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同業他社との話はとても楽しい。それでも注意した方が良い4つの情報交換

時々、事業部の偉い方々から「社外で競合他社含めた交流会が今度あるんだけど、どこまで話していいか?」というような相談を受けることがある。

ビジネスをしていると同業の企業や部品などの仕入れ先と会食をしたり、「なんとか協会」というような業界の集まりがあったりするものだ。ぼくはそういった場が好きになれないので経営企画で経営のサポート側でよかったということも多いが、日々事業部では市場でドンパチ競合と戦っているわけなので、貴重な情報を得るチャンスでもあるのだ。

一方で世の中では密室で同業と悪い相談をして談合をして捕まっているケースも多いのでどこまで話していいかある程度気にしている人も多い。法務にお願いして定期的にやってもらっている社内研修のおかげかな。

今日は同業の他社と会う場合や、業界の交流会などでどういったことをはなしたらまずいか?ということを簡単に振り返ってみたい。

事業の偉い人はそういった法務の研修などにはまず出ないので、僕のような部署に雑談程度で確認しにくる場合が多いので、いつも簡単に説明はできるようにしている。そんな内容を数分で簡単に振り返ってみる。

どんな業種でもベンチャーでも老舗企業でも関係あるので心に留めておいていざというときは捕まらないように気を付ける必要がある。

■ 独禁法にひっかかる情報交換

同業他社と話をするうえで引っかかってくるのは”独禁法”。正式名称は「私的独占の禁止不公正な取引方法の禁止不当な取引制限の禁止」というとても長ったらしい名前を略して独禁法と一般的にはいっている。この独禁法に違反すると罪になる。

何をしたら罪になるか?

簡単に説明するとそれは「他の事業者と共同して相互にその事業活動を拘束しまたは遂行する」ということで、これをやったらアウト。「他の事業者と共同して」というのは他の事業者(主に同業他社)と相互に連絡を取り合うことをさしていて、後半の「相互にその事業活動を拘束しまたは遂行」というのは本来はそれぞれの会社がが自主的に決めるべき価格や販売・生 産数量、技術、製品などを共同で取り決めることを指している。

主にこの独禁法に違反する行為としてカルテルと談合という2つの種類があってとても重い経済犯罪として扱われている。

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あまりややこしい話にするとつまらないので、違いを説明すると、カルテルというのは価格協定を他社と結ぶこと。他の会社と「この価格で合わせよう」ということをカルテルと言っていて、同業同士で独占的利益を得ることを目的に競争を避けて価格の維持を狙うというのが目的だ。結構これにすれすれのことをやっている例は世の中にはあるので時々ニュースでも見る。

一方の談合というのは企業が仕事を入札する時に行われる犯罪で、ある指名入札業者が工事受注をするときに競争入札を避けて高値で落札するような話し合いを事前にすることをさしている。たとえばA建設に受注をさせたいので、入札はあくまでも形だけにしてそのA社に高い値段で落札させるというような場合だ。多くはそういった便宜を図ることで賄賂などが発生して贈収賄の容疑も同時にかけられることもおおいケース。こちらの談合は建設業に多く見られるが入札自体はカルテルよりも発生する件数が少ないのでカルテルの方がよく接する可能性があるといえる。

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ちなみにカルテルや談合については口頭、文書を問わない。2社以上で何らかの合意をして それぞれが同一の行動をとれば問題となる。また場所についてもどこでも関係ない。業界団体での会合、喫茶店での打合せ、 電話などの場面を問わないのだ。価格協定をもちかけられたら予防策をしないと巻き込まれる危険があるので気を付けた方が良い。

罪としては課徴金を罰金で払うことや、会社の取締役への刑事罰などがあるので重い。

■どんな話をしてはいけないか

あまりビビりすぎても普段の貴重な情報交換の場がつまらなくなってしまうので最低限気を付けるべき点を4点ほど共有して終わりにしたい。

1)価格

この価格が一番マズイのでとにかく同業他社とは絶対に話題にしないというスタンスが大事になる。例えば価格引き上げ、引き下げを決める、現行価格の維持を決めるというのはアウトだし、標準販売価格を決めたり、価格改定をする時期を決めるのもアウト。販促のための歩引き額や販売報奨金額についても話してはいけないので、とにかく同業と価格の話になったら速攻でその場を離れるか「その話はやめましょう」といって話題を変えた方が良い。

2)数量

売上=数量×価格なので、価格とセットとなる数量についても話してはいけない。例えば生産量や販売量はアウトだし、メーカーだったら生産量につながってくる原材料の購入数量や設備の運転状況などの情報について話し合うこともやめておいた方が良い。

3)販売先や販路

顧客や販売地域に関する何らかの取り決めをするのも気を付けた方が良い。例えば他のメーカーの顧客とは取引をしないことを決めることは自由競争をではなくなるのでNG。安値販売をお互いこのエリアやこの顧客にはしないことを決めたり、販売テリトリーを決めるのもアウト。

4)共同ボイコット

特定の事業者や新規参入者を排除するようなボイコット行動も引っかかる。例えばA社もB社も卸売会社C社に製品を卸しているが値引き要求がきついので、お互いそのC社には製品を入れないように販売を見合わせる。もしくは新規参入者を排除するために、 メーカーが共同で原材料仕入先に対して新規参入者への販売を断らせるなどは実際にある事例なのでアウト。

■よくあるケース

「まあ上記4つさえ気を付けていればいいですよ」ということをぼくは説明することが多い。この4つだったら酔っぱらっていても覚えていられるだろうしシンプルだと思う。

それでも不安だったら実際に会う相手と何らかの秘密保持契約を結ぶとか法務を混ぜて契約書に文言にして、その相手企業とあうのがカルテルや談合ではないことを明らかにしておくという手も使うので、気になる場合は法務に相談をするようにお願いをしている。

たとえば同業他社との会合当社が値上げ交渉を実施している時期に、 同業他社との会合に出席する機会があった時に、事前に議題になかった話題として価格に関する話題が突然出たとする。自分は発言していないんだけどなんとなく自値上げ幅や値上げ時期について合意した雰囲気になったような場合はほぼアウトとなる。自分の会社が明確な賛否の意思表示をしないまま会合が終了したとしても「暗黙の了解や値上げに関する共通認識」があったとされてしまう。

もしやばそうな雰囲気に会合がなったらとにかく、会合の途中に理由を述べて退席したり、会合の議事録に自分の言動を残してもらうようにするなどの行動をとるしかない。そして直ちに上司へ報告して法務と相談する。その上で後日、値上げに関する話題が出た事を理由に当社が退席したことや一切賛成していないという書面を作成して会合の主催者に郵送するといったこ戸をするなどある程度の手は打てる場合もある。

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古い産業だとしょっちゅう話題になるので当たり前に気を付けていることだと思うのであまり面白くない話だったかもしれない。

それでもベンチャーや法務の体制が整っていないような中小規模の会社ではこういったことが起きやすいので何かの参考になればと思って記事にした。ベンチャー企業もスピードが速いのでこういったことを気にしていられないような雰囲気があるかもしれないがいざ問題になったら会社の存続自体が危ないので幹部から社員には徹底して教えてあげる必要がある。

一方で古い産業でも独占状態に近い会社というのはあるもので、例えばパソコンのOSもそうだし、大手3社の通信業者や大手4社のビール会社、サニタリー関係も数社で独占的しているような産業も多い。こういった会社はそれぞれ値下げ競争をやると自分の会社も利益が減るということを「暗黙の了解」として理解しているので価格をメインで戦わないという”合理的”な考えをしている。他社の参入を排除しているわけではないが、すごくインフラ投資が必要だったり実質的に参入が難しいと完全に守られた産業になってしまうので、違法ではないが独占している場合もある。

とにかく同業と会うときにぼくらは話題にだけは気を付けておいて、あとは楽しくやればいいと思っている。同業だからこそ結構話してみると悩みは一緒だったりするのでリフレッシュになったりするものだ。

keiky.

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