見出し画像

自社の強みが競合への差別化に常になると、絶対視してはいけない

経営戦略を検討するご支援のなかで、こんなことがあります。
対人営業が中心の会社が、EC通販の会社に対してどのような差別化していくかを考えます。よくみられるのは、EC通販はコストやスピードなどでメリットがあるものの、個別のお客さまの状況を踏まえたアドバイスができない、それに対して自社は人間が対応するため、人間関係を構築し、お客さまの状況を踏まえたアドバイスができる、それが差別化ポイントである、と。これはこれで方向性としては何もおかしくはないと思います。
 
ちょっと問題があると感じるのがその先です。将来において、EC通販の会社はAIなどを活用して個別アドバイスができるようになるが、そうなっても自社は人間による個別アドバイスで差別化していくのだ、となることがあります。
 
思わず、「対人営業であっても、営業パーソンがAIを活用して個別アドバイスを行えば、人間でないとできない人間関係構築にくわえ、アドバイス自体の質も高まるから、お客さまはもっと喜ばれるのではないですか?」とお話しすると、少し驚かれ、「自社が個別アドバイスでAIを活用するという発想はなかったです。」と返ってくることがあります。
 
考え方として、競合の取組みを自社が取り込んでよくなることであれば、取り込んだ方がよいのです。元々、自社がもっている強みに競合の取組みが加われば、結果的に競合に差別化できるものになります。もちろん、本事例のようにEC通販はデータが豊富なためにAIを活用しやすい、対人営業ではデータが整理されていないために活用しにくい、などの課題はあります。しかし、これこそ経営として意思をもってデータ化などを推進すれば解決する問題なのです。
 
危険なのは、自社が競合に対して差別化できると思っているものを絶対視して、競合がよい取組みをしたり、自社がもっているもの以外で優位性をもっていても、それを軽視したり、受け入れようとしないことです。
歴史のなかでも、太平洋戦争において日本人はアメリカ人よりも精神力が高いから、物量では負けていても互角に近い戦いができるのではないか、と期待していた面もありました。また、精神力重視は銃や大砲、戦車などの火力兵器の進歩を遅らせていました。
このように精神力を絶対視した結果、日本は国家破滅の淵をみることとなったのです。
 
自社がもっている強みは、確かに競合と比較すれば差別化となることもあるくらいに捉え、それを絶対視してはいけないのです。現時点でもそれでも差別化できないケースもありますし、ましてや競合がそれを上回るものを出してきたら、その強みが無力化することもありえるのです。
それを避けるためには、競合の取り組みに常に注意を払いつつ、その取り組みが自社にもよいものであれば、取り込めばよいのです。そのためには、松下幸之助さんが言われていた「素直と謙虚」の気持ちが必要なのかもしれません。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?