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「朱美なんかのどこがいいの?」

休み時間
いつもそこにいた
階段の踊り場

みんなの公認だった2人の仲は
夏休みが終わった9月の
2週間ぼどした頃
終わりを迎えるだろうと
私以外の
みんなが知っていた


“昨日、夢に見たよ
お前のこと”

“甲子園に連れていくから”

“毎晩、素振りしてるんだ、
お前のこと思って”

“好き好き、一番好き”


カップルがそうしていたように
私達も
小さな 手紙を毎日交換した
毎日聞かないと嫌だった
みんなから
ひやかされても
そりゃあそうよ、と
ときめいてた


その言葉はもう
私ではない
朱美に向けられている

朱美しか見えないのだ



可愛い子だ
おしゃべりも女のコっぽい

心のなかでは知っていた
私だって
友達になりたいくらい良い子だ


「人のことをそんなふうに言うな」
階段を降りながら彼が最後に言った

心変わりした人の言う言葉か、
ハンカチを噛む思いだった


メラメラとしていた心の炎は
チロチロ、小さくなり
燃えるのをやめた


かっこいい人だ

それで終わりにしよう

私は悪くないし
彼が選んだ人ももっと良い子だし
彼も心の大きなかっこいい人だ



その一年前
雨の日に待ち合わせた日曜日
「雨だし
帰ろう」

雨だって構わないのに
私は一緒にいたいよ

そんな言葉をのみこんだ


わがまま言っちゃだめなの

可愛くない私の誕生した日だった


こんな私になったのは
あなたのせいじゃん!



成人式に
再会してドライブした

その十年後の夏に
街で偶然出合った


どうしてだろう
手も繋がなかった人なのに
ずっと繋がっていたように
交わす会話

冗談交じりで
「焼けぼっくりに火を付けてみよっか」

「髪型直したほうがいいんじゃない?」



やっと
復讐してやった



朱美のことを私に告げ口したのって



「誰だったんだろうね、あれは」




次のテーマは
『白』の予定です
お楽しみに

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