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2019年6月 アリム

シリアの状況はいいよ。チェックポイントの数も減ってきたし。東グータに行くのが、少し大変かな。でも前よりはましになった。あそこは移動の制限があるけれど、ものも入ってきている。爆撃がなくなった。1年前より、だいぶシリアの状況はよくなったよ。

でも、今度は経済戦争(Economic War)だ。アメリカの経済制裁のおかげで、シリア国内の経済はかなり悪い。シリアポンドの価値が下落している。いまはもう600シリアポンドだ。こんなに価値が下がっているのは、紛争が始まってからいままで、ずっとなかった。中央銀行は、434シリアポンドと固定しているけど、実際の市場は違う。

米ドル紙幣が不足しているが、企業らは米ドルで支払うことを好む。だから、米ドルの需要があるのに、圧倒的に米ドル紙幣が不足しているんだ。例えば、1,000ドルシリアへ送金するとするだろう。そうすると自分は30%、損をする。銀行と市場とで、レートが違うからね。シリアはなんでも外から輸入しなくちゃならない。送金も中央銀行を通らなくちゃならない。でも市場のレートと中央銀行との差が大きすぎる。おかげで自分たちばかりが損をする。支援もそうだよね。事業のお金を、中央銀行通して、シリア国内に送金しなくちゃいけないんだから。

自分の店を持っただろう。そこでは米ドルを使っている。シリアでは米ドルは使用できない。でも、みんな使っている。米ドルを持つことを好む。政府も暗黙の了解だ。

結局、苦しむのは市民なんだ。失業率は80%って、最新の統計局のデータが言っていた。トランプはおかしい(He is crazy)。反アサドを理由に経済制裁を課して、何も考えていない。シリアの人々が苦しむだけだ。権力者は、ゴージャスな生活ができる。

今まではロシアが財政支援を、イランが燃料支援をしていたけど、経済制裁で状況は苦しい。燃料不足?スマートカードを取り入れてからは、良くなった。カードで配給制限をできるからね。

(別の友人は、これでレバノンは、シリアから違法の燃料輸入ができなくなったと言った。シリア自体が米国による対イラン経済制裁で燃料不足に陥っているためだ。違法の燃料輸入してたの?と聞くと、レバノンに合法なものってある?と、笑いながら聞かれた)

アメリカは、アサド政権に投資をする企業に制裁を課すことを取り決めた。でも外からの投資がなければ、結局苦しむのは市民なのに。イランもそうだ。いまは、みんな、経済に疲れている。

ブラジルの滞在ステータスをとるために、1年に1回、帰らなくちゃならない。もともとは子どものため。彼が生まれたときに、シリア以外のパスポートを持っていたほうがいいから。いまはトルコの滞在ステータスも取ろうとしているところ。住所も届けている。でも、存在しない。いや、同じところにいろんな人が住んでいる。そうそう、そういうビジネスだね。トルコ政府は黙認している。結局、トルコにお金が落ちるからね。

自分の奥さんはXXX人(※シリア人ではない)だって、知っているだろう?彼女はもうずっと、故郷に帰ってない。自分と結婚して、ほら、シリアっていうなんとも素敵なパスポートをもらったから(笑)ビザを申請しなくちゃならない。けれど、いまの時期パスポートを申請のためにずっと預けておくのは怖いから、帰らないってさ。

明日の朝、妹が帰ってくるんだ。自分が結婚してからだから、もう5年、ずっとシリア国外にいる。今まで一度も帰ってこなかったのに、今回は帰ってくるって。なんでかは、分からない。自分は止めろって言ったんだ。もう5年も住んで、第三国で滞在許可書が取れるかもしれないのに、いまシリアに帰ったら、そのことでだめになるかもしれない。けど、帰ってくるってさ。

(写真 レバノン・ベイルート 2019年 筆者撮影)


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