしまっていて僕は見てられなくなった。

そもそも編集ソフトの使い方なんて調べればいくらでもあるし、You Tubeでも丁寧でわかりやすいチュートリアル動画がいくらでもある。
それを調べずに安直にお金を出して無駄にして・・・
残念ながら動画編集スクールでなくともいずれはなにかのスクールで大金を失っていたのかもしれないなぁ
と思ってしまった。
たとえばプログラミングとか。アフィリエイトとか。FXとか。仮想通貨とか。せどりとか。

運営側も商売だから余計な入れ知恵はしないという理屈はわからなくもないけど、大金を払いながらゲンナリしていく生徒たちはあまりに不憫に思えた。

でもある所にはあるんだね。お金。

一番儲かっているのはスクールを運営している人


アメリカのゴールドラッシュの話ってご存知だろうか?
アメリカのカリフォルニア州で金脈が見つかって、
大勢が一攫千金を狙って殺到したそうな。
ところが、早々に金は掘り尽くされて
結局のところ一番儲かったのは
「採掘をするためのツルハシを売る人」
だったという話。

同じように
一番儲かっているのはスクールを運営している人なんだろうな。と思う。

Twitterとかにもいるよね。
「月100万到達!」とか「3ヶ月で案件獲得!」とか。
でもって「LINE登録で秘訣を教えます!」みたいな。

まあそれぞれの業界を知らないから実際どうなのか僕は知らないけれど、
こと映像編集(動画編集ではない)に関してはそれは無いなーと思う。

あと、「月収30万達成!」とか言ってるのには注意が必要。
実際に30万円達成してたとしても、他の月がどうなのかはわからない。
見るべきは「年収」じゃないとダメ。
僕だって売上5万円ぽっちの月だってあるし、200万円近くなる月もある。
まあその「年収」だって本当かどうかはわからないけど。

おそらく予想では数年後には動画編集もAIで自動化されてしまい簡単なものしか作れない動画編集者は淘汰される可能性が高い。
スクール運営している人はそれまでにがっつり稼いでとっとと撤退するんじゃないかな。
それを原資に投資やら他の似たようなビジネスを始めるのかもしれない。
ぶっちゃけ勝ち逃げだと思う。



Webデザインやプログラミング、そして今回の動画編集もスクールがいっぱいある。

もしも僕がスクール運営をやるのなら、ひとり親の人を対象に格安かつ返金対応できるようにすると思う。
実際今現在僕がやっているように、映像を愛する心と努力と機材があれば子どもを育てながらでもしっかり稼ぐことはできると思う。

もちろん「楽に稼げる!」みたいな事は口が裂けても言えないけど。

みなさんもくれぐれもカモられないように気をつけましょう。
騙されないでとは言ってませんよ)

おまけ

ちょっと前にTwitterで話題になったエッセイマンガが面白かったです。
まあこういう事だよね。って話。
https://twitter.com/i/events/1495044681947750404?s=20

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