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組織運営という伝言ゲームを制するために。

こんにちは、unnameの代表取締役の宮脇啓輔です。

2023年12月、unnameはカルチャーブックを制作・公開しました。企業理念、事業方針、行動指針など、私たちを形作るあらゆる想いを丁寧に言葉に紡いだ23ページです。

カルチャーブックと聞くと、企業の文化・風土を対外的に伝えるイメージが強いかもしれません。しかし、unnameのカルチャーブックは少し目的が違います。冒頭から「カルチャーとは」と言葉の定義から入り、「カルチャーとは耕すもの」と表現しています。

現在正社員5名の小さな組織で、しかもこの規模でカルチャーブックを公開するのは珍しいケースかもしれません。実は、この制作にはメンバー5人だからこそ「今」取り組んだ理由があります。制作の意図や過程について、プロジェクトを牽引したデザイナーの弘松陸とお話ししながらお伝えしていきたいと思います。

まず、私たちがカルチャーブックを制作した一番の目的は、社内の共通認識・共通言語を増やすことでした。

ビジネスの本質は伝言ゲームと言われます。経営者の発したメッセージが新入社員まで正しく伝わっている会社が成功する、という考え方です。意思決定や方針がねじ曲がって伝わったり、一部しか届かないと、目的に沿わない仕事が行われパフォーマンスが落ちたり、最悪全く不要な仕事をしてしまう恐れがあるのです。

この伝言ゲームに勝つには、大切にする価値観や考え方、判断基準を揃えることが重要だと考えています。基準が揃っていないと、個人の恣意的な解釈でズレが生じてしまうのです。ベースとなる価値観が共有されていればいるほど、このズレは減り、伝言ゲームがシンプルに進行するようになります。だからこそ、unnameがどんなスタンスを重んじているかを発信する必要があったのです。

カルチャーブック一冊でこれが解決するとは思いません。しかし、共通認識を持つためのツールのひとつとして大きな意味があると考えています。同じ物差しを持つことが大切なのです。そして、その物差しを共有しようとする姿勢自体も同時に大事だと思っています。

また、カルチャーブックにはもうひとつ、社外向けの狙いもありました。主に採用の場面での活用です。行動指針や大切にする価値観をひとつずつ言葉にすることで、unnameがどんな会社なのかを理解してもらいやすくなります。カルチャーブックを見て違和感を覚える人は、少なくとも今のunnameには合わないでしょう。入ってみないと分からない、雰囲気で判断してもらうのではなく、スタンスを言葉にして伝えることを心がけました。

今unnameは「はじめの10人」を集めている最中です。ひとりひとりの採用が重要で難易度が高く、価値観がマッチするかどうかは慎重に見極めたいポイント。互いに見極めるための会話が生まれることも期待しています。


メンバー5人のいま「だからこそ」

なぜ、メンバー5人の今この時期に、カルチャーブックを制作したのでしょうか。
 
実は、メンバーが少ない今「だからこそ」制作に踏み切りました。5人しかいない段階で、わざわざカルチャーブックにして丁寧に伝えるのは、一見コスパが悪く見えるかもしれません。しかし、20人体制になった時、今の5人が自分の中に80%くらい価値観をリンクさせ、ある程度他者に伝えられる状態になっていれば、伝言ゲームはうまくいきます。コミュニケーションコストも減り、運営はずっとスムーズになるはずです。

カルチャーブックは定期的に改定することが前提のものです。だからこそ、土台を先に作っておくことで、人数が増えたタイミングでも作業がしやすくなります。何より、大事なことだから早くやった方がいい。日頃から、コスパが見積もりにくいけれど重要度が高く、緊急度は低い業務にこそ差がつくと考えてきました。だから、完成度よりも期限を区切って世に出すことを意識したのです。


デザイナーが、組織の情報設計に関わる意義

制作の進行は、実は入社したばかりのデザイナーが主導で行いました。経営理念などはある程度固まっていたので、支援ポリシーや見せ方などをメンバーと作り込んでいきました。

デザイナーの弘松は、制作の過程をこう振り返ります。

「はじめに宮脇さんが作った全体像のラフがあって、それに伝わりやすさを考慮しながら意見して、補足や編集を加えていきました。デザイナーとして、かつ外から入ったばかりという立場も意識した形ですね。足りない説明はオーダーするなど、互いの目線を補完し合うよう役割分担しました」

弘松が加わったことで、社外の人にも理解できるレベル感を目指せたことは大きかったですね。unnameを新鮮な目で見られる存在がいたからこそ、このタイミングで制作に踏み切れた面もあると思います。他のメンバーも積極的に制作に参加してくれました。企業理念は事業部長の中本と以前から練っていた部分ですが、行動指針や支援ポリシーはメンバー全員で磨き込みました。合宿で時間を設け、みんなでディスカッションしながら言葉を紡ぎました。

カルチャーブックに実際に即した内容が詰まっているのは、メンバーの生の言葉が反映されているからだと思います。そして、カルチャーブックの制作を通して、デザイナーが組織の情報設計に関わる意義も感じました。

弘松いわく「デザインへの理解が進んでいる会社では、デザイナーが経営とのハブになるケースは意外と多い」そうです。ビジュアルのデザインだけでなく、情報のデザインを担うのです。経営会議のファシリテーターをCDOが務め、情報設計する役割を担っている組織もあるとか。

弘松自身、入社当初から経営とデザインを接続したいという意向を持っていたそうで、会社のコミュニケーションのハブになることで経営に関われる良い入り口になると考えていたようです。組織の伝言ゲームをデザインする、とも言えますね。

今後は、カルチャーブックの振り返りの場をファシリテートしていきたいと意気込んでいます。


カルチャーは日々作られ、育まれ、進化していく

カルチャーブックは定期的に見直しを行い、使い続けていく前提のものです。記された言葉は本当に残す必要があるのか、耕していくべきなのか。不要なものは削除します。メンバー全員で毎週読み返すようなものではありません。合宿など節目の機会に振り返りを行うイメージです。時間が経つにつれ、カルチャーブックとのギャップも出てくるかもしれません。組織が成長していたり、逆に停滞していたり。そのズレに対して、自分達が合わせに行くのか、カルチャーブックを実態に揃えるのか。指針として立ち返る大切なツールになるはずです。

実際、社内のやり取りではカルチャーブックの存在意義をひしひしと感じています。会議中に「これは『納期コミット』だね」と行動指針に紐づけて話したり、Slackのスタンプでも頻出しているんです。

採用の場でもカルチャーブックが話題に上がるようになりました。内容はもちろん、こうした取り組み自体を大切にしている姿勢が良いと言ってもらえることが増えてきて。形にしたことの意味も感じられています。

今後、カルチャーブックをアップデートしていく際には、行動指針やポリシーをメンバー全員で見直していきたいですね。伝えたい価値観をブラッシュアップし、今のunnameに必要十分な形で反映させるつもりです。

常に「耕す」ことを意識しながら。

カルチャーは日々作られ、育まれ、進化していくものだと私は信じています。カルチャーブックという形に表したのは、その手段の一部に過ぎません。これからもメンバーと言葉を大切に紡ぎ、磨き続けることで、企業活動における伝言ゲームに勝ち続けたいと思っています。


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