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自社の事業を成長させたいときに意外に上場会社に買収提案をしてみたら面白い展開になるかもしれないという話

近年経営のスピードがますますはやくなっていることと、企業の大半は自社で新事業を創出できないことで苦しんでいる。

そんな新事業を自社で持ちたいのであればまずは買収を検討してみるというのも手ではないかという考えについてざっくり記事にしてみる。

■社会的なベンチャー企業の役割

ベンチャー企業に既存事業はない。すべてが新事業であり攻めしかないのがベンチャー企業である。こういったベンチャー企業は失うものは少なく、銀行からの借り入れや、株主からの資金調達でチャレンジすることがもはや使命と化している。社会的にもそういったベンチャー企業というのは役割があって大きく社会を変えていく原動力になる一方、倒産するリスクも高いビジネスといえる。

ベンチャー企業はだいたい創業者数名が出資して株を出し合っているが、上場していないことから株を売ることはできない。上場することで株が何倍にもなり売ることができるようになるので、上場することを目的とする人がいる一方、上場ではなく大企業に買収してもらうことを目標にしている企業もある。いずれの場合でも創業者は大金を得られるので一線を退いて悠々自適な生活を送るかシリアルイノベーターのような形で次々新しいビジネスを作る傾向が強い。

歴史ある産業の日本のメーカーに勤めているぼくからしたら出来ないことであって、とてもうらやましくも頼もしくもある。日本から世界的なベンチャーが出てきてくれることを願っている。

■ 非ベンチャーの企業全般が考える事業のベタな新展開

一方の中小から大企業まである程度歴史や規模がある会社というのは次の成長の柱づくりに苦しんでいる。

今までやってきた事業の地盤があることである程度経営の安定性を保てているわけだが、次なる成長となるとなかなか内部からは生まれにくいのが現状だ。

よくコンサルが使うX軸Y軸で4つの象限を作って「製品・技術の新旧」をX軸において「既存市場・新市場」をY軸にする縦軸と横軸にした図から言えば、だいたいの企業は自社の今の技術を使って新たな市場に横展開することを選ぶか、自社の今のビジネスを例えば海外など新しいエリアに広げるということをまず行う。今まで培ってきたものを活かす発想がどうしても基本となり、そこに強みがあるのだから当たり前のことでもある。

この視点でみると、企業は自社の資源を応用できる市場なりエリアを探して展開していることがほとんどと言える。

試しに色々な上場企業のホームページやIR資料(一般公開している資料)を見てもだいたいこのどちらかを主軸に置いているものが大半、いや、ほぼ全てだといってもいいくらい。

こういう横展開でまだ成長できるうちはいいが、だんだんと手詰まり感が出てくる。そうなるとどの企業も新事業が必要になってくるがこれが難しい。

■普通の企業で全くの新事業投資はなかなか厳しい

ある程度基板があって既存事業がしっかりしているほど新事業は結構難しい。そこにはいろいろな理由があって、例えばこんな理由が多い。

・リスクがとれない。調べ過ぎきれいな絵を描きすぎる。

・投資採算の観点で損する投資がしづらい環境がある。

・チャレンジしろと経営は指示を出す構え自分の体制を脅かしたり、自分が理解できないことは認めない。

・新事業にお金をかけるという発想がない。

・何か起きたらどうしようと先に思ってしまう

・今のヒエラルキーが崩れるので外部から人をなかなかとろうとしない。

・すぐリターンを求めようとするので辛抱強く待てない

・新事業開発部門は遊んでいると思われて事業部門から協力を得られない

などなど、このように大企業にもなかなか新事業をやりづらい面があるのが実態であり、これはぼくの会社だけではなく多くの会社に当てはまることといえる。

こうなると企業はM&A(買収)することを手段として選び、他社がやっていることを取り込んで自社の新事業として位置付けるようになる。

■ 買収を検討する場合まずは非上場企業となるのが一般的だが、、、

じゃあどんな企業を買収しようかと考えると、大企業や上場企業はまず選択肢から外すケースが多い。自社より小さい企業のほうが飲み込みやすいしリスクは相対的に低いと考えるからだいたいこういった選択肢をとることになる。

そうすると非上場企業を自分たちで探すか、誰かのツテをたどるか、M&Aアドバイザーというコンサルを使って候補企業を探すことになる。ぼくも仕事柄よくこのプロセスをやるが、なかなか骨が折れる作業で何百社から絞り込んだ何十社当たって売ってくれる可能性があるのは1、2社といわれるくらい難しいことで、タイミングも影響するし確率は低い。選り好みしている余裕はない場合が多く、ピカピカの素晴らしい企業であればまず売りに出ないので買収できるチャンスというのは低いのが普通なのだ。

そんなときに最近感じるのは大企業や、上場企業のほうが買収できる可能性が結構あるのではないかと思っていて、最近そういったアプローチをはじめている。

だいたいこちらが資金力がなかったり規模が小さいのでビビってしまうが案外そういうことを感じる必要もなくて、こちらがベンチャーのような会社でも大企業にアプローチすることが意外に可能な場合が多い。

■ 自分の会社が大企業でなくても上場企業を買収するというのも一つの選択肢に入れてもいい

大企業を心理的に外してしまうが、それはもったいないのには大企業には話にのってくる可能性が高いからだ。

・全体は無理でも部分的に変えるかもしれない

大企業は事業を複数もっている場合が多い。そしてだいたいの企業は3割から4割の事業は赤字であるという統計すらあるので全部の事業が儲かっているわけめはないのだ。

そして上場企業の場合はある程度外部からのプレッシャーがあったり株主貢献を意識せざるを得ないので、事業を選択と集中しなければならないとなると撤退したほうがいい事業というのは出てくるが、リストラはしづらいので基本的にやらない。

ただしもしその事業を買いたいと言ってくる相手がいたらどうだろう。自社では成長させることができなかったが、新たなオーナーが現れたら、そのひとたちが自社にない強みがあったらどうか。社員も引き継いでくれることを前提にする場合が多いので、社員を切り離すことにはなるが新たな会社で活躍できる環境を与えられる。

このように大企業には大企業の事情があるので、接点がなければ適当なm&aコンサルや証券会社を使ってアプローチしてみるといい。まずは話を聞きたいという形でテーブルについてくれる可能性は結構あるものだ。

・全体も結構買える可能性がある。

完全に変える可能性というのは確率的には低いが、会社によっては身売りを考えている企業が結構あったりするのでそういったタイミングが合えば相思相愛で合体できる可能性はある。例えば自社だけでは次の成長が難しいと考えている場合や創業一族がリタイアを考えている場合が考えられる。他にもすでにアクティビスト(ハゲタカと言われたりする)と言われるような企業がすでに大部分の株を持っている場合、そういった会社は永遠に株主になるつもりはないので株を売る相手を探している場合もある。

このように部分的に買える可能性に比べれば低いが、全体を買える可能性もある。ただし一般的には可能性が低いし、合弁会社のような形で完全に自分の支配下におくのではなく一緒に運営していくというような形に発展する場合もあるので、「そもそも自分は何が欲しくて買収するのか?」というところを突き詰めて考えると相手の会社そのものではなく、いまの自分の会社の成長のためにシナジーのあるとおもっている一部の事業である場合の方が多いのでブレないようにする必要がある。

■資金がなくても案外なんとかなる

大企業が「自社を売ってもいいよ」となったとして、次に不安なのはそんな買収する大金はないという問題だがこれも結構なんとかなるものだ。

あまり詳しく書くと説明的過ぎてつまらない内容になってしまう恐れがあるので詳しくは書かないようにするが、LBO(レバレッジバイアウト)という方法があって、買収する対象会社に借金をさせて、買収するこちらの会社では必要資金が少なくなるような方法もあるので、全額自分たちのお金で払う必要がないという手法を活用することもできる。

また、自社でいま借入金があまりなくて資金的な余力があるのであれば今であれば低金利で借入金を増やすことができるし投資機会に困っている金融機関を当たればどこか買収してくれる資金を出してくれるような金融機関はあるものだ。

さらにいえば、半官半民のような金融機構もあって、出資を一緒にしてくれるような組織も存在するので当初の出資を折半して出して数年後に100%にするまで待ってくれる(当然利子は払うことになるが)ような形態もある。

このように資金の調達手段というのはいろいろあるので、うちにそんな金は出せないといって最初から諦める必要はない。

■例えば上場している企業をどういうプロセスで買えるようになるか

ちょっとマニアックでこんな記事のニーズはあまりないと思うが、一応上場会社はどうやったら買収できるのかざっくり理解いただくためになるべくわかりやすい言葉で説明をしてみようと思う。

1)まず上場会社は秘密裏には買収できない

→理論的には上場しているのでぼくらはその会社の株を買うことができる。株式市場が開いているときに少しずつ株式を買い続けることは可能といえる。ただし、一般的に時間がかかるし、そもそも売却に応じる株主がそれだけいるかが不明なので現実的ではない。

もっと言えば、誰かが買っているということを察知して、どんどん買い上がる中で株価が値上がりして大きな出費をするハメになる。また、株の持ち分が5%を超えると大量保有者として内閣総理大臣に報告書を提出する義務が発生して明るみになる。突然現れた大株主に対して、対象会社の経営陣が警戒するので実質的に秘密裏に買収はできないと考えた方が良い。

それでも敵対的に買収をしかけて、今その会社の株を持っている企業に売却するように交渉するなど、派手に立ち回ることもできるが、自分でその会社の事業をやろうと思っている以上は相手から悪い印象を持たれて良いことはないので難しいと考えた方が良い。

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2)実際に多いパターン

・ じゃあ実際にどうやるかというと、まず買収したい会社の一定規模の持ち分を持った大株主と市場外で1対1で交渉する方法をとる。その一定数株をもった企業と株の売買に合意を内々で取り付ける。候補としては3割程度を持っている相手であることが望ましいとされている。オーナーである場合もあるしそうではない場合もある。

・次に株式の公開買付(TOB)の手続きを行う。これは何かというと、特定の大株主と市場外で一定規模の株式の売買を行う場合、 すべての他の株主に対して特定の大株主と合意した株価を開示して同じ価格で一定期間にて株式の買付けしないといけないルールがあるからやらなければならないプロセスとなる。株主は全員平等に扱わないといけないので、ある1社とだけ交渉することは許されず、そういったことをする場合にはその条件で他の株ぬ推からも株を買わないといけないとされている

・このTOBを行うときに注意をした方が良いのは対象会社側に事前に告知はした方が得策というものだ。必ずしもする必要はないが、対象会社の人たちと買収後も一緒に事業をしようと思っているのであれば、好意的な印象を持ってもらう方が良いし、乗っ取りだと思われた瞬間、買収できたとしても抵抗にあうし、当初想定していたシナジーというのは出しにくくなる。

・事前に対象会社の経営陣にコンタクトして取締役会の賛同を得た方が、 対象会社から株主に対して公開買付に応じること勧めてもらえるので基本的にこれはやったほうが良いプロセスといえる。一般的には友好的なTOB
というような良い方をしていて、買収することに対して対象会社の人たちもハッピーであるという状態を作る方がいろいろスムーズに運ぶ。 

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ちょっと長くなってしまったのでこの辺で終わりにしようと思うが、このように、自分の会社がベンチャーであっても、一般企業であっても次の成長をするために必要な要素を自社で用意できない場合、意外に大企業の事業をいろいろ調査してみて当たってみると、買収して自社のプラットフォームにすることができるということについて書いてみた。

ベンチャーの場合は自社の資源ではなかなか大きく事業を発展させられない場合、そして一般企業であれば新事業をやりたいが自社ではなかなか作れない場合、大企業を調査対象に入れた方が良い場合も多い。

上記のように全体を買うこともできるかもしれないし、大企業から一部の事業を譲ってもらえる可能性だってある。

自分の会社の事業を伸ばすために大企業から事業を吸収して、自社の事業と掛け合わせることで大きく成長させられる。そんな自社の未来について考えてみると発想が広がるよという話でした。

keiky.


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