見出し画像

自分の中の経営にまつわる話

当院は、創業者である自身の想いをもとに作ったクリニックだったので、当初から中小企業規模でありながらもMVV経営の実践を意識してやってきました。
そんな私の中の経営にまつわる話を今回はnoteでまとめてみたいと思います。


1. 当院のミッション、ビジョンについて

当院のミッション、ビジョンです

ミッションは、創業者の姿勢そのもので、ビジョンは、その後、訪問診療で成し遂げたい絵として掲げました。
医療という立場から人の生き方、組織の在り方などを探求して、現状に対する違和感をあるべき姿に変えていきたい、という想いで掲げたのですが、ずっと続けていきたい自身の自然な姿勢だなと思っています。
時には、あまり深く考えない方が幸せなこともあるかもしれませんが(笑)、事業や生き方として当たり前と見聞きしていることに対して「違うんじゃないか?」と思って動き出し、事業の立ち上げに踏み出していった経緯が自分にはあるので、原体験からくる一文になります。まさに進むべき「道」であり、「矢印(→)」であり、「矢の軌道」というイメージです。

ビジョンは、「納得」という言葉が中心となっています。結局、標準治療も断る方がいる高齢者の在宅医療の中では、「納得」がエビデンスに勝る場面をしばしば経験します。それを表現したものになりますが、家で、地域で、というのがローカルビジネスの根幹であり、在宅医療のメインフィールドだなと思い、また勤めているスタッフの「納得」もあるような事業体にしていくという二重の意味が込められています。
ビジョンは、狙うべき的であり、絵であり、地図だと思っていますが、はじめにMVVを設定した時は、すぐに具体的な絵があって機能するというよりもスローガン的な要素という印象で、抽象度が高かったのは事実です。ですが、組織運営を重ねていくにあたり、だんだんと言語化してきたもの、解像度があがってきたものがありました。

2.当院のバリューについて

その中でまず第一に具体性を帯びてきたのがバリューです。

当院は、4つのバリューを掲げて、評価項目にも入れています

バリューの存在は、背筋を伸ばし、より具体的な仕事姿勢にフォーカスした項目になると実感しています。どんなバリューを掲げても背筋を伸ばすこと自体は変わらない印象がありますが、様々な要因が重なって迷った時にこっちの方と選べるような優先順位を同時に表してもいるで、組織に集まったメンバーの価値観を合わせる文言になると思います。
それぞれ高いレベルでバリューを体現することが結果的にミッション・ビジョンの実現に繋がっていく重要な要素になるという認識を持っています。その際に大事にしていることは、まさにOKRの思想と同じなのですが、ストレッチゾーンのレベルで体現を目指してもらうことです。

例えば、最近当院では、ライフステージの変化を控える、もしくは変化中の女性スタッフが多いこともあり、また在宅医療自体24時間体制の維持が大変なところでもあるため、私もスタッフも持続可能性の文脈で話をすることが多いのですが、社内wiki、マニュアルであるNotionで以下のようにバリュー体現例を挙げています。

#4 多様性と持続可能性
#1、#2、#3の価値観を共有した仲間達と多様な性別、ライフステージを支え合う仕組みを作ります。持続可能性を担保しつつ、それぞれのキャリアが豊かになるよう取り組みます。
【社内のバリュー体現 代表例】
- タスク管理ツールの使用方法を改変し、業務の見える化と偏り防止を実現した
- 自部門以外の業務プロセスや大事にしている価値観、詳細を理解して、働き方の柔軟性と改善の視点を適切に分け、コミュニケーションすることができた

杉並PARK在宅クリニック 全体院内マニュアルより

#1〜4の1つ1つが事業を順調に成長させ、基盤を固めていくために大事な価値観になると思って作ったのですが、あまりに聖人君主なレベルを求めるとキャリア志向で上を目指すことにリソースを最大限投下できる人材しか残らず、かといって、一定当たり前のレベルだとバリューとして機能しません。あくまで、バリューは、背筋を伸ばし、より理想な姿を表したものと捉えることがベースにあり、その塩梅を採用で加わった仲間の可能性を思慮し、挑戦的だけど無茶ではないテンションを示していき、それを組織の中で大切にする「力学」として示していくのがトップに求められる役割と最近思います。「力学」については、クリエイティブテンションの考え方が良いイメージと思います。

参考)クリエイティブテンションについて


ちなみにバリューについて深まっていったのは、導入させてもらったHiManagerさんの支援も大きなきっかけだったと思います。詳しくは、以下のnoteをご覧ください。

3. 最近のテーマ①:働きやすさと働きがいの両立

最近のテーマは、働きやすさと働きがいです。
働きやすさについては、スタッフの声もあり、1つ1つ作り出してきましたが、そのための仕組みやスキルの複数名共有、マニュアルづくりや申し送りの設計、状況の想定など都度の工夫は重ねてきたと思います。
ただ、HiManagerのインタビューでもあるようにエンゲージメントサーベイは大事な示唆をもたらしてくれたのですが、なかなかうまく活用できない時期もあって、試行錯誤した結果、採用や組織開発の施策で関係性への配慮と挑戦は続けながらも目標管理という文脈を入れた方がよいのではないか?という考えのもと、OKRを導入していったという経緯があります。
ここがまさに働きやすさと働きがいの論点になります。
働きやすさの方に偏って力を入れてしまった際の危惧は、緩い組織になってしまい、事業競争力が落ちてしまい、そもそも事業自体が高度なバランスで保たれた状態を維持できない、という状況になってしまうことです。
実際に心地よい空気が流れている時間も組織運営には大事ですが、長くなりすぎるとその時間に真剣に話し合って解決していくべき諸所の課題を放置してしまうことになりかねないと思う瞬間もできてしまいます。
そこで働きやすさを実現しながらも、働きがいにまつわる「目標達成」、「成果」、「社会貢献性」などを推進していくのが賢明ではないかと考えて、意識的にOKRを動かしていくことにしました。
最近はOKRが評価と連動していることもあり、スタッフ全員真剣に取り組んでくれていて、働きやすさと働きがいの両立している状態を目指すことができているのではないかと思います。その2つのバランスがとれていることが良い組織の状態(Be)ではないかと考えています。

4.最近のテーマ②:マネジメントの実践

そんなMVVを実践していく中で、実行していくためのhow toが必要であることを痛感する機会が増え、自身の中にマネジメントの知識と経験値が圧倒的に足りないと感じたことから、昨年〜今現在もオンゴーイングでマネジメントの講座を受講しています。

組織マネジメントは、どれだけ事前設計をできているか事前知識があるかが大事だと講座を通して実践して感じましたし、それぞれのマネージャーが経験してきたハードシングスは誰かが経験したあるあるかもしれない、というのはグループワークをしていて実感しました。

例えば、組織の成果を最大化するための目標設計と支援。人材育成を視野に入れたコミュニケーション、フィードバックなどのスキル。組織全体の設計とアサイン、評価などなど。

マネジメントはストレスがかかるストレッチな体験ですが、だんだんハマる瞬間が楽しくなってきて、課題があるとまた次の施策を考えようと思える、伸び代を感じる瞬間も多く、大変だけどやりがいのある仕事です。

マネジメントでやるべきことは多く、また評価制度を設計するにあたっては、以下のような書籍も大変参考になりました。

少し前から勧められて読んでいるのは、これらの書籍です。
全体設計も1on1も全部が全部大事で、総合力が必要なのがマネジャーと実感する日々です。

より効果的なリーダーシップを発揮するためにマネジメント修練の道はまだまだ続きますが、これからも成長と学びを重ねながら、組織とチームの成功を生み出すために取り組んでいきたいと思っています。

5. 今後:3年後のビジョンについて

まだまだ解像度を上げていく必要がありますが、1つは3年後、クリニックが地域の特定の困りごとに関する拠り所になる状態を確立し、組織内は良い関係性を保ちながらもそれぞれのライフステージの変化に耐えられる組織になっている状態が目標です。また、個人についても、実は必要性を感じて昨年からソーシャルワーカーや訪問診療看護師の教育課程を独自にコツコツ準備と開発・実践をしているのですが、医療事務も含めてキャリアの自律性が高まっていることを目指していきたいと思っています。

6. 自分の経営観について

現時点での自分の中の事業にまつわる経営観は、2文字の漢字の「経」と「営」のうち、営みの部分が強いものと考えており、人の生活のもとにあるものとして捉えて事業活動を実践していくことが、バランスのとれた経営ではないかと思うようになりました。
それは地域に根付いたローカルビジネスを立ち上げ、その周辺を生活圏に持つメンバーが職業として選んで集まったという経緯も大きいのかなと思っています。
なかなかスタートアップのように目線を高くしてIPOや規模拡大を目指し、常に全力で事業を追う、ということは難しいかもしれませんが、プライベートも両立させて全力で生きる、というメンバーが集まっていると思っているので、そのクリニック事業がどれくらい続くものなのか、発展していくものなのかが今まさに実験しているところです。

7. オンラインイベントのお知らせ

今度の1/31に友人から声かけがあってオンラインイベントをやります。
私は、1個人のクリニックですが、病院の在宅医療部の立ち上げと中規模の展開を既に行なっているクリニックの先生方と3名で登壇します。
在宅診療の立ち上げについて三者三様で話をする予定なので、ぜひ聞きにきてみてください!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?