メンタルヘルスリテラシー
10月10日は「世界メンタルヘルスデー」です(スポーツの日でもあるけど)。
メンタルヘルスについての知識とは、私達カウンセラー、ソーシャルワーカーにとっては当たり前の知識ではありますが、だからこそ改めて振り返ってみたいと思います。
1.メンタルヘルスリテラシーとは
これは、
と定義されています(Kutcher,S)。
健康の増進維持のための情報は世の中に溢れています。
科学的根拠があるもの、新しすぎてまだないもの、いずれでも無いもの(言い伝えや土着の風習など)など、インターネットがライフライン化している現代では、調べようとすればいくらでも出てくるでしょう。
むしろ、情報が多すぎて迷ってしまうくらいです。
リテラシーとは、そうした情報の海の中から、自分が必要とするものを選択し活用することが出来るスキルのことです。
からだの健康であれば、体重とか血糖値とか血圧とか体脂肪率とか、手軽に自宅でも測定できる数値があります。
しかしメンタルヘルスは数値で測定することはできませんよね。
だからこそ、山のような情報の中から何を選び取って自分のメンタルヘルスに役立てるか、を決めることは、迷うことの連続でしょう。
2.メンタルヘルスの敵は「偏見」
前出のKutcher氏は、メンタルヘルスリテラシーに含まれる要素として、
を挙げています。
当然すべて重要なのですが、この中で、全ての基礎になるのは「3. 精神疾患に対して偏見を持たないこと」ではないでしょうか。
偏見、というと、自分以外の誰かの精神疾患・精神障害についての偏見を指すように思われがちですが、実は同じものを自分自身にも向けている危険があります。
うつ病は怖い、普通じゃない、という偏見を持っていると、自分がそうなりかけている時にも同じ捉え方をしてしまいます。
結果、自分のメンタルヘルスが損なわれかけていることから目を背け、早期発見・対応のチャンスを逃し、重篤化させてしまう危険があります。
3.偏見はスティグマを生む
スティグマとは、元は昔奴隷や犯罪者の身体に刻印された烙印のことです。
転じて
を指します。
他者に対してスティグマを与える行為も間違っていますが、それが自分に向いてしまいます。
自分で自分を差別し偏見の対象としてしまうのです。
辛い中頑張って生きているのに、頑張った結果心が悲鳴を上げて病気になっただけなのに、それを悪いことのように捉えて癒すことも受け容れることも出来ないのです。
そのような状態で、メンタルヘルスを健康な状態に戻すための情報収集や生活改善に取り組めるでしょうか。
むしろ自分を排除したり罰したりする方向へ向いてしまわないでしょうか。
メンタルヘルスに対する偏見やスティグマを無くすことが、スタート地点であり、また、メンタルヘルスの知識を得ることで払拭できるものもまた、偏見やスティグマです。
4.たくさんあるけど知らない「メンタルヘルス制度」
日本の精神保健、障害者福祉は遅れている、という嘆きはよく聞かれますが、それでも国連の条約には批准していますし、結構たくさん法律や制度があります。
・社会福祉法
・生活保護法
・障害者総合支援法
・障害者基本法
・児童福祉法
・生活保護法
・労働安全衛生法
・健康増進法
・介護保険法
・障害者雇用促進法
・障害者差別解消法
・地域保健法
・DV防止法
・母子保健法
書ききれません。まだまだごく一部です。そしてそれぞれの法律を実施するための制度や省令・条例が個別にくっついています。
当然ながら全て公費(税金)と保険料で賄われています。
国民の健康や安全が損なわれた時のためのセーフティネットです。
しかし、偏見やスティグマで自分や家族のうつ病を受け容れることが出来ずにいると、こうした制度への利用に二の足を踏んでしまいます。
そもそも利用したいと思って調べないと、制度と接触することすらしないでしょう。
それは偏見やスティグマがリテラシーを阻害してしまうからです。
世界メンタルヘルスデーについては、ツイッターでも専用ハッシュタグ(#WorldMentalHealthDay)が付けられて各国から発信されていますが、中々日本語ツイートを発見できません(汗
メンタルヘルスにおいてどんなものが有用かは、その文化や背景が大きな影響を持ちます。
自分達のメンタルヘルスにとってどんな情報が役に立つのか、メンタルヘルスを保つために、偏見をなくすための具体的な行動は何が出来るのかを、10月10日をきっかけに今一度じっくり考えてみたいですね。
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