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映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』から考えるアメリカ株最強伝説の今後と、そこで日本が取るべき道について

(Photo by Mohamed Osama on Unsplash)

一個前の記事で、韓流ドラマの最新ヒット作「ウ・ヨンウ弁護士は天才肌」が凄い良くて、単一のイデオロギーをゴリ押しする流行は徐々に終わりを迎え、これからの時代はこういう「バランス感覚」をいかに丁寧に反映していくかが成功の鍵になる時代なのだ・・・という話をしました。

過去20年は、問答無用で「グローバル」を押し通して「ローカル」をなぎ倒しまくれば勝てたんですが、今後はいかに両方に配慮して両取りのバランス感覚を丁寧に実現していけるかが重要な時代になる。

そういう時代における、日本の役割とは?そして人類社会におけるアメリカという国の役割とは?みたいな事を考える記事を書きます。

特に最近、色々と投資系インフルエンサーの中で「アメリカ株が最強の投資先という時代が終わるのではないか」みたいな事を言う人が出てきて面白いなと思っていて。

結論から言うと自分は今後もアメリカ株は有望な投資先であり続けるとは思っていますが、過去20年のGAFAM主導で世界中のあらゆるローカルをなぎ倒して飲み込んでいく感じとは随分と違うメカニズムが今後は生まれてくると考えています。

そういう人類社会の「曲がり角」的な現状において、今後の日本が取るべき道や、円安をチャンスに変える戦略のあり方について考える記事を書きます。

(いつものように体裁として有料記事になっていますが、「有料部分」は月三回の会員向けコンテンツ的な位置づけでほぼ別記事になっており、無料部分だけで成立するように書いてあるので、とりあえず無料部分だけでも読んでいってくれたらと思います。)

1●アメリカ株最強の時代は終わる…のか?

最近、アメリカ株に関する投資インフルエンサーの間で意見が真っ二つに割れていてなかなか興味深いです。

アメリカ株の代表的な指数であるS&P500はここ一年以下のようになっていて、現時点で年初から20%程度の下落になっている。

Google Financeより

上記のチャートを見ればわかるように、年初から大きく下げては何度か大きく盛り返し、やっぱりダメだったーって感じで下げて・・・を繰り返してきていて、10月11日ぐらいを底にまた「ここが底でここから盛り返して行くのでは?」という「何度目かの正直」的な期待が高まっているのが今ということになります。

古くは「大恐慌」とか最近では「リーマンショック」とか「ITバブル崩壊」とか、歴史上にあった長期的に株価が大きく下げていく時期というのは、何度かこういう「騙し上げ」的な反発を繰り返しては「やっぱりダメだったー!」って下げ続けることが多いんですが、年初来の何度かのリバウンドに対しては、共通した意見として「これは一時的な騙し上げだよね」と言っている人が多かったんですね。

その後大きく下げても「ほら、やっぱり騙し上げだったよねえ」と確認しあっているような感じだった。

しかし今回のリバウンドに関しては、結構有名な米株インフルエンサーの人などが「まさに今のタイミングで買うべき」と明確な主張をしはじめている一方、まだまだ下げる、地獄はこれからだ・・・と言っている人もかなりの数いて、意見が真っ二つに割れている情勢になっていてなかなか興味深いです。

むしろ「まだまだここから下がる派」の人たちの中に、「アメリカ株最強の時代の終焉」「株式の死」みたいな意見が結構聞かれるようになっていて、その真偽はともかく、そういう意見が広く共有されること自体が大きな世の中の空気の変化を感じさせます。

2●「アメリカ株最強神話」を覆す歴史の教訓?

一年前ぐらいまでの、「アメリカ株最強時代」の余韻が強かった時期にはほとんど聞かれなかった「株式の死」論の中で、聞いてみるとなかなか考えさせられるポイントが、「アメリカ株最強神話などここ20〜30年ほどの期間限定のことにすぎない」という話があるんですね。

例えばグーグルファイナンスを開いて、以下のようにS&P500のチャートを「全期間」設定で表示しても、昨今の値上がりが激しすぎて90年代以前がどうだったのかよくわからないんですよ。

Google Financeより

だから現代の投資家には、「アメリカ株というのは常に右肩上がりに上がり続けるものなのだ」というような発想が染み付いているんですが、これをもっと長期間で見ると実は違うんだ・・・という話をしている人が最近増えてきて、なかなか考えさせられるなと思っています。

ちゃんと90年代以前の状況も見るには、「S&P500 historical chart」とか検索して出てくる、インフレ以前の小さい数字もちゃんと見れるように対数表示してくれるグラフを見る必要があるんですが…

このサイトで90年分を一気に表示するとこうなります。

macrotrends.netより

これ、90年分一気に表示されているので、戦前も含めて超長期で見れば右肩上がりじゃん!っていう印象は変わらないんですが、普通の人が投資するってなったら10年とか、長くても20年とかそれぐらいのスパンで印象が決まりますよね。

それを考えると、60年代−70年代ぐらいの投資家は、「アメリカ株最強」みたいな気持ちにはあまりならなかったんじゃないかと思いますね。

グラフが反転した年を書き込んだのが以下のグラフですが…

macrotrends.netより

この図は、毎日株価チャートを見ているのが幸せ…というタイプの人よりも、歴史とか文化とかそういう広い興味関心がある人が見ると、色々と考えさせられるんじゃないかと思います。ぜひ一度色々と考えながら眺めてみてください。

上記の図を見ていると、例えば1968年に30歳ぐらいで、キャリアも安定してきて余剰資金を投資しようか…となったアメリカ人は、そこから十数年間はずっと株価は下がり続けるもの・・・という印象だったことになります。

全体的に60年代〜70年代は、別にアメリカ株は「特別な存在」ではなくて、過去20年〜30年の日経平均みたいに、特定の幅の中で上がったり下がったりしている「普通の市場」だったことがわかりますね。

歴史的に見ていくと、1945年に戦争が終わって、復員兵に金銭的報酬を与える有名な法律とベビーブームの影響もあって、今も世界的な共有イメージになっている「ザ・アメリカの郊外住宅地の生活」が急激に広がっていった時代、株価は超右肩上がりだったわけです。

ジーンズ、ロックンロール、エルビス・プレスリー、ジェームス・ディーン…みたいな、世界中の人がアメリカの若者の文化に注目して真似してた時代ですね。

それが、だんだん国内的には人種差別の問題、対外的にはキューバ危機とかベトナム戦争とかあって雲行きが怪しくなった頃株価は横ばい状態になり、その後しばらく株価の上限となった1968年というのは、ベトナム戦争の転機となった「テト攻勢」などがあった年ですね。

その後大きく下げていったアメリカ株が下げ止まり、その後40年続く黄金時代を築く起点となった1982年というのは、マイケル・ジャクソンが「スリラー」を発表し、MTVが世界中で見られるようになり、レーガン大統領が諜報分析に基づいてソ連がついてこれない事を見越して徹底的な軍拡競争をしかけ、後ソ連の崩壊に繋がった・・・という時代です。

要は、1982年以後の人類の歴史というのは、「世界が再び”アメリカ”に飲み込まれていく」時代だったというか、まずはポップカルチャーと軍拡競争によって、そして後にIT技術によって、再度アメリカ文化が人類社会を一個にまとめあげるムーブメントがあった時代と言えそうです。

上記のように見ていくと、アメリカの株価というのは、かなり「世界史の中のアメリカ」に連動しているイメージが湧いてきますね。ここ最近「株式の死」説を聞いて色々と調べてみて、私はなんだか自分の「ぼんやりした歴史のイメージ」と株価が凄く連動していることに驚きました。

第二次大戦終了直後は、人類社会のGDPのなんと3分の1がアメリカだったとかで、さっき書いた「アメリカ郊外の幸福な家庭生活」は世界中の人間の憧れでした。その頃には当然アメリカの株価も力強い右肩上がりだった。

一方で、ベトナム戦争でアメリカが相当強引なことをしている事が可視化されてしまった1968年以後はだんだん株価も下落していって、再度右肩上がりになるのは、「マイケル・ジャクソン的ポップカルチャーが世界を制覇する」時代だった。

映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」は1985年から1955年にタイムスリップするストーリーですが、1985年当時のアメリカ郊外生活というのは長い経済停滞の結果として息苦しい停滞感があって、主人公マーティの憧れの車はトヨタのピックアップトラックで、あちこちで日本企業の経済侵略を受けていて…みたいな感じの少し斜陽な時代に描かれていて、一方で1955年の方は、「古き良きアメリカの伝統が生きていた時代」みたいなイメージに描かれてましたよね。

でも一方で、実際には85年当時のハリウッド映画のパワーって物凄くて、マイケル・ジャクソンもそうですけど、文化的爆発力があるというか、世界中の人が頭空っぽにして楽しめるパワーがあったように思います。

最近の映画でも「あえて難しいこと考えずに楽しめる映画を作りました」みたいなのってハリウッドにも日本にもあるけど、なんか80年代ハリウッドの黄金時代感と比べると、「無理やりの馬鹿騒ぎ感」があるように思うんですよね。

私は別に「ポリコレ的流行で映画がダメになった」的なことを言うタイプではないんですが、ただ当時のハリウッドにはそういう「理想」的なビジョンと、「世界中の人が頭空っぽにして楽しめる」的なエンタメ性が高度に両立していて、今はついつい「片方だけ」のものが増えてしまっているというのはありそう。

当時からのハリウッド精神の生き字引みたいなトム・クルーズが、その「失われし知恵」みたいなのを総動員して先日「トップガン」をリメイクしたら、世界中で若いZ世代も熱狂する大ヒット作になったわけで、英語風に言うと「そこにはなにか特別なもの(something special)があった」のは間違いない。

半年前ぐらいだったかたまたまNetflixにあったバック・トゥ・ザ・フューチャー第一作を見たんですけどほんとなんかバカバカしいけど感動的で、音楽も完璧で、結末知ってるのに手に汗握るし、結末知ってるのに胸が熱くなるし、なんかこう「このカルチャーが世界を制覇する勢い」があったのも頷けるなという気持ちになってしまいました。

3●「株価が天井を超えていくというのはそれぐらい大きいこと」という理解がいるのかも?

勿論、例えば1970年代のアメリカの株価には当時の経済事情とか色々な要因があって下がっていたんでしょうし、上記のような「ざっくりしたイメージ」が全てを決めているという話をしたいわけではありません。

ただ、個別株ならともかく国全体のインデックス投資みたいな指数は、案外この「マイケル・ジャクソンとMTVが世界を制覇した」とか、「GAFAMが世界を飲み込んだ」レベルの巨大な印象に残るようなムーブメントに支えられないと、「天井を超えてどこまでも右肩上がりに伸びていく」みたいな事にはならない…というようにも言えるんじゃないかと。

特に、過去20年アメリカ株が他の市場を引き離していたといってもそれはGAFAMなどの一部株式がダントツ凄かっただけで、他の普通の株式の騰落率は例えば日経平均などと変わらないのだ…というような分析も最近は聞かれるようになる中で、まさにそのGAFAMの決算が、ここ一週間発表されたものが凄く悪かったりしたんですね。

とはいっても細かく数字を見れば、普通の企業と比べたらまだまだ全然凄いスピードで成長してるじゃん、って感じなんですが、アメリカ株式市場における一部ハイテク株って全世界の人間から本能的に物凄い期待されているので、ちょっと成長速度が緩んだだけで容赦なく失望売りされたりするんですよね。

つまり、GAFAMなど一部ハイテク高成長企業は「個別株」としては今後も超優秀な部類ではあり続けると思うんですが、過去20年「アメリカ株市場全体を他市場から引き離す特別な輝き」を放つ源泉となっていたパワーには陰りが見えてきているという事は言えるのかなと思います。

4●”世界のアメリカ化”は止まるのか?それとも?

だから、そういう個別株の決算が…とか、インフレ率が…とか、金利上昇はどこで止まるのか…みたいな細かい話を一旦忘れて、

果たして現時点から見た今後の人類社会におけるアメリカというのは、1954年とか1982年から見えていた世界のように、「これから世界中を飲み込んで行きそうな何かスペシャルなパワー」があるのか?

こういう問い↑について、我々は一度冷静に考えてみる必要があるんじゃないかと思うわけです。

なんかこの問い、多分コロナ禍真っ盛りの二年前ぐらいとかに聞かれると、もうアメリカ一強の時代は終わっちゃうんじゃない?って言う人も多かったと思うんですよね。

なんせコロナ禍が始まった当初の時代は、強権的なゼロコロナ政策をやってる国が英雄視されて、今後はもう民主主義社会が終わって権威主義社会が勝つ…みたいな事を言ってる人が結構いたぐらいですからね。

でも今年に入って、プーチンが自爆し、習近平も自爆し…みたいな事になって、やっぱ独裁って危険だね、民主主義大事だね…みたいなモードにはなってきている(笑)んじゃないかと思います。

プーチンが大問題を引き起こしているのは周知のとおりですが、習近平の方もかなりヤバい。

特に先日の中国共産党大会で異例の三期目に入った習近平は、幹部から有能とされる人間をことごとく排除した上で自分の子飼いの部下ばかりで固めて、既に中国ハイテク株なんかはメチャクチャ売られています。偏執的なゼロコロナ政策も続く見込みが確実になってしまった。

だから、それ以前までなら「アメリカの時代終わりかもね」だったのが、今後も「アメリカの時代続く…かもね?」ぐらいにはなってきてるという印象を持つ人も増えているでしょう。

ただなんか、いかんせんスター不在というか、1950年代とか1980年代のように世界中に「アメリカ」の光が燦々と降り注ぐという感じでは全然ないんですよね。

そこが昨今の株価の一進一退を表しているというか、このまま「アメリカの時代」が再来するのか、それとも、60年代〜80年代のように、「アメリカvs反アメリカ」が押し合いへし合いする状況になるのか、人類社会は今立ち止まって迷っているところだと言えるのかもしれません。

5●「ウィンブルドン現象」的な意味でのアメリカは今後も続きそう?

今後の人類社会の「アメリカ化」は止まるのかそれとも…ていう話で言うと、私は

経済面における「GAFAM+テスラ」的なメガテック企業、政治面における「強権的なポリコレの押し付け」みたいなグローバリズムが全てをなぎ倒して変えていく

…みたいなのは、そろそろ無理が出てきていると思っているんですよね。

一個何かを変えるごとに何百万人の全力の恨みを買っているようなムーブメントはやはりどこかでサスティナブルじゃなくなってくるはずなんですよ。いかにそれに参加する当人たちはそれが「正しい」ことだと信じていようとね。

一方で私は、いわゆる「ウィンブルドン現象」的な意味でのアメリカは今後も世界を飲み込んでいくんじゃないかと考えています。

「ウィンブルドン現象」っていうのは、テニスのウィンブルドン選手権が門戸開放されることで、イギリス選手はそこであまり活躍できなくなったけども、「競技会としてのウィンブルドン」はグローバルに大成功した…みたいな話について述べる言葉ですよね。

Netflixみたいな共通フォーマットが、近藤麻理恵さんや韓流ドラマを世界中に売り込んだり、日本の漫画・アニメや韓流ポップ・グループの世界売上が昨今爆増しているみたいな話ですね。(昨今の日本漫画の北米売上爆増は国内で過小評価されがちなので、以下の記事などをお読みいただければと思います)

そもそも歴史的に見れば今までも「アメリカというフォーマット」に、アメリカ黒人のカルチャーが乗るようになり、昨今はラテン系やアジア系のポップスも乗るようになり…みたいな変化がずっと起きてきているわけで、そういう変化がもっともっと起きていくかどうかが今後を決めるという感じでしょうか?

人類社会における「アメリカという装置」が、単に「3億数千万人のアメリカ国民のもの」として留まるなら、世界は今既に予兆があるようにバラバラに分断化していって、アメリカは単なる「普通の国のひとつ」になっていくわけですね。

一方で「アメリカという装置」が徹底的に「ウィンブルドン現象」的なオープンさを持つことができれば、「人類社会のアメリカ化」は止まらずに今後も続く。

その時、今もみ合っているアメリカ株は「次の右肩上がり」を目指すだけの起爆力を得ることになるのだと私は考えています。

6●日本がその中で取るべき道は?

結局、今後の日本はこの「ウィンブルドン形の世界のアメリカ化」の流れの一翼を担っていけるかどうかが大事なんですよね。

「GAFAM型の創造的破壊経済」&「ポリコレ型の強権的な理想の押し付け」ではない形の、「あと一歩ローカル社会側と溶け合わせる創造的破壊と政治的転換」という流れを提示できるかどうか。

人類社会全体で見た時の米中冷戦とかプーチンの暴走、アメリカ一国で見た時でも政治的分断化っていうのは大問題すぎるので、何か新しい「溶け合わせる道」
見えてこない限りは「株価がどんどん右肩上がりになるような一方向的な変化」は
起こしようがないですからね。

例えば以下の本などでずっと述べてきているように、私はそれを、相互にぶつかりあう「ベタな正義」同士を両方とも認めた上で、その上で解決策を模索していく「メタ正義感覚」と呼んでいるんですが。

日本人のための議論と対話の教科書

人類社会の「ベタな正義」同士の非妥協的対立は明らかにサステナブルでない領域に達しつつあるので、今後人類社会はいかに「メタ正義的」解決を安定的に生み出せるフォーマットを作り出せるかどうかの競争へとシフトしていくはずだと考えています。

一個前の記事で書いた「ウ・ヨンウ弁護士」は明らかにその流れにあると思いますし、先日の記事で書いたように日本の漫画・アニメの爆発的な需要増加もそういう流れの端緒ではあるはず。

今は「コンテンツ」の中に萌芽として描かれているだけのものを、もっと色んな経済・政治分野において安定的にあちこちで起こしていけるか?

世界が「アメリカvs反アメリカ」に分断されてしまうか、「アメリカの外側にあるものをアメリカの内側に取り込み続ける流れ」が安定的に作動するようになり、「世界のアメリカ化」が今後も続く流れに持っていけるか。

それは、あらゆる課題を「メタ正義的」に読み解いて解決に導くムーブメントをいかに作り出すことができるか?にかかっている。

7●「地味に既に起きている変化」を、丁寧に育てていって置き換える革命

ちょっと私事を聞いてほしいんですが、このnote連載とかでも何度か書いていた、普段私のクライアントにならないような東証一部上場の大企業との仕事が今月一段落しまして、自分で言うのもナンですけど凄い評価高かった(太字にしてやったw)んですよね。

特に、「単に理想をロジカルに述べるだけでなくて、この会社の事情やタイミングにピッタリ寄り添ってくれるような提案なのが凄く良かった」みたいな事を言われて非常に嬉しかったです。

中小企業相手にしているとロジカルなだけでは動かないので、ミーティングで何回か話すだけで、相手側の細かい事情が伝わってくるたびにそれにどんどん寄せていって、「ロジカルに正しいだけでなくフィーリングのレベルで繋がる」ところまで行くのは当然の動作って感じなんですが、普通の「大企業相手のコンサルタント」はそういうことをあまりしない人が多いのかもしれません。

それは単にロジカルさを妥協して「気を使う」とか「人間関係に配慮する」とかいう事ではなくて、提案の内容の時点で本質的にその会社の存在ともっと深く結びついたようなオリジナルな方向性を出すことが大事なんだってことなんですけど。

ただ大企業相手のコンサルでも、ちゃんと「一般的なロジックでなくその会社の個別例」を深堀りすることが大事だし、相手が行動に移せてなければそれは自分たちの側の意見の解像度が低かったからだ・・・というように考える人が沢山いると思うし、今後「ベタな正義を無理やり押し込む」事の有効性が下がってくるに従って、徐々にそういう地道な取り組みをやってきた人の力がスムーズに発揮される時代の変化が静かに起きてくるはず。

以下の記事に書いたように、「平成時代の”抵抗勢力をぶっ壊せ型の言いっぱなし”」的なアレコレを、いかに「鬼滅の刃の大ヒットを生んだような令和の双方向的コミュニケーション」に置き換えていけるかが問われている。

上記記事にも書いたんですけど、「目立つ言論」はまだまだ「ぶっ壊せ!」型が多いですけど、ちゃんと細部の事情と向き合って一つ一つ解きほぐすようなチャレンジは地味にそこかしこで見られるようにはなってきてると感じてます。

右翼は左翼に、左翼は右翼に「全部アイツラが悪い」的に吠えて終わり・・・みたいな空騒ぎを、「ちゃんと仕事してる」人たちの間で交わされている、問題自体と向き合うような方向性によって置き換えていけるかどうか。

もう一個、私の身の回りで今月大きかったのは、私は文通を通じて色んな個人の人生を一緒に考える仕事もしていて(ご興味あればこちら)、そのクライアントに米国名門大のMBA持ってるエンジニアで、めっっっちゃ保守的なイメージの日本の大企業で働いてる人がいたんですけど。

その人はちょっとその会社にとっては型破りな人すぎてうまくその会社で活躍できてるか?というと正直微妙だったんですが、私と文通しながら長期的視点でその会社とWin-Winになるように動いていった結果、上層部ともうまく波長をあわせることができてかなり斬新な技術ビジョンでの新規事業が立ち上がって彼はその社長になったってことがあったんですね。

その技術ビジョンは聞くだけで「なにそれ面白いw」ってぐらい斬新な話なんですが、ビジネスの内容としてかなり保守的な業界の色んなプレイヤーと丁寧に協業しないといけなくて、シリコンバレー形の「ぶっ壊す!」的な起業家ではなかなか実現しづらいようなアイデアだと思っていて。

型破りな存在とはいえ一応長年保守的な会社で宮仕えをしてきた彼だからこそ、業界の中に「浸透」していくようにその事業を育てることができるんじゃないかと期待しています。

結局、習近平がムチャクチャ強権奮ってゼロコロナ辞められなくなってるのも、アメリカ社会が深刻な分断を起こしているのも、「経済を前に進めるための合理性」があまりにも「破壊的」なやり方で無理やりやってるからだと思うんですよね。

逆に、普段の仕事のレベルで、もっと「メタ正義的に両側から事情を吸い上げて」どんどん解決に向かって動いていく流れさえエンパワーしていくことができれば、強権で無理やりゴリ押しする必要もなくなって、今人類社会が抱えている問題を根っこのところから解決できるようになると私は考えています。

私個人の久々の「大企業相手の仕事」が凄いうまく行ったのも、その文通クライアントの彼の新規事業がちゃんと保守的な業界ごと巻き込んで走り出したのも、地味に地味に起きてきている「社会の変化」だと思っています。

こういう「地味な変化」を積み重ねていって、気づいたら社会全体が「メタな正義」に向かって協力しあえる情勢に持っていくことさえできれば、人類社会の中での日本という国の存在価値は揺るぎなくある情勢に持っていけるでしょう。

8●黄金時代は「既に」始まっているかもしれない

先日のこの記事、あるネット右翼系YouTuberに好意的に紹介されて、「俺も別に排外的になりたくなってるわけじゃないんだ。この点さえ認めてくれるなら排外主義は良くないってわかってるんだ」みたいなことを言ってくれてて嬉しくなったんですが、最近「この人は凄い右翼」みたいな人でもそういう立場の人が増えてきて右翼内部での論争になってるのをチラホラ見かけるようになりました。

要は「排外主義が生まれるならそれはグローバルの押し付けの段階でメタ正義的な双方向性が足りてないからなんだ」って精神で深堀りしていけば、欧米における移民問題とは全然違う「外国人との付き合い方」も見えてくるはずなんですよね。

そういう「安定的な新しい流れ」さえ生み出すことができれば、例えば日本が過剰に排外主義的になる必要がなくなるので、人口問題とかを10%ぐらいの外国人で埋め合わせても「日本らしさ」を失わないでいられる…みたいなソリューションも可能になってくるんですよ。

習近平の暴政を嫌って中国人の富豪が続々日本に逃げてきているみたいな話も出ていますし、「政情が安定してる」ってことは地味に地味に凄いアドバンテージですからね。

あとはその「日本らしさ」を失わずに変わっていくという難しい両取りの道を協力して実現していけるかどうか。

さっきの「バック・トゥ・ザ・フューチャー」の話を思い出してほしいんですが、あの映画で描かれている1985年は結構「俺たちアメリカって負け組感あるよなー」みたいな気分があったと思うんですよね。

でも実際には、その後40年近くも続く強烈な右肩上がりの時代は既に始まっていた。

「岸田は何もしてない検討しかしてない」とか言われてますけど、コロナ関係では感染者の扱いを科学的知見に基づいてかなり柔軟に変化させて安倍・スガ時代みたいに強引に社会を止めずに乗り切っていたし、原発再稼働や新増設の会議も順調に動き始めているし、個人的にはやることやってると感じてます。

むしろ世間の人が「何か凄いことやってる!」と思うような何か・・・っていうのはあまり実効性がないポーズにすぎないことが多いんじゃないかと。

スタンドプレー的に「何か凄いことをやったフリ」をしたけど結局押し合いへし合いになって何も進まない…みたいな事を日本は過去に繰り返しすぎたんですよね。

もちろん、動きが遅い!てのは否定できませんが、まあ民主主義社会ですから。

逆に、うるさ型のマスコミが統一教会とかの問題で延々騒いでいる背後で、原発再稼働議論(これができれば貿易収支は劇的に改善するはず)は地味ぃぃぃに結構進展していったりして、なんだかんだ岸田は頑張ってると私は考えています。(この冬の電力事情が厳しい見込みなのは以前からの政策の結果であってキシダのせいじゃないですからねw)

ここ二ヶ月ぐらいSNS論争から離れていたんで、久々に円安についてどう思ってるのかな?みたいなことを検索してみると、あまりに事実関係ごと間違って結論ありきに騒いでる人たちに万単位のいいねがついてたりして目眩がするんですよね(笑)

あ、ちなみに円安については最近会ったうちの母親ですらどういうことなのか知りたがっていたぐらい関心は高まっていると思うので、よろしければ先月私が基礎知識から丁寧に解説して好評だった以下の記事をどうぞ。

でもそういうSNSの無内容な論争たちも、感情を吐き出して時代を前に進める意味はありそうなんですよね。

とりあえず「もうダメだあ」的な気分が蔓延して、過去の延長がグダグダになってくるような時にこそ、「80年代初頭のアメリカ」にあったような「世界を飲み込んでいける新しいムーブメント」は立ち上げられる可能性が出てきたりするのかなと思ったりしています。

そういう意味じゃあ、さっき書いたような私の身の回りの「環境変化」って確実になにか新しいなあ!と感じているんで、単に誰かのせいにして騒ぐことしかできない人たちはほっておいて、着実に社会を前にすすめる「メタ正義」的な動きを動きを一緒に歩んでいきましょう。

20年後ぐらいに見直してみたら、案外日本の再度の黄金時代はキシダの時に既にはじまっていたってことになるかもしれませんよ!

この記事の無料部分はここまでです。長い記事をここまで読んでいただいてありがとうございました。

ここ以後では、結局米株は今後どうなるのか?世界同時不況はどうなるのか?みたいな事についての予想を書いてみたいと思っています。

といっても私は中小企業経営コンサルタント兼思想家であって、こういうのは専門外なんですが、「思想家業」の延長でここ数ヶ月かなり真剣に円安ドル高とか米国金利とか株価とかと向き合ってみて感じた事から、「株の専門家」とは違う視点での予想ができたりするかもと思うようになったんですよね。

特に、普段の収入がドル建ての人は素直に今の米株高に乗っかっちゃっていいと思うんですが(いざという時逃げる準備はしつつw)、普段の収入が円建ての人は何が悲しくてこんな歴史的円安のタイミングで外国株を買うんだみたいな話ってありますよね。

そういう円高・円安問題も考えた上でのこの問題についての予想とか、それがもたらす人類社会全体の中でのパワーバランスの変化とか、今後のアメリカ社会に与える影響みたいな事も書いてみました。

これは儲けるための株価予想というよりも、あくまで「経営コンサル兼思想家業」の一環として今目の前で起きていることの本質について考える記事なので、いわゆる”投資は自己責任で”というアレでお願いしますが、直近のチャートの上げ下げだけを見ているタイプの人から見るとちょっと別の角度からのヒントになるかもと思います。

2022年7月から、記事単位の有料部分の「バラ売り」はできなくなりましたが、一方で入会していただくと、既に百個近くある過去記事の有料部分をすべて読めるようになりました。これを機会に購読を考えていただければと思います。(これはまだ確定ではありませんが、月3回の記事以外でも、もう少し別の企画を増やす計画もあります。)

普段なかなか掘り起こす機会はありませんが、数年前のものも含めて今でも面白い記事は多いので、ぜひ遡って読んでいってみていただければと。

ここまでの無料部分だけでも、感想などいただければと思います。私のツイッターに話しかけるか、こちらのメールフォームからどうぞ。不定期に色んな媒体に書いている私の文章の更新情報はツイッターをフォローいただければと思います。

「色んな個人と文通しながら人生について考える」サービスもやってます。あんまり数が増えても困るサービスなんで宣伝してなかったんですが、最近やっぱり今の時代を共有して生きている老若男女色んな人との「あたらしい出会い」が凄い楽しいなと思うようになったので、もうちょっと増やせればと思っています。私の文章にピンと来たあなた、友達になりましょう(笑)こちらからどうぞ。

また、この連載の趣旨に興味を持たれた方は、コロナ以前に書いた本ではありますが、単なる極論同士の罵り合いに陥らず、「みんなで豊かになる」という大目標に向かって適切な社会運営・経済運営を行っていくにはどういうことを考える必要があるのか?という視点から書いた、「みんなで豊かになる社会はどうすれば実現するのか?」をお読みいただければと思います(Kindleアンリミテッド登録者は無料で読めます)。「経営コンサルタント」的な視点と、「思想家」的な大きな捉え返しを往復することで、無内容な「日本ダメ」VS「日本スゴイ」論的な罵り合いを超えるあたらしい視点を提示する本となっています。

また、上記著書に加えて「幻の新刊」も公開されました。こっちは結構「ハウツー」的にリアルな話が多い構成になっています。まずは概要的説明のページだけでも読んでいってください。

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ウェブ連載や著作になる前の段階で、私(倉本圭造)は日々の生活や仕事の中で色んなことを考えて生きているわけですが、一握りの”文通”の中で形に…

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