Nik Bartsch's Ronin 神戸公演 Day2
7月10日(水)に神戸の100BANホールへ。
Nik Bartch's Roninの公演を聴きに行きました。
Nik Bartch's RoninはECMレーベルの音源を聴き漁る中、数年前に知ったバンドで、スイスの作曲家・ピアニストのNik Bartch(ニック・ベルチュ)がリーダーです。
ちなみにRoninは「浪人」のことで、Nik Bartchは日本好きです。日本語が少し話せるようで、買った楽譜にサインをお願いする私に「ピアノを弾くんですか?」と日本語で尋ねてくれました。
Nik Bartsch's Roninのアルバム『Llyria』は私のバイブルの1枚です。曲はすべて「Modul 48」のようにネーミングではなくナンバリングされています。子供の頃の思い出や男女の別れなどに基づいた「歌」とは徹底的に距離を置き、「反復と変化の構造」をスリリングに展開する音楽です。
私がそのアルバムに出会ったのはアイヌやアフリカなどの民俗音楽に興味をもって、それらに特徴的な「反復による瞑想感覚」を現代的に解釈するための方法を悩んでいた頃でした。そのため、初めて『Llyria』を聴いた時は「この感じだ!」と探し求めた仙人のもとへたどり着いた気分でした。
約1年間毎日のように聴き続ける中でいくつかのアイディアを自分の作曲に試しましたが、それらを血肉化することは難しかったように思います。小さな反復と変化の構造を作ることはできても、それを展開させて「儀礼的な空間」にまで昇華するのはとんでもない技量が求められます。
ここまでが私的なNik Bartschの紹介で、この後にライブの光景を綴ります。
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登場からピアノ椅子に座ると同時に鍵盤を鳴らすNik Bartsch。
「おぉ~初っ端から内部奏法を炸裂している」と思っていると、Sha(alto sax), Kaspar Rast(drums), Jeremias Keller(bass) の3人が入ってくる。
バンド・メンバー全員が楽器を奏でた瞬間、深紅に光る舞台で祭礼が始まった。
空間の圧に驚きながら笑っていると、身体が自然に動き出す。興奮と厳粛が混じった心理状態。ほぼMC無し90分1ステージというストイックな進行で、常にクールなRoninの皆さん。聴き手の体感時間もあっという間だった。
私が座った席はNik Bartchの右後方で、弾く佇まいと手元が良く分かる場所を選んだ。
ピアノを「音響マシーン」のように扱って、凄まじいスピードで音をプログラミングしているように見えた。ただ、不思議なことに無機性よりも身体の躍動が勝る。俯瞰と没入の2視点なのだろうか。
とにかく全員が驚異的でクールな演奏だった。
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ここからは余談です。
今日のライブは物販コーナーが充実していて、その中に『Llyria』のバンドスコアとピアノソロの楽譜がありました。かつて一部だけ耳コピに挑戦したアルバムのスコアがあるだけでなく、ギター・デュオにも置き換えやすいピアノソロの楽譜もあるのを知って、「これは2冊とも買うしかない!」と購買欲が刺激されました。
そこで、物販担当の方に値段を尋ねると、なんと1冊6000円。3000~4000円の予想だったので、「いや~なかなか値がはりますねぇ~」と言葉を選んだ(?)返答をしました。初めて円安の影響を肌身で感じました。
ちなみにNik Bartchが物販のために持ってきてくれた楽譜らしいです。終演後にサインをもらうことも考えると、「良い買い物」と納得できました。また、サインは思い出の刻印だけでなく、研鑽の励ましにもなるような気がします。そのため、開演20分前に会場からコンビニへ向かい、ATMで手数料330円を支払って足りない現金を補充しました。楽譜2冊で12000円を支払いました。
Nik Bartschの音楽をもう一度しっかり学びます!
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