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日本企業のガバナンスと株主④

前回は、先日受講したコーポレートガバナンスに関するWebセミナーの登壇者(企業年金を運用する方)から、日本企業のガバナンス上問題視した「見かけのガバナンス」についてコメントしたが、今回は「海外投資家から見たガバナンス」に関する意見を整理したい。
【日本企業のガバナンス上の問題点②:海外投資家はこう見ている?要旨】海外投資家は日本企業の株価を決めるメインドライバーである。海外投資家は「株主価値を上げようとしている経営者はどこにいるんだろうか」と思っている。経営者だけでなく当局の行動や各種規制がよくわからないというの海外投資家が困惑しているところであって、よくわからないものに積極的に投資をしたいと思う人はいないのだ。にもかかわらず、CEOもCFOもIRも監督官庁の担当者も数年ごとに代わるため、専門家がいない・育たないことに、また英語をしゃべらない人がトップになったりすることに、何とも思わないのだろうか?これでは、投資する側としては、長期的に持てる銘柄は限られるし、勢い短期的視点で企業を見ざるを得ないわけだ。それにもかかわらず、経営側は「海外投資家(アクティビスト含めて)は短期目線でモノを言う」と責めているので、海外投資家の理解を得ることができないのだ。また、最近の円安もあって、海外からみれば、いまの日本はすべて安いのに、海外投資家や海外企業に買収される企業は少ないのはなぜだろうか。企業にとっては海外投資家のカネは必要だが買収は許さない、という風潮があるのではないだろうか。そうでなければ、ただ単に魅力ある企業がない、ということなのか。
【所感】
海外投資家と言っても、様々なアセットオーナーがいるし、ファンドもいれば年金もいるわけで、一括りにはできないのではないだろうか。確かに、年功序列、終身雇用制が未だに残る日本企業の多くは、CEOもCFOもIRも監督官庁の担当者も数年ごとに代わるのは間違いない。それでも、数年ごとに主要幹部がこう交代しようがしまいが、安心感をもって見守ってくれる海外投資家もいるはずだ。以前、REITの代表取締役の任に就いていたときに、半年ごとに海外投資家を訪問し経営方針や分配金政策を説明してまわった経験から、様々な投資家がいて、自分が運用するポートフォリオのパフォーマンスの良し悪しを冷静に分析しながら聞く耳をもつ海外投資家のほうがすぐれていたし、しっかりと対話ができて貴重な意見もたくさんいただくことができたと思う。もちろん、あまりにCEOもCFOもIRも質が悪ければ、従来と変わらないのが悪と考えて意見してくる海外投資家もいないわけではない。CEOもCFOもIRも頻繁に交代することが問題の本質ではなく、新しくその任に就く人がどのように企業の株主価値を上げようとするのか、そのための努力を惜しまず経営にかかわる人なのか、が見極めるべきポイントなのだと思う。
また英語をしゃべらない人がトップになると、海外投資家にとって不安になることもよくわかる。経営者の考えを経営者の口から直に聴けることは望ましい。しかしながら、経営者が英語をしゃべらないと、本当に短期的視点で企業を見ざるを得ないのだろうか。要は中身が問題なのではないか。語学が達者でも、確りと経営者として語ることができなければ、信用・信頼を勝ち取ることはできない。語学力は経営者には最低限できれば十分であって必要な条件ではない。それよりも経営力、問題の本質を捉える力、困難に立ち向かう力などが必要条件ではないだろうか。

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