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ワイン選びの世界② 料理とワインの相性について

今日は料理に合わせてワインを選ぶコツをお話します。

相性バッチリな料理とワインの組み合わせのことを、「○○と△△のマリアージュ」といいますね。少し気取った表現のように思われますが、一見似つかわしくない2人が、思いがけず気があう点で、結婚とワインは似ているとぼくは思います。ということで今回はマリアージュという言葉を使ってお話します。


色で合わせるマリアージュのデメリット

よく「料理の色とワインの色を合わせましょう」と言われます。

後述するようにこの考え方が的確かというと微妙なのですが、
あながち外れていないのが面白いです

例えば牛肉や鹿肉、マグロのような赤身の食材と赤ワインの組み合わせは違和感なく楽しめますし、鶏肉や鯛のような白身肉には白ワインがけっこう合ったりします。
スモークサーモンとロゼワイン、という組み合わせも美味しいですね。

ただ、なぜ同じ色で合わせると美味しく感じるのか、を科学的に説明している本はありません。少なくともぼくは見たことがありません。

ここからはぼくの私感も入りますが、3つの理由が考えられます。

1つ目は食材の色は食材の成分に由来しているため、色と味には相関関係がある、というものです。例えば肉の赤色をもたらすミオグロビンは鉄を多く含むため、味わいに鉄っぽさ、血のニュアンスが加わり赤ワインとの相性が高まるのかなと思います。

二つ目に、色がもたらす視覚的効果もあるでしょう。肉汁したたるレアのステーキの隣には、やはり赤ワインがよく似合います。生ハムやスモークサーモンの並ぶ華やかな食卓に鮮やかなロゼワインが加わると、より一層華やかに、食欲をそそります。

そして3つ目が、濃い色の料理は濃い味付けであることが多く、そのため白ワインよりもタンニンやフェノール類などの成分が多い赤ワインのほうが釣り合いが取れる、という考え方です。この理由が、ぼくの中では一番しっくりきます。

しかし、個人的にはこの「色を合わせる」マリアージュには大きな欠点があると感じています。

それは人によって好みが分かれてしまうということです。

赤ワインは苦手、という人はけっこう多いものです。
そんな方に「いやいやお肉にはやっぱり赤ワインですよ!ためしてみてくださいよ!」とは勧められません。赤ワインの啓蒙活動でもしているのなら話は別ですが、あらかじめ「これが苦手」と教えてくれてる人に無理強いするのは失礼でしょう。
白ワインが飲みたい方には、どんな料理と組み合わせるとしても、白ワインをオススメするのが正解だとぼくは思います。


重さを合わせるマリアージュ

それに、色を合わせるマリアージュは、飲み手の好みよりも優先されるほど、的確ではありません

料理とのマリアージュにおいてはワインの色よりも重さのほうが大事だ、というのがぼくの持論です。

食べ応えのある、あるいは味のしっかりとしたお料理には、どっしりとしたフルボディのワインを。

あるいは、あっさりとした軽めのお料理には、さっぱりとしたライトボディのワインを。

つまり色ではなく、ボディで選ぶということです。

ボディは「いまいちよくわからないワイン用語」ランキングがもしあるとすれば常にトップ10には入る強豪ワードですが、ほぼアルコール度数と比例する「ワインの飲みごたえ」と考えてください。すなわちワインの重さです。(より詳しい話は以前の記事を参照してください)

これだと色は関係ありません

しっかりしたお肉料理に、フルボディの白ワインを合わせてもOK

さっぱりした野菜と鶏胸肉のサラダに、ライトボディの赤ワインを合わせるのもOK

こんな具合です。

では、なぜ重さを合わせると良いのでしょうか?

一番の理由は、料理とワイン、双方の個性が埋もれてしまわないからです。ワインにたいして料理が重すぎると、ワインの繊細さ、果実味が損なわれてしまいます。反対にワインが重すぎると、料理の美味しさを十分に味わえません。重さの釣り合いをとることで、どちらの美味しさも活きてきます。

ぼくは、ワインはあくまで料理の引き立て役と考えています。だから少なくとも料理のボリューム感を凌駕するワインを選ばないよう気をつけています。

ボディは大手メーカーや良心的な裏ラベルをつけるインポーターのワインであれば表記されていることが多いです。
ボディの表記がない場合は、アルコール度数でおおよそのボディがわかります。
アルコール度数が11度未満であればライトボディ、14度以上であればフルボディ、というのが目安になります。

ぜひ参考にしてみてください。


マリアージュの根拠 「相乗」と「相殺」

ところで、そもそもの議論ですが、このマリアージュや、近年耳にするようになったペアリングとはいったい何を持って「合う」としているのでしょうか?

もう少し掘り下げてみたいと思います。

どちらも色々なセオリーをそのベースにしてますが、その大半は「似た風味をもつ者どうし」「重さの近いものどうし」を組み合わせているように思います。
夫婦でいえば、似た趣味を持つ者どうし、あるいは金銭感覚や生活スタイルが近い者どうし、という感じでしょうか。

これは西洋的な考え方だな、と個人的には思います。

その最たる例がデザートワインで、甘いデザートと一緒に甘い(それもすっごく甘い!)ワインを合わせます。同じベクトル同士をかけあわせることで、味の効用を増幅させるわけです。専門的に言えば、料理とワインの相乗効果を狙った組み合わせです。

これが日本や中国だとどうでしょう?
甘い和菓子には日本茶で、口の中をさっぱりとさせようとなりませんか?
こってりとしたトンポーローには、烏龍茶が欲しくなりませんか?
ぼくはこれを「相殺効果」と呼んでいます。

もちろん相殺効果はアジアの専売特許というわけではなく、ヨーロッパにおけるマリアージュ、ペアリングでも用いられます。

相殺のマリアージュを考える際にもっともよく出てくるのが、ワインの酸味です。ワインの酸が、食材の脂っぽさ(fattiness)を洗い流してくれて、口の中をさっぱりとさせてくれます。

タイトルの写真になっているカツレツ(シュニッツェル)とグリューナー・フェルトリーナーの組み合わせは、まさにこの酸味による相殺効果を狙っていますね。

このセオリーが身につくと、マリアージュの幅がぐっと広がります


具体的な組み合わせ方

先ほどの「重さを合わせる」セオリーも踏まえつつ、実際にマリアージュを考えてみましょう。

例えば「お肉と赤ワイン」

一般的な「色合わせ」セオリーだけだと、お肉に合わせるワインは赤ワインであればなんでも良さそうに感じます。

ですが、まず重さを考えると、厚切りステーキにライトボディの赤ワインはちょっと負けてしまいそうなので、フルボディの赤ワインをチョイスするのが良さそうだと分かります。(フルボディの赤ワインは総じてタンニンも豊富なので、より肉との相性は高まります)

さらに相殺効果を考えると、酸味が少ない赤ワインだと肉の脂っぽさを打ち消す力が弱く、途中で食べ飽きるかもしれない、と思い至ります。ということで、酸味のある赤ワインを選ぶのがベターだ、となります。(酸味がしっかりとあるかどうかをラベルから見抜くのは難しいので、店員さんを呼びましょう笑)

具体的には、フランス・ボルドーの長期熟成を前提にしたフルボディの赤ワイン、あるいはイタリア・トスカーナのサンジョヴェーゼ種の赤ワインなどがベストチョイスとなるでしょう。

肉の旨味を増幅させるペアリングも良し、肉の脂っぽさを打ち消すペアリングも良し、あるいはその両方を兼ね備えたペアリングも良し、なのです。


白ワインでも考察してみましょう。

赤ワインとステーキが合うと言われる理由の一つに、タンニンの存在があります。タンニンがあることで口の中での滞在時間が長くなり、肉を咀嚼することで(ソースの量が減り)パサついてくるのを補えるから、というものです。ですから白ワインと合わせるのであれば、単純に一口の量が小さくなるようにすれば良いのです。

まずは重さ。ステーキのボリューム感に負けないよう、フルボディの白ワインを選ぶのが良さそうです。そのワインが樽で熟成されていようがいまいが、アルコール度数が14度を超えてくる白ワインにはどっしりとした重さがあり、肉に負けない力が備わっています。

酸味は白ワインの「柱」とも言える大事な要素ですから、一定以上の品質であればどの白ワインにもしっかりと備わっています。

おうちで料理とワインを合わせるのであれば、これだけでも十分に相性の良いワイン選びが可能です。

もちろんより精度の高い考察をするのであれば風味の相性なども考えるべきですが、高いレベルのマリアージュやペアリングは、レストランで楽しみたいものです。

個人的には、ステーキには白ワインを合わせるほうが好きです。
ステーキを食べることは滅多にないので、ちょっと奮発します!
アメリカ・カリフォルニア州沿岸部のシャルドネ種、フランス・ローヌ地方のマルサンヌ種、スペイン・リオハの白ワインなどが好みです。

色にとらわれないと、意外な組み合わせも見つかります。例えば
すき焼きと、ドイツのリースリング(やや甘口)
カルボナーラとイタリアのランブルスコ

なども、合わせてみたら美味しかった!個人的なマリアージュです^^

まとめ

いかがでしょうか?簡単にまとめますと、

色で合わせる、は分かりやすい指標。
でも、ワインの色はけっこう人の好みが分かれるもの。
そこで「重さ」の登場!
重さはボディ、あるいはアルコール度数で判別できる。
料理のボリューム感とワインの重さを合わせる一工夫があれば、
料理の美味しさを引き立てつつワインの個性も損なわない
良い組み合わせがつくれる。
さらに酸味による相殺効果も考慮に入れることができれば、
ぐっと美味しさが増す!

この方法はそんなに難しくありませんし、知識も不要です。

さらに深めたい!という方は、ぜひタンニン、甘味、塩味、旨味などにも注目しながら料理とワインの相性を検討してみるといいでしょう。
一方の味の要素が、もう一方の味をどのように変化させるか。
これに意識を集中させることで、それぞれの効果が見えてきます。

今回も少し長くなってしまいました。

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それではまた!


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