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世田谷の秘境「喜多見」へようこそ

いつもは、ITやコミュニティ関係のネタを中心に書いているフクイです。今日は文化の日という事で、いつもとは違ったネタを書いてみます。というわけで、ちょうど開催されていたnoteの企画「この街が好き」に乗っかってみる事にしました。

実は、私フクイは数年前まで児童公園のブログを書いておりまして、東京23区内はほぼ歩いて回った経験があります。23区内については街の小さな公園を含めて4000か所近く回った結果、2キロメートル×2キロメートル方眼くらいで言うとすべてを踏破したといっても過言ではありません。そんな私が23区内でおすすめしたい場所は実はフクイが住んでいる「世田谷区喜多見」です。

喜多見と言っても小田急の喜多見駅周辺の事ではなく、小田急、そして世田谷通りの南側、多摩川との間にある喜多見四丁目を中心とした地域です。この周辺は北側に成城、東側には岡本という高級住宅街、そして多摩川の下流には今をときめく二子玉川という恵まれた場所にありながら、かつて「世田谷のチベット」と揶揄されたり(チベットの皆様すみません)した未開の地です。つい10年くらいまではコンビニといえばデイリーヤマザキしかなく、バスも1時間に2本くらいしか来てくれなかったという「23区の忘れられた秘境」と言っても過言ではない地域でした。

しかしながらこの喜多見という場所、単なる未開の地では決してありません。未開の地というよりも独自の文化や自然を今に伝えている貴重な地域なのです。ぜひ皆さんに喜多見を知っていただきたいと思います。

秘境とよべるほどの大自然

喜多見の魅力と言えばたくさんありますが一番の魅力は「大自然」です。喜多見には多摩川の河川敷や喜多見氷川神社の鎮守の森、慶元寺の林、少し残った屋敷林、竹林、次太夫堀公園の林、そして成城との間の国分寺崖線など圧倒的な自然が残っています。これは隣の狛江市にも世田谷区宇奈根や鎌田にも残ってはいません。この散在する林がかつての武蔵野の自然を残しているのです。

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具体的にいうと昆虫!・・・喜多見四丁目周辺ではカブトムシは買うものでも採りに行くものでもありません。「朝、家を出たら居るもの」です。夏のシーズンには本当に数匹のカブトムシが家の前に居ます。喜多見氷川神社と慶元寺の間の通りにはカラスに食われたカブトムシの死骸が道にボトボト落ちています。そのほか大きなカマキリや水辺には珍しいトンボなんかもよく見かけます。クワガタムシもコクワガタだけでなくノコギリクワガタもたまに見つけられます。一度、幻の昆虫ナナフシも見た事があります。本当に昆虫が豊富な地域です。

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そして驚くべきは鳥類です。喜多見と成城の間を流れる野川にはカモのほかシラサギやアオサギ、たまにカワセミを見かけることがあります。カワセミはホント綺麗です。そして最近気が付いたのですがどうやらキツツキもいるようです。喜多見氷川神社の森や慶元寺の参道で「カカカカカカカカカ」という木の幹をつついている音を聞くことができます。

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それら昆虫や鳥類の生活を支えているのは植物たちです。三丁目や五丁目やにある竹林も見事ですし、喜多見氷川神社の梅林も見事ですし、そして喜多見中学校横の桜の花、そして喜多見小学校発祥の地にある大イチョウ、街角の大きな欅の木、そして家々にある花々など多くの植物たちが四季を感じさせてくれます。

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そして最後は動物の話です、外来種のハクビシンもいるようですが、在来種のホンドタヌキも生息しているようです。いちど朝出かけようと思ったら家の前に居た事がありました。哺乳類はタヌキと蝙蝠くらいですが、爬虫類ならヤモリやシマヘビなどはよく見かけることがあります。これは23区内ではありえないほどの貴重な自然です。

静かなる史跡たち

喜多見には貴重な文化建築が多くあります。といいますか寺や神社がものすごくたくさんあります。小さいですが古墳もあります。しかもごくごく自然な感じで残っているのです。隣の成城には古い神社やお寺はほぼありませんし、隣の狛江市岩戸南周辺も含めるとものすごく寺社が集中した地域です。初詣の場所には全く困らないというかどこに行くのか迷うほどです。なぜこの地に寺社が多いのかというと、この喜多見四丁目には江戸を開いた鎌倉時代の有力御家人江戸氏の末裔である喜多見氏の館があり、徳川三代目家光の時代には「喜多見藩」の藩庁があった歴史ある地ということの影響があると思われます。その後喜多見氏は没落しましたが菩提寺である慶元寺や「城」の文字がある名字の家があり、いろいろなところにその名残を残しています。

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喜多見氏の菩提寺である慶元寺のおすすめは、その参道です。参道の木々の下にはきれいな苔が生えていて非常に美しい参道になっています。ちなみにこの場所はウルトラセブンのメトロン星人の回のロケ地になっています。いろいろ歩きましたが、ここまできれいな参道は23区内にはなかなか見かけることはないでしょう。その参道を抜けると先には桜の木に隠れた荘厳な山門、そこをくぐると美しい三重塔が見えます。・・・しかも喧噪のまったくない静かな時間が広がっているのです。・・・本当に贅沢な空間です。あと墓地の入り口にある念仏車も回してみてください。

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そして、そこから林と墓地の間の裏参道を抜けて、左側の細い道を抜けると喜多見氷川神社の鳥居が見えてきます。ここの鎮守の森もけっこう深く美しいもので、非常にお勧めの参道です。二の鳥居は江戸時代初期に喜多見氏が寄進したもので貴重な文化財でもあります。残念ながら本殿は昭和の時代に焼失し再建されたものですが、手水舎などは古いものが残っていて古い神社(西暦740年の創建)という雰囲気は十分に醸し出されています。この神社は貴重な事に全くと言っていいほど商売っ気が無く、おみくじもお守り売り場もありません。(社務所に行けばお守りはあります)ここもとても静かな心現れる場所です。・・・まさに心洗われる場所です。

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そのほか須賀神社をはじめとする小さな神社や知行院や光伝寺などのお寺、そして須賀神社の近くにある第六天古墳、稲荷塚古墳など史跡や寺社がすぐそばに密集しています。・・・そして「いかだ道」も昔のルートのまま残っているなどこの地域の古い時代の名残が数多く残っています。

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そして最後に紹介するのは次太夫堀民家園、ここには世田谷区内から集めた古民家が数棟移築されています。なかでも中心的な「城田家」はこの喜多見四丁目・・・知行院の前にあった家屋で単純な農家ではなくいかだ道を往来する人たちが休む酒屋の機能も備えた貴重な建築です。また周囲には次太夫堀を再現した小川や田んぼや里山の林があり、まるてタイムスリップした感覚になります。正月やこどもの日には昔遊びなどを体験できるイベントもありますし、駐車場もあるのでぜひお立ち寄りを。

喜多見文化圏

喜多見には史跡もそうですが、まだ少し昔の文化が数多く残っています。そのひとつが散在する農地と野菜スタンド。この周辺では稲作はほぼなく、多くの農家は比較的小さな畑で野菜を作っています。その農家で作られた野菜が野菜スタンドで売られています。朝早く歩くといろいろお得な掘り出し物が売っていたりします。しかもその多くが本当に素朴な場所で、棚に置かれただけのものがほとんどです。・・・世知辛い日本の影はまったくありません。ぜひ喜多見に来るときには小銭を用意してきてくださいね。

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そして文化といえば喜多見氷川神社の節分祭の鬼問答や里神楽です。世田谷区の無形文化財にもなっておりますが、とても素朴で貴重な神事として残っています。お囃子も録音ではなく生演奏で、本当にクオリティの高い里神楽を体験できます。ちなみに節分には近くの喜多見小学校の児童たちも招待され最前列で参加できます。贅沢ですよね。

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また正月の行事なども紹介した民家園でのこの地域の風俗の紹介もされており、ひな人形や五月人形の展示もあります。この喜多見周辺の古い文化がこの地でしっかりと伝えられています。

喜多見の注意事項

さいご世田谷区喜多見四丁目周辺の注意事項です。この周辺には特筆するグルメも自慢するほどの名店もありません。寺や神社にはおみくじすら売っていません。お金を使うところと言えば野菜スタンドか民家園の売店で買うモナカやラムネくらいです。本当に何もありません。一般的な観光地を期待してこの地を訪れた人がいたならばきっとがっかりするでしょう。しかしながらこの場所にはほかの場所と全く違った時間が流れています。令和の時代の住宅街ではありますが、昭和40年くらいまでは道を豚が歩いていたといわれるのどかな空間です。そんな昔の世田谷を感じることが出来る貴重な場所です。・・・・どうぞ静かにご訪問をお願いします。


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