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アイドルをどう見るか?

※本記事は特定のアイドルを上げる(下げる)ことを目的にしていません。各グループの特徴を理解し、それぞれのファンやファンでない方も楽しむことができるように個人的な見解を提供しています。


乃木坂46のようなチームをつくりたい

「乃木坂46のようなチームをつくりたい」とかれこれ5年以上言い続けてきた。これは、「AKB48のようなチームをつくりたい」というのとも違うし、「欅坂46/日向坂46のようなチームをつくりたい」というのとも違う。

AKB48とそれに連なる秋元康プロデュースのアイドルを見る上では「対比」という考え方を置くのが最もしっくりくる。

AKB48と乃木坂46は何が違うのか?

AKB48は「会いに行けるアイドル」というコンセプトを打ち出し、「選抜総選挙」や「じゃんけん大会」等のコンテンツでメディアからの話題も取り込み、一躍有名になった。

「AKBと乃木坂って何が違うの?」とよく聞かれるが、むしろ「何が同じなのか?」と聞き返したくなる。とは言え、音楽番組やバラエティ番組、ネット記事等のアイドルファンでもない人たちが目にするメディアから受ける印象は確かに一緒だろう。

ただ、「対比」して考えると違いが浮き彫りになる。「選抜総選挙」があり、1位を目指す(=センターを目指す)ことが求められるAKB48に対し、「選抜総選挙」を行わず、「センターになりたい」と表立って発言する子も少ないのが乃木坂46だ。

個人的には、AKB48は「戦うアイドル」、乃木坂46は「戦わないアイドル」と称するのがしっくりくる。「選抜総選挙」を行い、他の子たちと“戦って”1位を獲ることをグループの価値観に置いているAKB48と、メンバー同士の“戦い”は少なく、仲の良さが殊更に伝わってくる乃木坂46とでは、グループのカルチャーやカラーが大きく違うことが分かるだろう(どちらが良い悪いという評価をするつもりはない。どちらを良いと思うかはそれこそ個々人の価値観だ)。

乃木坂46はフラットで多様なチームのように見える。いわゆる「ティール組織」っぽいのだ。これが世間に受けた理由の一つではないかと思っている。今風の価値観や考え方に適合しているのだ。AKB48に働く競争原理とは異なる原理で動いている。

乃木坂46も当初は「AKB48の公式ライバル」を掲げ、勝ち負けという土俵の中で“戦っていた”ように思う。それがいつしか「乃木坂らしさ」を考えるようになり、「AKB48の公式ライバル」と言わなくなり(言われなくなり)、独自のグループカルチャーを築いた。「世代交代に成功した稀有なアイドル」とも評される乃木坂46の強さは、“戦わない”ことで築かれたのではないかと思う。

欅坂46とは?

他方、その乃木坂46に「対比」して生まれたのが欅坂46だと思う。彼女たちは、「戦うアイドル」であるAKB48と、「戦わないアイドル」である乃木坂46の中間に位置するようなグループとして生まれたのではないかと思う。

正確には、欅坂46は「戦うアイドル」なのだが、戦っている相手が同じグループのメンバーではなく、「社会」や「体制」なのだ。それを象徴的に歌った『サイレントマジョリティー』が大ヒットしたのも、乃木坂46との「対比」であり、AKB48の「戦う」というカルチャーを上手く継承したからではないかと思う。『不協和音』や『ガラスを割れ』等も、「戦うアイドル」らしい曲だと言える。

このグループコンセプトは分かりやすく訴求力を持ったものの、結局は改名という結果を迫られてしまった。その理由を推し量るにはあまりに難しいが、「社会」や「体制」と戦うということの難しさに加え、そのコンセプトで突き進みたい側と、『世界には愛しかない』や『二人セゾン』で醸し出す空気感を大事にしたい側とのギャップではないかと思う。なお、「側」と書いたが、一人のメンバーの中にもその葛藤があったと推察する。

日向坂46とは?

欅坂46が改名した後の櫻坂46については後で書くとして、この欅坂46に「対比」してグループが形成されたのが日向坂46だと思う。日向坂46というグループの詳細な設立経緯は端折るが、日向坂46は「戦わないアイドル」だと言える。そして、乃木坂46とも異なる「戦わない」を体現している。

日向坂46は「ハッピーオーラ」というコンセプトを掲げている。前身であるけやき坂46(ひらがなけやき)の『ハッピーオーラ』という曲の歌詞に基づけば、「楽しい」「前向き」「希望」等の明るさを大事にしたコンセプトだと思う。大事なのは、単に明るさを打ち出したのではなく、その明るさと共にある「葛藤」「悩み」「絶望」といったこともひっくるめた「ハッピーオーラ」というコンセプトだということである。

つまり、意図してか意図せずか分からないが、欅坂46の抱えていたことを昇華してコンセプトが形作られた結果、欅坂46をなんだか応援できなくなっていたファンたちが日向坂46に流れ、「応援するならこういう元気で高揚感のあるグループがいいよね」と思ったのであろう(念の為、全ての欅坂46ファンが日向坂46に流れたわけでもないし、ここでも両グループの良し悪しを論じるつもりはない)。

そして、「戦わないアイドル」として乃木坂46との違いも持ち合わせている。それはバラエティ力、言い換えるなら積極性だ。乃木坂46のメンバーは、良くも悪くもおしとやかで謙虚な子たちが多い。一方で、日向坂46のメンバーは、冠番組で前に出ることに積極的で、大喜利等の企画も喜んでやっているように見える。勿論、両グループともに全てのメンバーにそういう傾向があるわけではないが、グループとして「対比」したときに違いが見える。

これまでの坂道シリーズ、そして櫻坂46とは?

かくして、AKB48、乃木坂46、欅坂46、日向坂46がそれぞれ異なるグループカラーを持って歩みを進めてきた。「AKBと乃木坂って何が違うの?」と誰かに聞かれたら、この「対比」構造を説明すれば済む。

そして、最後にくるのが櫻坂46だ。2020年10月に欅坂46から改名した。改名に至るまでの道のりは、メンバーにとってもファンにとっても運営にとっても苦しかったと思う。改名した理由の一つと思われることを前述したが、表には見えていないことも多々あるはずなので、その詳細は私には分からない。

では、櫻坂46は何に「対比」してグループが形成されているのか。言わずもがな欅坂46に「対比」しているのだと思うが、単に反対概念を持ち出してグループを形成しようとしているのではなく、欅坂46ではある意味で“失敗”してしまったことを上手く「新化」「進化」「深化」させようとしているのではないかと思う。

欅坂46・櫻坂46の振付師を務めるTAKAHIROさんの言葉を借りれば、どちらのグループも「リアリティ」を追及している。悩み、苦しみ、もがいている人に対して、「傷付くことで歩き方を覚える」「自分の中で世界を深める」と説くのが欅坂46、「人と触れ合って前に進んでみる」と説くのが櫻坂46と言っている(2022年8月26日(金)のTOKYO SPEAKEASYでの発言より一部表現を変えて引用)。

「社会」という大き過ぎる対象に、自分一人で頑張って“戦おう”としていた欅坂46に対し、皆で頑張って“戦おう”としているのが櫻坂46だと思う。一時期、グループの雰囲気は暗くなり、メンバーは一生懸命にやっていても上手くいかない時期が続いたが、皆で手を取り合って頑張り続けることで、今は「坂道の中で一番勢いがあるのは櫻坂46」という声がファンからも挙がるほどだ。

おわりに

冒頭の話に戻ろう。私は「乃木坂46のようなチームをつくりたい」とかれこれ5年以上言い続けてきた。その気持ちは今も同じだ。だが、最近「乃木坂46の持つ要素だけでは足りないのではないか」と思っていた。

何が足りないのか分からなかったが、櫻坂46がそのピースを埋めてくれるような気がした。これからは「乃木坂46と櫻坂46をハイブリッドしたチームをつくりたい」と言おうかと思う。

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