見出し画像

銀行員は株取引など、資産運用で成功できるか? Part1

私は、多くの人から「金融機関での長い経験によって、運用商品で利益を上げているのではないか?」と言われます。

確かに、銀行員というと投資商品に精通しているイメージがあるかもしれません。

しかし、銀行員と株取引とは、表面上は共通点が多いように思えますが、実際には大きく異なります。

銀行員は金融のエキスパートとして期待される一方、株取引など資産運用で成功するには別のスキルが必要です。

本記事では、銀行員が株取引など、資産運用には強くない理由を分析し、アカウンティング視点とファイナンス視点の違い、リスク管理の方法について解説します

「銀行員は株取引など、資産運用で成功できるか?」について、2回に分けて記事を書いてみます。


銀行員は株取引に強くなれるのか?

銀行業務と株取引の違い

銀行員の主な業務は、預金管理や融資の審査、リスク管理などです。

これらの業務は、アカウンティング視点、つまり会計的な視点で行われることが多いのが特徴です。

例えば、銀行が適切な融資額を決定するには、顧客の財務諸表などを分析します。

つまり、銀行の顧客分析は基本的に過去の実績、いわゆる会計視点の分析です。

一方、株取引は企業の将来の成長性や市場動向を見極める必要があります。

過去の実績ではなく、将来予測が必要なためファイナンス視点が重要です。


銀行員のアカウンティング視点とは?

銀行員の仕事は、主に収支バランスやリスク管理、法令遵守などに重点を置いています。

そのため、適正な返済方法や、万が一の回収リスクなどを抑えるため、貸借対照表や損益計算書を分析し、融資の可否を判断しています。

銀行のアカウンティング視点は、収益性や安全性を重視するからです。

一方、株取引では、市場の動きや企業のポテンシャルを見極めるため、成長性などのファイナンス視点を重視します。

よって、銀行員が持つ会計知識は顧客を分析するのに必要な要素ですが、それだけでは株取引の成功に十分なスキルにはならないと考えます。

あくまでも、過去の実績に基づく信用リスクでしか判断ができません。


銀行業務におけるリスク管理

銀行員が言う「リスク管理」とは、主に融資の際の信用リスクや市場リスクの管理に焦点を当てています。

例えば、融資先の企業が倒産するリスクを最小限に抑えるための審査や、金利変動による影響を考慮した資産運用などが挙げられます。

一方、株取引のリスク管理とは、株価の変動リスクやポートフォリオ全体のバランスを考慮したものです。

銀行業務で培ったリスク管理の経験は役立つかもしれませんが、株取引にはさらに高度なリスク管理能力が求められるでしょう。


銀行員のファイナンス視点の欠如

銀行員のファンダメンタル分析の限界

銀行員は、財務諸表を読む力は一定程度ありますが、株取引に必要なファンダメンタル分析は不十分だと考えます。

ファンダメンタル分析とは、企業の潜在的な価値を評価するために、財務諸表だけでなく、業績に影響を与える外部環境などの要素を総合的に分析するものです。

ファンダメンタル分析には、以下の要素が主に含まれます。

  1. 財務諸表分析: 損益計算書、貸借対照表、キャッシュフロー計算書など

  2. 経営指標の計算: ROE、PER、PBRなどの指標

  3. マクロ経済環境の評価: 経済成長率、金利動向、業界トレンドなど

  4. 企業の経営戦略と将来展望: 中期経営計画、ビジネスモデルなど

ファンダメンタル分析の目的は、企業の本質的な価値を理解し、本来の企業価値を判断することです。

株取引の場合、企業の収益性だけでなく、成長性や市場競争力、経済環境の影響など、様々な要素を総合的に評価する必要があります。

銀行員が持つ会計知識だけでは広範な分析に至らず、本来の価値算定までは困難だと考えます。


テクニカル分析を学ぶ必要性

株取引では、テクニカル分析も重要な手法です。

テクニカル分析とは、過去の株価や取引量など市場データを基に、将来の価格動向を予測する方法です。

以下にその主な要素を簡潔に説明します。

テクニカル分析の主な要素

  1. チャートパターン

    • 過去の価格データを視覚化したグラフやチャートを使って、特定のパターン(例えば、ヘッド・アンド・ショルダーやダブルトップ)を見つけ出し、将来の価格動向を予測します。

  2. トレンド分析

    • 価格の動きには一定の傾向(トレンド)があると考え、上昇トレンド、下降トレンド、横ばいトレンドを分析します。

  3. テクニカル指標

    • 移動平均線(MA)、相対力指数(RSI)、ボリンジャーバンドなどの数学的指標を使用して、売買のタイミングや市場の強さを判断します。

このような分析に基づいて、株式の売買などを決定します。

例えば、テクニカル指標やチャートパターンを使って、買い時や売り時のシグナルを見つけたり、損切りラインを設定し、リスク管理などを行います。

テクニカル分析は、株式や為替など様々な市場で使われ、特に短期トレードに有効と言われています。

銀行員が日常業務でテクニカル分析を使うケースは少ないため、このスキルは新たに学ぶ必要があるでしょう。

チャートの読み方やトレンドラインの分析、相場のサイクルを理解するのは、投資家の必須スキルといえます。


市場動向を読む力の不足

銀行員は、マクロ経済や金融政策に関する知識をある程度は持っていると思います。

しかし、株取引においてはさらに詳細な市場動向の理解が必要でしょう。

例えば、業界特有のトレンドや競合他社の動向、将来の国家政策などが市場に与える影響を把握することが求められます。

市場動向を正確に読む力は、投資の成功に直結する重要なスキルです。

しかし、銀行でこのような情報を入手する業務は限られたポジションの人だけです。

銀行によっては、市場動向を読む専門家は複数存在します。

例えば、エコノミストやマーケットアナリスト、ファンドマネージャー、トレーダーなどがそれぞれの視点から市場を分析し、戦略的な意思決定をサポートしています。

銀行員としての経験が株取引に役立つとは限らない理由の一つは、これらの高度な市場分析が、一般的な銀行業務とは異なるスキルセットだからです。


まとめ

本記事では、銀行員が株取引に強くない理由を解説しました。

銀行員は金融のエキスパートとして期待されますが、その業務は主にアカウンティング視点で行われ、株取引に必要なファイナンス視点や市場動向を読む能力は不足しています。

また、銀行業務で培われるリスク管理は、融資や資産運用に特化しており、株取引で求められるリスク管理とは異なります。

さらに、株取引で成功するためにはファンダメンタル分析やテクニカル分析といった高度なスキルが必要でしょう。

銀行員がこれらのスキルを身につけるためには、積極的な学習と実践が求められます。

個人的な見解として、金融機関での経験だけでは、株取引で成功するための十分な条件とは言えないと思います。

次回は、銀行員の株取引についてインサイダー取引や利益相反リスクなど倫理的な問題を取り上げます。

最後まで読んで頂き、ありがとうございます。
よろしければ、フォロー頂けると大変嬉しいです。


この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?