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【2023年6月】カルチャージャンキー月報

今月は、働いていた会社を退職した月で、月のほとんどを有給消化にあてていた期間だったのですが、あまり映画も、展示も観ず、本も読まないという怠惰な1ヶ月を過ごした。
月の最終週に追い上げをかけようようとしていたのですが、夏風邪をひきそれも叶わずな感じだった。
ジャンキーであるためにもフィジカル、メンタルとも安定させたい。

6月の月報です。ご査収ください。

舞台・演劇

カモメよ、そこから銀座は見えるか?

作・演出:岩松 了
出演:黒島結菜、井之脇海、青木柚、櫻井健人、岩松了、松雪泰子

年の瀬の銀座を舞台に、肩を寄せ合って生きてきた兄妹が、かつて家庭を崩壊させた父の愛人と出会い、徐々に打ち解けてゆく”赦し”の物語。

俳優で、演出家、脚本家もマルチにこなす岩松 了 作・演出の舞台。
岩松作品は、過去2回観たことがあり、脚本を手掛けたドラマ「時効警察」も大好きだったので、楽しみにしていた。
作品目当てというわけではなく、今回は役者陣が個人的に好きな若手俳優の青木柚、井之脇海ということもありチケットを取った。

両名とも、舞台で観るのは初めてだったが、さすがの演技力と、映画やドラマの基礎を持っての舞台の演技になっていてよかった。特に青木柚は、舞台的な演技ではあるのだが、オーバーすぎず影のある青年を見事に演じていた。また、まったくノーマークだったが、櫻井健人の演技がめっちゃくちゃ良かった。ポティティブで憎めないキャラの立ち振舞い、セリフの間合いや息の感じが良くて、今後売れていくであろう役者さんだなと思いながら観ていた。

シリアスであり、シリアスさだけでなく笑いや人間臭さを持ったセリフと演出、そして若手の育成を考えたキャスティングは本当に見事だと思う。還暦にして年約2回、舞台を作演出して、そして出演までする岩松了凄すぎる。


ライブ

STUTS 『"90 Degrees” @ 日本武道館』

2023年6月23日 / 日本武道館

音楽プロデューサー、トラックメーカー、MPCプレイヤーとして、様々なアーティストとコレボレーションをするSTUTSの武道館公演。様々なラッパー、アーティストがゲストとして参加した。

純粋な感想として「スタッツ、かっけえ!!」です。これに尽きる。
MPC一台から武道館を埋めるくらいお客さんを集め、アーティストたちの絶大な信頼を得る彼は、本当に格好いい。
最初のひとりでMPCを叩く姿には鳥肌が立ち、数々のアーティストたちとの共演では感謝の言葉を都度述べる姿に心を打たれ、音楽と人格がここまで一致する人がいるんだなと思った。


映画

aftersun/アフターサン

11歳の夏休み、思春期のソフィは、離れて暮らす31歳の父親カラムとともにトルコのひなびたリゾート地にやってきた。まぶしい太陽の下、カラムが入手したビデオカメラを互いに向け合い、2人は親密な時間を過ごす。20年後、当時のカラムと同じ年齢になったソフィは、その時に撮影した懐かしい映像を振り返り、大好きだった父との記憶をよみがえらてゆく。

https://eiga.com/movie/98881/

すでに多くの感想で語られているが音の映画だった。
冗長ではあるかもしれないが、それを含めてこの作品の魅力なのだと思う。説明的でなくても豊かで語りかける映画。

ちょうど31歳になるときに観てしまったので、色々と考えてしまった。
もしかしたらこの年頃の子供がいたかも知れないし、子供の気持ちも、大人の気持ちもよく分かる年齢でもある。久しぶりに映画を観て食らってしまった。


怪物

大きな湖のある郊外の町。息子を愛するシングルマザー、生徒思いの学校教師、そして無邪気な子どもたちが平穏な日常を送っている。そんなある日、学校でケンカが起きる。それはよくある子ども同士のケンカのように見えたが、当人たちの主張は食い違い、それが次第に社会やメディアをも巻き込んだ大事へと発展していく。そしてある嵐の朝、子どもたちがこつ然と姿を消してしまう。

https://eiga.com/movie/98367/

是枝裕和監督作品。脚本は坂元裕二。
是枝×坂元裕二であったのでとても楽しみにしていた作品だった。

多面的にとても豊かに、そして静かに、多くを語っていた映画。各々の立場や置かれた環境の違いによってここまで人はすれ違っていき、保身をし、他者を憎しみ、そして盲目的になってしまうのか。と、脚本と演出の妙がとても上手く現れていた。

メインキャストである子役の二人、安藤サクラ、瑛太はもちろんのこと、田中裕子の存在感というか、放つオーラが本当に良かった。坂元作品における田中裕子は元々良かったが、今回は是枝作品の中でもその存在感が決して輝かないが人を惹きつける怪しい光を放っている。


ウーマン・トーキング 私たちの選択

2010年、自給自足で生活するキリスト教一派のとある村で、女たちがたびたびレイプされる。男たちには、それは「悪魔の仕業」「作り話」だと言われ、レイプを否定されてきた。やがて女たちは、それが悪魔の仕業や作り話などではなく、実際に犯罪だったということを知る。男たちが街へと出かけて不在にしている2日間、女たちは自らの未来を懸けた話し合いを行う。

https://eiga.com/movie/98565/

この映画は、観終えたあとに感想を誰かと語りたいとか、何かを他者へ伝えたいものというより、自分の中で考え、自分だったらどうしていくのかという、自問自答を観ながら重ねていくような映画だった。
正直、観る前は寝てしまうのではと思っていたのだが、そんなことはなくずっと映像に集中し、思考を巡らせる時間だった。
配信になったあとでもいいので、必ず観てほしい映画です。


アイデア No.402「小さな本づくりがひらく 独立系出版社の営みと日本の出版流通の未来」

本づくりの舞台裏を特集した号。
ころから、rn press、夕書房、いぬのせなか座、エトセトラブックス、港の人、書肆侃侃房という7つの出版社/出版人たちを取材し、独自の視点やテーマ性をもって刊行された書籍や各社の出版活動の姿勢を紹介している。
文フリやTOKYO ART BOOK FAIRなど、ZINEやリトルプレスなど、出版社よしてでなく個人として出版を行う人が増えている中ででた今回の号。改めて出版社として本を作ることの意義、意味を考えたし、個人の出版とは違った面白さ、強さを感じる特集だった。やっぱり本っていいですよ。


西村賢太「一私小説書きの日乗」

2011年3月から2012年5月までを綴った芥川賞受賞の私小説家・西村賢太の日々の記録。
彼は何を書き、どんな日々を過ごしていたのか。簡素かつ無味なのに滋味深い筆致。まさに平成無頼の日記文学。

改めて思うのは、飲み食いしすぎだし、そりゃ早死にするわってこと。こだわりがないようである彼なりの美学、日常を知ることができる一冊。日記ブームという昨今の中で、読むべき日記本だと思います。信濃八太郎さんの装画も良い。


ブックオフから考える: 「なんとなく」から生まれた文化のインフラ

日本全国に800店舗以上あるブックオフ。そのブックオフを取り上げた諸書籍。
ブックオフはどう語られてきたのか。またその語りに潜むノスタルジーとは。チェーン店であるブックオフが都市にもたらしたある種の「豊かさ」とは。ブックオフで「偶然」出合う本の面白さとは。
ブックオフから生まれた音楽、カルチャーとは。なぜアーティストはブックオフからの影響を語るのか。ブックオフが生み出す公共性とは。「文化のインフラ」の内実とは何か。そのようなことを取り上げている。

個人的にはもっと深く突っ込んで、ブックオフと文化についての批評が載っているのかと思ったら、意外と既出の文脈の中の批評や、すでに見たことあるような語りが多く、まあこんなものかとなってしまった。
出版不況やメルカリなどの台頭によって変化するあるブックオフ。そんなブックオフの様々な面を改めて知ることができる。


展示

マティス展 Henri Matisse: The Path to Color

東京都美術館 / 4月27日~8月20日

20世紀を代表するフランスの巨匠、アンリ・マティスの日本での約20年ぶりの大規模な回顧展。
「赤の大きな室内」をメインに、様々な作品が観れる展示。単体では何度か観たことあったが、これだけマティスの作品を観れるのは本当に嬉しい。
色彩感覚、モチーフの描き方、切り絵の抽象化など、マティスの歩んできた表現の歴史を辿れる。

来年の2月には新美で切り紙絵に焦点を当てた展示も予定されてるから日本国内のマティス熱が続く。


ケニー・シャーフ『I’m Baaack』

NANZUKA UNDERGROUND / 6月10日〜7月9日

絵画からインスタレーション・アートまで、様々なメディアを駆使し活動するケニー・シャーフの個展。日本での約30年ぶりとなる新作個展。
カラフルで元気になるようなな色彩と、不思議な魅力を持つキャラクター。やっと実物を見れた喜びが強かった。実物のCosmic Cavernを観れて感動。


Stephanie Quayle「Animal Instinct」

Gallery 38 / 5月11日〜6月25日

ステファニー・クエールの個展。
新石器時代や古代ギリシャの壺に使われたものと同じ材料を使い、動物のイメージを作品化し続けるアーティスト。
度々、Gallery 38で開催されてるけど、今回の個展が個人的には好きだった。動物のスタチューの中で1番好きな作家だなと改めて思った。


ESOW ART EXHIBITION

ビームスT原宿 / 6月2日〜6月11日

アーティストESOWのアートショー。
スケートやグラフィティなど自身のバックグラウンドが詰まった作品の数々。小屋の展示がすごく良かった。
⁡やはりバックグラウンド、出自がしっかりしていて、それを作品に落とし込んでいるアーティストは普通の作品の何倍も語りかけてくるものがある。


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