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GSA Design Innovationコースのカリキュラム、印象に残ったトピックについて

*写真はアクティビティで行った公園にいたHighand Cowの写真です。

イギリスのグラスゴーにデザイン留学中の大倉です。この記事ではGSAのDesign Innovation and Service Designのコースの最初の2週間で行ったこと、そして印象に残ったトピックについて書きます。デザイン留学に興味がある皆様、そしてGSAに興味がある皆様のお役に立てれば幸いです。

カリキュラムについて

GSAのDesign Innovationのコースは3学期制で、最初の学期はInnovation School全体での授業になります。Innovation SchoolにはService Designの他に、Citizenship, Interaction Design, Environmental Design, Collaborative Creativityがあります。またUniversity of GlasgowのMaster of Scienceのコースを受けている学生さんもInnovation Schoolの授業の一部に参加しています。また、選んだコースによってはGlasgowではなくForresキャンパスで授業を受けます。(冬に開催されるWinter Schoolでは、グラスゴーの学生もForresキャンパスに行くようです!)

最初の学期はリサーチ手法の基礎を学び、スタジオの授業でそれをアウトプットしていきます。リサーチ手法の授業では座学とゲストスピーカーの授業があり、実際のビジネスの場でどのようにデザインの手法が使われているのかを学んでいきます。 課題や宿題はありますが、必須の宿題は少ないため、基本的には推薦図書の中で気になるものを自分で本を読んだり、クラスメートとディスカッションをしたりして学んでいってくださいというスタイルです。

印象に残った授業・トピック

続いて、最初の2週間の授業を受けた中で印象に残った話をピックアップします。

最初の課題はクラスメイトとグラスゴー観光

授業がスタートしてめちゃくちゃ忙しくなるのかと思いきや、まさかの1週目の課題はグラスゴー探索を通してクラスメートについて知ることでした。探索をすることで街について知ると共に、これから一緒にグループワークでやっていく人と信頼関係を築くことが目的です。 アクティビティの内容としては、授業で用意されたリストに記載された場所に行き、リストに記載されたアクティビティを行い、アクティビティの記録をInstagramで#gsatour2021というタグとともに公開するという内容でした。

...ということで、最初の2週間は電車や地下鉄に乗ったり、アフタヌーンティーに行ったり、ボタニックガーデンに行ったりしていました。

良いチームを作るための秘訣として、授業ではThe Culture Codeという本が紹介されていました。

この本によると、

Safety(安全性) Sharing Vulnerability(弱みの共有) Purpose(目的)

があることで良いチームが作れるそうです。お互いを知ることで、信頼関係ができ、互いに助け合うことができ、安心できるようになり、良いチームになっていく、ということのようです。

イノベーションとは?

最初の週には、イノベーションの定義についての授業がありました。イノベーションとは必ずしも新しいことではなく、既存のアイデアを別の文脈で使うこともイノベーションである、と言っていました。 そして、イノベーションとは必ずしも課題を解決することではないと強調していました。課題を解決しなくても、その状況についてより理解を深めることが重要なのです。そして、デザインの文脈でいうイノベーションとは、スキルではなくマインドセットであると話していました。
私たちはついスキルにや課題解決に走りがちです。また、成功させること、失敗しないことにも拘りがちです。教授は、成果を出すことよりデザインのプロセスで様々なことを試し、失敗を繰り返しながら、その物事についてより理解できることが大切だと何度も強調していました。成果や、目新しさというところで評価するわけではないのです。


GDPという指標について


もう一つ、印象に残っているのはGDPという指標についてのお話です。一昔前は、製造業(ものを作ること)に価値がありました。とにかく大量に作って、売り、市場のシェアを獲得していくことに価値があったので、GDPが主な経済の指標だったのです。つまり、お金が動くことがGDPの増加につながるので、とにかく「売る」ことが重視されたのです。そして、コストを下げて利益をあげること、そのために新しいものを作ることがイノベーションでした。しかし、製造業は自動化などにより賃金の低い仕事になっていきました。 今、経済の指標は変わってきています。「売る」ことに注力することは倫理的ではないと訴える人が増えているのです。例えば、人や環境に対して悪影響なものも、売れるという理由で製造され続けていました。しかし、経済の指標は「幸福度」や「生活の質」といったものに移ってきています。そして、昔重視されなかった「デザイン」そして「販売」というところに、経済の価値は移ってきているのです。デザインの考え方は必ずしも「売れる」ことに貢献するわけではないので、GDPを下げることもあるかもしれません。それでも、「人」を中心に考えているので新しい指標である「幸福度」や「生活の質」の向上には役立つものであると言えます。

今まで、GDPという指標についてはなんとなくしか理解をしていなかったのですが、この指標は「売れる」ことが良しとされた時代に経済指標とされた、という話を聞き、自分の中でかなりしっくり来ました。また、デザインが今後価値を持ってくる理由についてもこの話を聞いて納得がいきました。 この話を表した図がSmiling Carveなのですが、名前の可愛さとわかりやすさで印象に残っています。

バイアスと社会におけるポジションについて

バイアスについてのお話も興味深かったです。人間は誰しもバイアスを持っています。そのため、リサーチを行う前に自分が持っているバイアスに気づくこと、そして自分がリサーチを行う相手に与えるであろう印象(ポジションの違い)についても理解し、それがリサーチにどのような影響を与えるかも考慮することが大切だと言っていました。 リサーチにおいて大切なのは、人の行動を観察し、違いを知るというマインドセットです。このバイアスを少しでも減らすためには、相手をジャッジせず、相手を知りたいという好奇心をもち、理解しようとする姿勢をもつことが大事です。 また自分の立ち位置を理解するというのは、自分の人種、セクシュアリティ、言語、学歴、職歴...といったものがその人の属する社会の中でどのような位置になるのかを理解する、ということです。その立ち位置が似ていれば相手も話しやすいこともあります。一方で立場がかなり異なる場合、相手が話すことを躊躇することも考えられますが、新しい視点でその人の話を聞くこともできます。

この話を聞いた他のクラスメイトたちの中には、自分が白人であり、イギリスにおいては上の立場である、という点などに嫌悪感や罪悪感を覚えるという人もいました。私が個人的に思ったこととしては、自分やリサーチを行う相手の社会におけるポジションとその人の価値は無関係であるということです。社会に属している以上、自分のポジションにより得をしたり損をしたりすることもあるかと思います。ただ、そのポジションというのは自分がいる国や人の価値観によって変わってくるものです。その人の属する社会一般ではどう見られているかを知り、リサーチ相手にもその社会における印象は間接的に影響しているかもしれない、ということを頭に入れておくことだと私は理解しました。


あっという間の2週間でしたが、今後も印象に残ったアクティビティやトピックについて発信していきます。GSAやデザイン、イノベーションについての理解が少しでも深まれば嬉しいです。

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