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前編:イベントに頼らず『日常の賑わい』を生んだ、まち歩きプログラム『大門びより』。

「ものづくりとまちづくり」を実践するソイロの松本啓太です。
4/20(土)に本拠地の名古屋市中村区・新大門商店街で、まち歩きプログラム『大門びより』を実行委員として開催しました。このプログラムを通じて同商店街に『日常の賑わい』を生めるのか?という実験的な取り組みです。前編の本投稿ではプログラムが生まれる経緯をお届けします。

『大門びより』が生まれた背景、それは『脱マルシェ』。

ここ数年、コロナの影響もありマルシェが定着~乱立し、消費者の間にも飽和感が漂う中、現在はマルシェ自体が淘汰される中で、例に漏れず新大門商店街でも「大門軒先マルシェ」を3度開催してきました。商店街と言う街中で行うマルシェは名古屋市内でも珍しく、行政と連携をしながら歩行者天国を目玉として設け、市内の有名マルシェ店を数多く誘致しました。
普段は閑散とした同商店街がお祭り騒ぎ、やや過熱気味の状態に発展。日常では見かけない数多くの人々で埋め尽くされる街を見て「町が昔の活気を取り戻した」と喜びの声が上がり、次の開催を期待する声も大きくなっていくのでした。界隈でもちょっとした話題になり、マルシェ出店者でも「あそこのマルシェは売れる」と噂が立ち、行政やマルシェ運営者が見学に訪れるほどでした。この熱気は商店街の各店の意識を前向きなものに変え、少しばかり距離があったグループの距離を縮めて、町に一体感を生むキッカケになりました。

一方、開催を終えた翌日は、いつもの静かなシャッター商店街。以前と比較すれば商店街が注目を集めたことで、新規のお客さんが少しは訪れるようになったものの、抜本的な解決に至るわけではなく、イベント頼りの限界を感じざるを得ませんでした。
そもそも、私たちがマルシェを始めた理由は「各商店が元気になって、商店街に賑わいを作る」事であり、非日常的なイベント開催が目的ではなかったのです。そこで生まれたアイディアは「自分たちが理想とする日常」を積極的に作りにいくこと、でした。

適切な賑わいはどれくらいか?

ここで一つの疑問が生じます。『賑わい』と言っても、どれくらいが賑わいと呼べるのか?何人が町にきて、売上はいくらあれば良いのか?明確な答えなど勿論ないし、人やお店の業態によっても違います。でも、目標は設定しないといけません。色々意見交換を重ねた結果、それなりに納得感のある答えを導き出しました。

名古屋市中村区・新大門商店街における賑わい
・お祭り騒ぎ状態でなく、”適切に”賑わっていること。
・適切とは、店舗の80~90%くらいが稼働していて(席が埋まっていて)、それなりに忙しい、でも、お客さんとコミュニケーションは取れる。
・営業を終えて振り返った時に、「忙しかったけど、もうちょっと頑張りたい」気持ちになれる。
・徐々に限界値も更新され、結果、利益も残る。

これらは全て自分達の感覚値で具体的な数値はほぼありません。でも、この気持ちと感覚が大切です。なぜなら、お店の性質や店主のキャラクターによって、頑張れる部分・量・質は違います。店主自身が「もう少しやろう!」と”自発的”に思える事が重要で、他人から押し付けられた指標では機能する可能性が下がるからです。

この理想を作るために生まれたのが、まちあるきプログラム『大門びより』です。では、この『大門びより』は特別なイベントと何が違うのでしょうか?

『大門びより』の特長① 普段の営業を少しだけ変化させた商品開発

特別なイベントほど、お店自体も何か特別な事を用意しがち。特別メニュー、特別営業、限定品など。それらの準備は日常に+αであり、そのプロセスだけでもお店にとっては負担です。個人商店はリソース不足が慢性的ですので、イベント開催はやはり負荷がかかります。(その分の売上が回収できたとしても、です。)
一方、大門びよりは日常の営業にほんの少しの変化を持ち込むだけ。例えば、こちら。

具材たっぷり和韓風海鮮丼

何を食べても美味しい地域の和食店「にぎわい食房 清風」さんの当日メニュー。通常は海鮮丼ですが、同じ商店街の韓国食材店」株式会社ナリタ大門店さんのキムチをあえて、和韓風キムチ海鮮丼に変身。ゼロから商品を作らずに、現行メニューにちょっとだけ変化をつける。地域の食材店がある事を生かす事で地域店×地域店のコラボ・メニューとして、この商店街ならではのメニューが誕生しました。更に、この商品に関わった2店舗だけでなく、私たち運営や参加店舗もの宣伝を行うことで、双方のお店のファン以上に、商品を知ってもらう事が可能です。何より評判がよければ、そのままレギュラーメニューにする事も視野に入れています。
通常に比べれば多少の手はかかりますが、地域店同士の意味・意義や、宣伝効果が得られるならリターンは大きいと言えます。

『大門びより』の特長② みんなで集客~商店街を周回してもらう。

これは以前の「大門軒先マルシェ」で成功した手法をそのまま用いています。イベントで最も重要で、そして苦戦する事は「集客」です。どれだけ内容が素晴らしくても、誰も来なければ成功とは言えません。どこまで行っても集客が課題になります。そこで、当時から行っている事は「全店で集客し、各店のファンを別のお店に行ってもらう」と言う極めてシンプルだけど効果が高い方法です。
1人で500人を呼ぶのは大変ですが、各店舗→各店スタッフが呼べるお客さんは最低でも10人はいるはずです。それを参加店のスタッフ30人で行えば、それだけで300名の来場が見込めます。更にその声をかけた方も友達を誘って2~3人/1組で来場すれば500~600人は来場してくれます。
お客さんをお店同士で紹介する事で、お店のファンから町全体のファンになってもらおうというのがこの方法のポイントです。

『大門びより』の特長③ 運営のスリム化

最後に運営についてですが、「日常」のプログラムなので運営もできる限り「特別な事」は避けます。例えば、本部を設置するためにテントを張ったり、交通整理を行ったり、ボランティアスタッフを募ったり、です。こうした行為は高い確率で「無償の奉仕」になります。テントを張ってもお金はもらえません。本部も店舗の中に形式的に設置するのみ。勿論、何かあれば対応しますが、基本的には日常と変わらないので、お客さんからも何も聞かれません。
この運営への負荷を減らす事もかなり大切です。まちづくり疲れになる原因は運営の負担です。実作業もさることながら、一番は人間関係によるところが大きい。町の人達との調整は心的なストレスは結構あります。こうした負担はゼロにはなりませんが、可能な限りスリムにすることはプログラムの継続性を高めることにも繋がっていきます。

他にも色々とポイントはありますが、とりあえず3つの特長を挙げてみました。

次回の後編では、当日の様子をお伝えしていきます。




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