大切にしているもの
今ここに母にもらったペンダントがある
階段を一段登るたび、大人になって、巡る季節は同じでも、同じ夏はまるでなく、海も山も、青い空も、毎度、違って見える
一緒に旅行もしたかった
もっと一緒に美味しいものを食べたり、話しをしたかった
母を追いかけ、通勤電車を見送った重い空気の朝、泣きはらした目とお腹の痛み、夕暮れに、買い物袋の中身を楽しみにしている私は、母の愛をずっと、疑っていた
自分が子どもを育て、幸せなときを過ごしながら、いつも母を思っていた
彼らと出逢って、私は、私になれた
母の愛をたくさん感じた
母はいつも私に必要なことを言ってくれていた
ときに、何もかも投げ出したくなるほどの痛みが私を苦しめた
愛という生き物が、毒を放って、自分の棘に傷ついて、、それでもやはり愛したいという
愛のことなどわからない
どうしたんだろう、私は、どうなったんだろう?
途方に暮れて、彷徨った
なのに、なぜここにいられるのか
私なんて価値のない塊が
大きな苦しみは、小さなササクレを見てみぬふりをしてきた自分のせい
小さな心配は、助けてと言えばよいだけだった
私は、私の階段を上がり、母は母の階段をすすんでいた
娘も、もちろん精一杯、登っている
どんな人も、それぞれの階段を一段、また一段、登っている
螺旋状のそれは、見下ろすと、どこかで絡み合い、固定され、また離れた場所で今にも倒れそうに、ゆらゆらと揺れている
ぐるぐるとゆっくり、絵画を見るように、立ち止まりながら、上を見たり下を見たり
透明な鏡の世界で私は今、自分がどこにいるか、確認している
胸のペンダントが揺れることで、今、私は、ここにいるんだとはっきりわかる
母がくれたのは、私そのものの光
娘が、どこにいるか
母がどこにいるか
それは、私からは見えないこともある
遥か彼方で輝いていることを願いながら、また道端の小さな花の中にそれを感じたり、飛んでいる鳥に手を振ってみたりしている
ペンダントの揺れを感じて、私は、階段をまた上がる
泣いているなぁ
笑っているなぁ
いい顔しているぞ
その調子その調子
螺旋状の軌道は、あなたにもある
どこかで歪んだり伸びたり、
滝のように落ち、龍のように昇ったかと思うと、竜巻のように、一気にすべてを巻き込んで、別世界へ飛んでいく
私に起こる出来事は、生まれたときにもらったエネルギーのかたまりがくしゃみでもするかのように、四方八方へ飛び散っていく様に似ている
そこから始まっている
「オギャー」と、いったそのときに、受け取ったペンダントには、その生命のあらゆる光景が、映し出される
秘密のペンダントは、その持ち主にしか見ることができない
母は、私が望んだことが叶う世界をちゃんと用意してくれていた
そうですか
そうなんですか
本当にそうですね
本当にそうですか?
自分の心と優しく会話する
愛おしい心、疲れた体をいたわり、再び誰かの幸せを、願う力を蘇らせて
「オギャー」とは、世界中の幸せを願うおまじないの言葉だ
私達は全員が魔法使い
魔法を持っている
もしかしたら絵本にできるかもしれない物語の元に、、。
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