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【経セミ・読者コメント vol.7】 𡈽肥淳子さま/ M・Oさま 2024年6・7月号 特集「これからの労働市場改革を考える」

■ はじめに(編集部より)

経済セミナー編集部です。
今回は、『経済セミナー』2024年6・7月号(特集:「これからの労働市場改革を考える」)に対して読者の皆様からお寄せいただいたコメントをご紹介します! 
毎号、いただいたコメントの中から3~4つほどを選定し『経済セミナー』本誌や経セミnoteでご紹介させていただいております。

頂戴したコメントは本誌やnoteで公開していないものも含めすべて拝見しております。コメントは今後の企画・制作の参考とさせていただいております。

もちろん、ご執筆者のご了解をいただいたうえで、掲載内容をご相談して進めています(記名でも匿名でもOKとさせていただいております)。

今回は𡈽肥淳子どひじゅんこさまM・Oさま(匿名希望)によるコメントをまとめてご紹介します!

【以下、コメントです👇】



■ 𡈽肥淳子さまによるコメント

〇 対談「日本型雇用」はどこへ行く?

私が身を置くIT業界は、どちらかというと人材流動性が高く、ジョブ型雇用が進んでいる業界です。

やや古いデータとなりますが、2020年度のパーソルキャリア株式会社が行った調査では、異業種からの転職受け入れ率の上昇が一番高かったのはIT業界だったとされています。経産省によるリスキリングの例(リンク参照)としてもIT関連資格が数多く挙げられており、記事中にもあった「『成長分野』への労働移動」が意識されている業界であると思います。

プログラミングスクールなどが安易に転職やフリーランス化を促す動きもありましたが、実際にはうまくいっていないケースも多いようです。IT系フリーランスの年収も二極化しているという調査があり、太田先生の「産業をまたぐ移動は労働者にとってスキル面での断絶が大きく、かえって生産性が下がる場合も」というコメントには実感があります。

しかし、これは単に労働者側だけに問題があるわけでもなかったりします。
ITスキルに関しては、IPAなどの公的機関や業界団体、大手ベンダーにより、業界やグローバルで共通となる資格が多数、レベルや技術範囲もさまざまに存在しています。

では、これらを取得していけば、技術スキルと意欲の可視化になり、即就職に有利になるのかといえば、そう簡単ではありません。IT業界でも実務経験を重視する傾向があるためです。

新卒でSIerなどに就職した場合は、プロジェクトに先輩社員と入ることで実務経験を得る機会がありますが、中途採用者やフリーランスではこの点がハードルになります。

この問題は、人手不足により解消が進んでいくかもしれませんが、今のところ、日本市場がジョブ型雇用を受け入れていく過渡期の課題が表れている部分であるように思います。

対談の最後に、政策の伝え方についての話が上がったのは、広報担当としては非常に興味深いところでした。法制度や、企業・個人への支援施策などの設計があった上で、一般への伝え方が実現にまで関わってしまう点は、こうした政策に関わらず広報の責務として考えたく思います。


■ M・O さまによるコメント

〇 特集「これからの労働市場改革を考える」

大内先生と太田先生の対談と、対談の中で話題となった解雇規制に関する完全補償ルールの提案について詳細に論じられた川田先生のパートは、法制度の枠組みを詳細に経済学の枠組みで捉え直しており法学と経済学の融合のような非常に興味深い内容でした。これまでの労働政策の経緯や、岸田政権における労働政策の批判的検討など、いくつもの重要なテーマについて議論されている中、私が最も関心を持ったのは、以下の部分です。

「新しい労働政策を議論する時、まずその内容を正確に理解してもらわなければ困るのですが、私たちの提案についてはその第一歩がまだ踏み出せていないのです。その意味で、政策の内容以上に、説明の仕方、議論の持っていき方、そして政治のリーダーシップが必要になると思っています」

学問の力を社会に還元していくために営業力のようなものが必要なのではないかと感じました。大内先生たちの解雇規制に関する提案をはじめとして、経済学や法学の世界で、社会課題をいち早く捉え、分析や提案を試みる研究はいくつもあると思いますが、これらを少なくとも議論の俎上に乗せることを誰かがやる必要があるのではないかと思います。

それを誰が担うかと考えた時に、もちろん研究者起点の発信も重要ですが、制度を運用している行政側としてもそれらをキャッチしていく必要があります。私は元国家公務員ですが、国家公務員の中には、制度に詳しい職員がもちろんいますし、海外留学等で研究に触れてきた職員も多く在籍しています。研究と行政が関わり合う環境や仕組みが研究の実装に繋がり、制度的なインプットは研究の質の向上にもつながるのではないかと、今回の特集を通して強く感じました。


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