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「誰が何を知っているかを知ることの大切さ」 ートランザクティブメモリーシステムー

社内で人脈が広い人というのはどの会社にもいる。悪い意味ではなくて、何かやるべきことが起きたり、課題解決をするときに誰に聞けばよいかわかっていたり、あえて正攻法に正面から確認せず、裏から手を回して本質をつかみにいけるような人というのはいるものだ。

その本人が受け入れられる特性というのも影響しているが、そもそも誰が何を知っているかということを知っておくというのが実はイノベーションの世界でも大切であるという学術分野があったりするくらい重要だ。

今日はそんな機会学習にまつわるちょっとした話。

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たとえばある組織で一斉に全員が同じことを勉強するのと、色々な分野のことをそれぞれバラバラに勉強するとどちらのほうが組織としてクリエイティブかと考えてみるとどうだろう。

全員同じことを一斉に勉強するというのは大切な場合もあるが、もしそれだけだとすると同じことしか全員できないということになってしまう。その一つのことが「特にできるひと」と「あまりできない」人という形で能力差が現れるくらいで、組織としては学びは1つの分野に限られてしまう。

一方で、いろいろなことをいろいろなひとがバラバラに学ぶとしたらどうだろう。学んだ人が特別優秀になれるかは別の問題としてあるが、組織としては学びの幅が確実に広がるようなイメージがもてるのではないだろうか。

たとえば少数のチーム分けしてバラバラのことを各チームに学ばせれば多少の個人の能力的な差は少数のチームでバラつきを吸収できるし、組織としても色々な多面的な学びを体得することができる。

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こういった考え方はトランザクティブ・メモリー・システムと言われていて、「組織学習」という分野の重要なキーワードとなっている。トランザクティブというのは「相互作用」とういう意味があるので、「相互に作用する記憶を組織でもつような仕組み」と理解することができる。

この研究は80年代にアメリカの社会心理学者であるウェグナーさんという方が考えた概念で、「何を知っているか」ではなく「誰が何を知っているか」ということが組織で共有されている状態がいかに大きな効果を生むかということを教えてくれる。

組織設計や人材育成などを検討するときにもこの考え方は有効で、組織全体として学びを深めていくにはどういう仕掛けをつくっていけばよいか?ということを考えるときのヒントになる。イノベーションを会社におこしたい!と思っているとき、新たな発想がうまれるような環境を作りたいと思っているときに組織学習について考えて、トランザクティブ・メモリー・システムという考え方を取り入れると強い会社にうまれ変わらせられることができるかもしれない。

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組織学習の観点から、「誰が何をしっている」ということを共有しておくということが大切だとすれば、組織におけるダイバーシティというのはとても重要ということも言える。

だいたいぼくのような昔ながらの会社で働いていると同質であること、他の人と外れないことに優先順位がきてしまうことでみんな同じものを学び同じ経験をすることを重視してしまう傾向がある。

ぼくは意識的に自分の希少性をあげるために同質性は狙わずに自分が活かせる分野を磨くことを意識して働いてきた結果、ある面では重宝されるスペシャリスト的な存在にはなれた。一方で同質性を求めるような社内のグループや社員からするとちょっとアウトローな感じの存在でもあるのも事実だ。

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そんなぼくが何か自分の専門分野を見つけて学びを深めようとすると、他の部分は他の人に頼らざるを得なくなる。データをとるなら誰々、技術的なことを聞くなら誰々、といった具合に「誰が何を知っているか」ということを知っておかないと、自分がそれらの仕事をやるハメになってしまう。

その分野は当然自分は得意ではないのだからストレスだし、時間もかかるし効率が悪い。何か自分を活かせる分野を磨くには、そういった他の人の強みや特徴を把握して依頼できる環境を作る必要があったので、社内で色々な人の人脈を広げる一方、自分が何かの分野を深める環境を意識的に作ってきた経緯がある。

このように、「誰が何を知っている」という状態を組織で作り上げるには、「自分も何かを知っている人になる必要がある」という考えがとても大切になる。何かを知っている人は、他の何かを知っている人には専門外のところは頼ろうとする。そうやって組織としての幅を広げていくことができるのだ。

そう考えると「単に誰が何を知っているか」を知っているだけでは不十分で、社員それぞれが「何かを知っている人」になることで組織が活発になっていくとぼくは考えている。

一人が知れることには限界があるということを前提におくと、知をいかに共有するか?という重要性を組織学習に関する本だったり、その中核をなすトランザクティブ・メモリー・システムという概念は教えてくれる。


自分が何かを知っている人になること。そして他の誰が何を知っているかを積極的に知っておくようにすること。

この二つを意識するだけでも組織というのは深みがでるのだ。

Keiky.


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