見出し画像

【AIニュース】LINEのAI領域でのこれまでとこれから -4つの近未来トレンド

今回は2020年11月に開催された「LINE DEVELOPER DAY 2020」にて、LINE株式会社AIカンパニー カンパニーCEOの砂金氏とData Labs技術アドバイザリーの栄藤氏が語った近未来の4つのトレンドについて解説したいと思います。本内容は2020年12月22日に公開されたlogmiTechの記事を参考にしております。
【LINEが描くAIの4つの近未来トレンドLINEのAI領域でのこれまでとこれから】

▼発表のサマリー

発表は前後半にパートが分かれており、前半は砂金氏が、後半は栄藤氏が発表しています。以下、簡単なサマリーを先に提示します。

<前半:砂金信一郎氏 現状のサービス紹介&研究開発成果について>
・すでに実装しているサービスとして、電話の自動応答(LINE AI Call)、OCR(CLOVA OCR)、身分証とOCRと顔認識技術(LINEeKYC)がある
・研究開発しているものとして、動画LIVEやWEB会議にリアルタイムで字幕を付与する音声認識、環境音認識、アバターでの利用を想定した自然な合成音声がある
<後半:栄藤稔氏 4つの近未来トレンドについて>
・研究者やマーケターへのアンケートから4つの近未来トレンド【Digital Me、Generative Intelligence、Trustworthy AI、Dark Data】が抽出された
・4つのメガトレンドは相互に関連していく
・日本語に特化した日本版GPT-3の開発を初めて発表
・研究から事業までの期間は短くなっており、今や研究が事業を作る

LINEは国内でも有数のAI企業で、技術研究に投資を行っている会社です。
この発表で、今後のAI分野がどのように発展していき、我々の生活にどのように実装されていくかのイメージがわかると思います。

本記事では、発表の中でも特に後半部分に当たる栄藤氏の発表から4つのメガトレンドについて、簡単に解説したいと思います。

画像1

Digital Me

メガトレンドの1つ目は「Digital Me」です。

Digital Me」とは、我々自身をデジタル上に表現し利用する技術コンセプトを指します。自分の分身となるアバターをバーチャル空間上に再現し、そこでの行動と、リアルでの行動を同期させていくことで様々なサービスに繋がります。

発表で紹介されている具体的なサービス例は2つです。

①Digital Identity:デジタル上で本人認証ができる。さらにリアル、バーチャルでIDを統合して活動ログを取ることでリアルとバーチャル両方で生活動体のデータが取得できるようになる

これができるようになると、デジタルサービスがより簡単に利用することができるようになります。ご存知の通り、役所で行う手続きは現状どれも手間と時間が大変かかります。これらがより簡単に、かつより安全に利用できるようになっていきます。

また、リアルとバーチャルの活動ログが統合できる点もポイントです。
今や我々の生活はリアルとスマホの中にあります。これらがより境目なく繋がることでリアルでサービスを受け取るのも楽になっていくと思います。
本発表では触れられていませんでしたが、この先には内閣府が掲げる「ムーンショット計画」なんかも見据えた取り組みではないかと思います。

②Better Care:ウェアラブルデバイスで生活データを計測、医療データと統合することでより良い健康管理を実現する

テクノロジーがもたらす大きな効用の一つに個別の最適化があります。

これまでのサービスの多くは大量生産、大量消費が基本で、医療についても大多数にとってより良い医療や医薬品の開発が目下の課題でした。
しかし、遺伝学の発展などに伴い分かってきたことは人それぞれ特性が違い、それぞれにとってベストな医療は違うという点です。

テクノロジーはこの個別にとってベストな医療というものを実現します。
「Digital Me」という技術トレンドはこれらのヘルスケア分野を大きく発展させるのに寄与することが予見されています。

▼Generative Intelligence

メガトレンドの2つ目は「Generative Intelligence」です。

Generative Intelligence」とは、既存のコンテンツ(音声、画像など)から新しいコンテンツを自動生成することができる技術コンセプトです。

具体的な例を3つ紹介します。

①Autonomous AI Workforce:AIが持つ単一の技術(音声認識、画像認識、自然言語処理、合成音声など)を統合して、複数機能を同時に提供する

企業の上流から下流までの活動が全て統合され、自動化されていくようなシステムです。今は恐らく、マーケティングや管理部、営業部でそれぞれ別のシステムを使ったり、複数のシステムを同時に扱わないといけないなどの非効率があると思いますが、これらが全て統合され、効率化されていくことになります。

②Dependable Speech Recognition:信頼できる音声認識システム。人の代替となるようなレベルを実現する

ここ数年で音声認識は急速に発展した分野の一つです。馴染みのあるSiriやAlexaなどを利用したことがある人なら感覚的にも理解できると思います。

しかしながら、今日の音声認識にはいくつかの課題があります。
一つは環境ノイズで、周囲の音がうるさいところではうまく機能しません。もう一つは未知語で、新しい言葉(特に固有名詞)が出てきたときに、をうまく認識できません。

これらの問題から、例えばドライブスルーは未だに人が対応しているし、コールセンターも一部を除いては現状人が対応している状態です。

これらを解決する方法として、いくつか候補となる技術が出てきています。「弱教師あり学習」や「教師なし学習」などが有力です。近い将来(10年以内には)多くのコールセンターが自動化されていくのではないかと思います。

③新しい教育サービス:生徒の状況に応じて、学習内容や手法が変わるオンライン教育の実現。

コロナウィルスの影響で、図らずともオンライン教育が急速に浸透しました。オンライン教育がもたらすメリットは、個別に合わせて学習スピードや強化するポイントを調整できる点にあります。これは、教室で一斉に行う授業では実現できなかった点です。

ただ、オンライン教育も現状のままでは限界があります。
なぜなら、先に授業動画などコンテンツを作成する必要があり、それらには限りがあるからです。また、今自分が何を分かっていないのか分からないなど、客観的なアドバイスができない点も課題です。これらを解決できる可能性があるのがAI技術との組み合わせです。

AI技術を使えば、個人の状態に合わせて、最適な教育コンテンツが提供されるようになる可能性があります。定期的にテスト等で理解度チェックをしながら、どこが弱点かを客観的に分析し、足りない部分だけに特化した動画を自動作成する、なんてことが実現できます。
また、発音のチェックなども、オンラインで提供できるようになっていきます。

その他にも、コンテンツの自動生成ができると、見る人や気分によって、結末の変わる映画などコンテンツを作成することができるようになります。

▼Trustworthy AI

メガトレンドの3つ目は「Trustworthy AI」です。

Trustworthy AI」とは、結果の説明性、公平性、信頼性、安全性を担保するAIが技術コンセプトです。

これはAI技術に限らず、「技術を自由に使うこと」「公共の安全性を守ること」「個人のプライバシーを守ること」は相互に対立します。
例えば、監視カメラを利用すれば、公共の安全性は向上しますが、個人のプライバシーを害する可能性があります。これら三方を両立、実現していくことが「Trustworthy AI」の技術コンセプトです。

Trustworthy AI」を実現する要素はたくさんあります。
発表で紹介されているのは「AIの公正さ」について説明されています。

AIの公正さは2つの観点から構成されています。
①統計的バイアス:データが偏っていると、結果にも偏りが出る
②倫理観とのバランス:数学的に正しいことが必ずしも倫理や社会的に公正でない

特に、ビッグデータとの扱いは、ヨーロッパのGDPRなど、プライバシー保護との観点が重要です。AI技術が社会に広く浸透していくためには、解決していく課題だと思いますので、引き続き法整備の観点からも動向に注目です。

▼Dark Data

メガトレンドの4つ目は「Dark Data」です。

「Dark Data」とは、現在活用できていないデータのことで、この活用できていないデータを活用していくことで今後さらなるAI技術が発展していくことが示唆されています。

現状、我々はデータの10%も使えていない言われています。
理由はこれまでは教師あり学習が主流で、教師あり学習をするためには正解データを人が作成する必要があり、それらのコストが膨大にかかったためです。

しかし、最近では教師なし学習の分野が発展してきており、今まで活用されなかったデータが活用される道が開けてきています。

発表では、具体的な例として巨大言語モデルの開発が挙げられています。
こちらは以前詳細を解説しているので、そちらをご確認ください。
【2021年AI最新事例】LINEが「超巨大言語モデル」を開発へ

この巨大言語モデルが実用化されるとさまざまな業務にブレイクスルーが起きます。一例としては、会社の横断的な知識と世間一般の知識を組み合わせることで、会社の生き地引のようなベテラン社員相当のシステムを作ることも夢ではないと紹介されています。

▼まとめ

今回はLINEが昨年11月に開催した発表からAI領域の4つのトレンドについて紹介しました。

どれも実現すれば、ビジネスや我々の実生活に大きなインパクトを与える技術コンセプトです。これらは夢物語ではなく、着実に実現に向けて日夜研究されている分野であり、そう遠くない未来に実際に社会で利用されるようになっていきます。

テクノロジーは常に指数関数的に進化していきます。これからは急加速で発展していくとの見方が強く、特にAI技術は全世界で、金、人が投資されている分野なため、今後の成長は類を見ないスピードになります。

そして、これらのAI技術の発展は必ず自分のキャリアや生活にも影響してきます。
何が起こっているのか分からず、AIに仕事を奪われることに怯えるのではなく、能動的に情報をキャッチアップしていく姿勢が重要になります。

今回の記事は以上です。
ご一読いただき、ありがとうございました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?