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サステナブルなワイン消費を考える

今後しばらく、このテーマでnoteを書くことが増えそうだ。

「サステナブルなワイン消費」ってなに?と思われるかもしれない。
正直ぼく自身もそれがどういうものかはよく分かっていない。

でも平たく言えば
環境にやさしいワインの楽しみ方を考えたい」ということ。

ワインの流通、販売そして消費に至るまでの流れを、もっと環境への負担の少ないものにできないだろうかと思う。

「ワインと環境」というと、もしかしたら化学薬品とか殺虫剤とかに目が向くかもしれない。それはつまりローカルな環境問題であって、今まで減農薬、有機栽培といった形で解決が試みられてきた。
消費サイドにいるぼくら日本人からすると、ワインは農家がつくり、細々と消費される飲み物のようなイメージを抱きがちだ。きわめてローカルな飲み物であり、日本に輸入されるのはそのごく一部だろうと。

でも実際はぼくらが思うよりはるかにグローバルなのがワイン産業だ。
世界中で毎年つくられるワインの量はおよそ250億リットル(2020年推計、OIV)、そのうち2億リットルほどが日本に輸入されている。
日本は世界中からワインを輸入するグローバルなトレーダーであり、環境問題も、よりグローバルに捉える必要がある

ワイン業界は、環境問題に敏感だ。
それはワイナリー、ブドウ園が自然に最も近い場所にいるから。
今、最も大きなテーマとなっているのが気候変動、すなわち地球温暖化だ。
ワイナリーたちは、その影響をダイレクトに受けている。

ワインの専門誌のみならず、イギリスのBBCなどの一般メディアも、ワインの銘醸地と言われるフランス、アメリカはカリフォルニア州、オーストラリアなどで頻発する異常気象が毎年のように報じ、多くの関心と危機感を集めている。

具体的には、季節外れの雨や暖冬といった予測不能な天候、極度の乾燥(干ばつ)とそれによる山火事、生育期の雹、大雨、春の霜害などだ。

これらの結果として、ワインそのものにも変化が起きている。
アルコール度数の上昇、品種の転換、栽培北限の上昇・・・。
ここ数年、こういった変化がよく取り上げられている。

折しも、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が報告書を公表し、話題になっている。
産業革命後に、地球全体で気温が平均1.09度上昇しているとのことだ。それによって海の水位も上昇、氷河が大きく後退しているからだ。この気温上昇のトレンドは、数年前の予測よりもずっと速くなっているそうだ。

温暖化の主たる原因といわれているのが温室効果ガス、特に二酸化炭素の排出である。
同じくIPCCの発表によれば「8月9日に公表された第6次報告書(AR6)では、気候感度は2.5~4度の範囲内である可能性が高く、最良の推定値(中央値)は3度としている」とのことだ。
気候感度とは、「仮に二酸化炭素などの温室効果ガスの濃度を倍にした場合に、地球の気温が何度上がるか」を示した指標だ。人間活動が地球温暖化を引き起こしていることは、IPCCの言葉を借りれば「疑いの余地がない」とのことだ。

参考)「IPCC報告書要旨 温暖化は人間の影響、排出ゼロ必要」(日本経済新聞、2021年8月9日)

地球温暖化の解決は人類の大きな課題であり、ワイン業界も責任をもって取り組む必要がある。

今ヨーロッパ、イギリス、アメリカ、オーストラリアなど、ワインの主要産地と市場ではサステナブルなワイン産業の在り方を模索する動きがたくさんある。
その事例はまた次回以降でお話したい。

日本は、というとまだまだ遅れを取っている。なぜか?
それは、この地球規模の変化を肌で感じる機会が少ないからだ。
この異常気象を実際に目の当たりにし、畑が壊滅させられ、経済的な損失を被ってきているのは、生産者サイドだけだからだ。
私たちが目にするのはおしゃれなラベルで着飾ったボトルだけであり、話題は常にその中身のおいしさだけだ。環境問題にまで思いを馳せることはほとんどないだろう。

では、消費者である私たちにとって、これは無関係なことだろうか。
もちろんそんなことはない。
世界全体のワイン生産量の実に4割近くが国際間取引されている
そして今人類が直面しているこの危機は、国レベルではなく、地球規模での対策が急がれている。もはや国は関係ない。生産者も消費者も、みんなが同じ船に乗っているのだ。

きっとこれを読んでいるあなたも「何かしなければ」という思いを抱いていることと思う。でも、どうすればいいの?一体私たちに何ができるのだろうか?

実は、ワイン業界が排出する二酸化炭素の量のうち、実に60~70%が「容器と輸送」に由来している(参考:https://wbmonline.com.au/climate-change-and-wine-marketing-a-big-job-ahead/)。
つまり、ワインの生産現場よりもそこから出荷された後のほうが二酸化炭素排出量が多いということだ。

容器と輸送は、流通と販売に関わっている。
ぼくらにできることは、まだまだたくさんありそうだ。
この連載では、そのことを考えていきたい。

ぼくはワインが好きだ。
願わくは、これからの人生でも、世界中のワインを楽しみ、その国の文化や風土に触れていたい。
と同時に、この楽しみが地球環境への大きな負担の上に成り立っていたという事実から、目を背けるわけにもいかない。

ワイン文化を次の世代につなげるため。
真剣に、サステナブルなワイン消費を考えていきたいと思う。

(つづく)

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一緒に考えていきましょう^^

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