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デザインの会社がなぜ組織学習を扱うのか?

MIMIGURIが運営しているオンラインの学びの場CULTIBASE Labで、6/18(土)、組織学習をテーマにした講座を開催しました。会員の方限定にはなりますが、アーカイブ動画も公開されています。


このnoteでは、「組織が学習するってどういうこと?」「研修と何が違うの?」「なんで、MIMIGURI(デザイン会社)が組織学習を扱うの?」という疑問を持たれた方に、講座の背景をお伝えしていきます。


組織が学習するって、どういうこと?

「学習」と聞いて、まず最初に思い浮かぶのは、学校や塾の教室のイメージです。先生との1対1の関係の中で、テストでよい点数を取るために、個人で努力するような光景が脳裏によぎる方も多いのではないでしょうか?

僕たちが持つ「学習」という言葉へのある種の固定観念から、「組織」と「学習」という言葉の並びに違和感を持たれたり、「研修のことでしょ」と思われる方もいるかもしれません。

「組織学習」はこうした従来のイメージとは異なる見方をします。では、組織が学習するとは、どういうことでしょうか?

例として「品質不正」を起こした会社をイメージしてみてください。

品質不正を起こした会社は、不正の原因を分析するとともに、再発防止に向けたマニュアルを作り、組織の構成員に遵守を要求し、研修などを行うでしょう。新たなチェックリストの導入を日常のルーティンに取り入れることもあるかもしれません。

このように「品質不正」という課題に対して、再発防止のための方法を組織的に学習する一連のプロセスが、組織学習です。

取り入れようとした新たな方法が、従来の組織の慣習と矛盾するような場合もあるので、組織学習は両者を両立させるアプローチについても理論化しています。

また、品質不正の根底には「上司の言うことは絶対」のような根深い文化が横たわっており、今後変えていく必要もあるでしょう。組織学習は、「新しいやり方や手続き」を習得することはもちろん、こうした「組織の新たな文化」についての学習も含む概念でもあります。


デザインの会社がなぜ「組織学習」を扱うのか?

さて、冒頭で述べたように、僕はデザイン会社に勤めており、「組織学習」と言うテーマとは縁遠く感じられる方もいるかもしれません。なぜ、デザイン会社に勤める僕が組織学習を扱うのか背景をお伝えしていきます。


「デザインの方法論やマインドセット」を組織に取り入れたいと言う声

近年の潮流として「デザイン」と言う言葉を広義に捉え、綺麗な見た目を作るような衣裳的なデザインだけでなく「社会をデザインする」と言う言葉のように、より広い範囲に適用されるようになっています。MIMIGURIでもデザインを広義の言葉で捉え、様々なパートナーさんとともに「企業や地域」の「事業や組織」のデザインに取り組んいます。

その中で、よく相談いただくのが、デザインの方法論を、自分達でも学習して実践出来るようになりたい、と言う声です。

こうした、声に対し、パートナーさんがデザインについて組織的に学習するプロセスに、組織学習の理論・方法論に立脚しながら伴走しています。ある意味僕たちも必要に迫られる形で「組織学習」について日々探究しています。


「デザインと組織学習」の密接な関係

もう一つの背景として、「デザイン」と「学習」という2つの言葉の、密接な関係があります。

「デザイン」には様々な定義がありますが、ここでは僕のお気に入りの言葉を紹介させて下さい。

(デザインとは)心の中で描いた形状を押し付けることをさすのではなく、成長の過程である。つくり手は、能動的な周囲の世界に囲まれた参加者である。彼(つくり手)にできることは、自分の周囲に刺激を与えることで、私たちの周りに見える世界に形式を与えるべく、地上で進行しているプロセスに介入することである

【参考文献を筆者が要約】ティム・インゴルド(2017)「メイキング」

少し分かりづらい言い回しかもしれませんが、言い換えると「デザインは一方的に世界に何かを提案する営みではなく、周囲との相互作用を通じて、立ち現れるものを形作る営みである」というメッセージです。

組織学習は、上述した品質不正の事例のように、トップダウンで新たな方法(この場合は、再発防止に向けた)を組織に記憶させることもあります。

それだけでなく、組織が向かおうとしている方向に耳を澄ませ、新たな方法論を形作るデザイン的な活動としての側面もあります。トップダウンに情報をインストールするだけでは立ち行かなくなった現代社会において、こうした側面により注目が集まっていると感じています。

MIMIGURIにはトップクラスのクリエイターが在籍していますが、僕のような”つくらない(つくれない)デザイナー”も同じ価値観を共有しながら共存出来るのは、インゴルドが言うように、周囲の環境から学び、立ち現れるものに耳を澄ませ、組織や事業を形作る営みの伴走者としてのアイデンティティを共有しているからだと感じています。

ちなみに、こうしたデザイナーとしてのあり方を組織の生態系として共につくり上げていく理論が、MIMIGURIが提唱しているCCMモデルとも言えます。


もっと深めたい方向けに:CULTIBASE Labにアーカイブ動画も公開されています

「デザイン会社が探究する組織学習」、興味をお持ちいただけたでしょうか?

変化の作り手として、組織・事業や、多様な関係者の相互作用の中に立ち、働きかけられている皆様と、組織はいかに学ぶのか、今後も探究していけたらと考えています。

会員の方限定にはなりますが、当日のアーカイブ動画も公開されています。興味を持っていただいた方は是非ご覧下さい!実務家の方をゲストにお迎えし、理論と実践の違い、現実の泥臭い活動などもご紹介しています。

また、同僚の東南さんが分かりやすい解説記事を書いていますので、ご覧ください。


追記: 品質不正を例に出しましたが、ゲスト参加してくださるNECソリューションイノベータさんは、不正をされていないのは勿論、社会課題を解決する会社に向けた脱皮に真摯に取り組まれている会社さんですのでどうぞお楽しみに!

#MIMIGURI #CULTIBASE #組織学習 #デザイン #ティム・インゴルド

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