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マネーフォワードでの私の10年間の振り返り

2024年の1月で、マネーフォワードに入社して10年が経ちました。
めちゃくちゃあっという間でびっくりしています。自分が同じ会社で10年間働いていることも、10年経っても熱量が高いままなことにもびっくりしています!笑

入社したとき20名だった会社は2000名を超える組織になり、ひとつしかなかったサービスは50以上になり、自分がデザインする対象はUIから組織や会社になり、悩んでいたデザイン浸透は、会社のValuesのひとつに「Design」が掲げられるようになりました。

大きな節目なので、この10年間自分がどんなことに悩み、どんなことにチャレンジしてきたのかを、振り返りました。(超長いです)

この記事にはこんな内容が書いてあります

一人目デザイナーとして飛び込んだスタートアップ

入社したのは2014年1月。今ほどスタートアップが市民権を得ている時代ではなく、スタートアップが生まれては消えてゆき、覚悟を決めて飛び込んでいくような場所でした。そんな中「世の中の役に立つような仕事がしたい」「大きな裁量権を持ってデザインしてみたい」というワクワク感に抗えずに、一人目のデザイナーとして入社しました。

募集要項に書いてある住所は恵比寿だったのですが、移転したばかりの田町のオフィスを面接場所に指定され、恵比寿で働く気になっていた私はちょっぴりがっかりしました笑。でも面接の帰り道に、札の辻の歩道橋(もう今はない)の上から東京タワーが見えて、なんかいいかも!と思ったのをよく覚えています。入社後も毎日深夜まで働く中で、帰り道に歩道橋の上からオレンジに輝く東京タワーは、無力な自分をとても奮い立たせてくれました。

入社してみると、まもなくリリースされるマネーフォワード クラウド会計のウェブサイトやバナーを作ってほしい、このプレスリリースの画像を作ってほしい、必要な要素はこれです!という依頼がたくさんきます。前職の制作会社でコンセプト提案から関わっていた自分にとっては、かなりのカルチャーショックです。会社としていまはプロダクトリリースが最優先だということは分かっていましたが、ものづくりの出発点にデザイナーが関われていないことが悲しかったし悔しかったし、デザイナーはもっと色んなことができるのに!と思っていました。

最初の半年ぐらいはこのギャップに苦しみ、毎週金曜日になると同僚と飲みながらピーピー言っていた気がします笑。

悩みながらも退職しなかったのは、一緒に働く仲間たちの存在でした。当時は毎朝全員で朝礼を行っていて、朝礼の最後に持ち回りで5分ほどのスピーチ(小話と呼ばれてた)を行っていました。最近ハマっていること、自分がいま取り組んでいる仕事、家族の紹介などなど、何でも話して良い時間です。この小話は働くみんなのやりたいことや価値観がとてもよく分かるもので、みんながユーザーのために社会のために価値を届けたいと本気で向き合っていることが伝わってきました。

そんなみんなをすっかり好きになってしまい、自分の中に(こんな素敵な仲間のために貢献したいな)という気持ちが生まれていきました。この小話の時間はマネーフォワードにおける「カルチャー浸透」の最初の施策だったんじゃないかなと思っています。

10年前の辻さんと!後ろに未来の夫もいます

できることを伝えるというマインドチェンジ

その後もしばらく、いろんなことが決まったあとでデザイン依頼されることに嘆き、デザイナーを重要な意思決定に巻き込んでもらえないことに悔しさを感じていました。当時は「デザイン経営」や「デザインシンキング」が話題になり、日本の企業にもCXOやCDOという役割が誕生し始めていました。「どうしたら見た目だけじゃない広義のデザインを理解してもらえるのか」「どうしたら出発点からデザイナーが関われるのか」「デザイン経営って一体何なのか」ということを延々と悩んでいた記憶があります。

そんなある日、ひとりの経営陣から「営業だってマーケだって同じことで悩んでる。被害者にならずに自分たちに何ができるのか、証明しないと伝わらないよ。」と言われます。売上をつくれないデザイナーは貢献していないと思われているんじゃないかと悶々としていたけれど、そうではなくて、みんなデザイナーと働いたことがないので何ができるのか知らないだけなんだ。これに気づくことができたのは大きかったなと思います。

そこからは、どうすればデザインが役に立つと思ってもらえるのか、どう経営に貢献できるのかという視点で考えられるようになりました💡


MVVC策定で「デザインの使い方」を知ってもらう

デザイナーが得意としている「本質を見つける」「ユーザーを理解する」「曖昧な概念を可視化する」こと。このスキルを活かして、プロダクトのコンセプトづくりや事業のビジョン策定などにデザイナーが関われるようになっていき、そんな時に舞い込んできたのが、辻さんからの「行動指針のカードをつくりたい」という依頼です。

この話を書くと3万文字ぐらいの記事になりそうなので、MVVC(ミッション/ビジョン/バリューズ/カルチャー)策定プロジェクトについては他の記事を読んでいただければと思います笑!

きっかけは「カードのデザイン依頼」で、私自身も、おそらく依頼した辻さんも、このプロジェクトが「会社の軸となる価値観」をつくるものになるとは思っていませんでした。プロジェクトを進めていくうちに(これは会社のすべてにおけるコンセプトみたいなもので、デザインはこういう形でも経営に関わっていけるのかもしれない)と思うようになります。

初めて全社で「マネーフォワードらしさ」に向き合い、経営陣のみんなと半年間ディスカッションを重ねたことは、今でも会社の財産になっていると感じます。そして、このプロジェクトに関わったことがきっかけで、経営陣がデザインを広い意味で捉えてくれるようになり、デザインを経営にどう使うと良いかという発見につながったんじゃないかと思っています。

このnoteの中で辻さんが「あのとき、カードの制作を金井さんにお願いしていなかったら、今のような会社にはなっていなかったのではないでしょうか。」と書いてくれているのですが、私ももっとゴリゴリの会社だったんじゃないかなと思います笑。この言葉はすごく嬉しくて、自分の中で大切にしています!

今でも辻さんがすごいと思うのは、あの時生意気に「この行動指針はマネーフォワードらしくない気がします」と言った自分に「じゃあみんなで案を作ってみてよ」と任せてくれたことです。こんな大事なことを自分がやっていいの??とびっくりしたし(見事に一度失敗するわけですが)、その結果デザインの重要性を理解して経営に取り入れていく姿を見て、私の会社愛はさらに高まっていきました。

ビジョンを伝えられずまわりを巻き込めない自分に苦しむ

MVVC策定は自分にとっても大きなターニングポイントになりました。とはいえ順調だったかというとそうでもなく、浸透の重要性や自分の役割を社内で理解してもらうには3年近くかかったんじゃないかと思います。

ミッションやカルチャーにデザイナーが関わるのはめずらしかったこと。一般的にはまだまだ広義の意味でのデザインが浸透していなかったこと。そして会社のフェーズとしては、とにかく目の前のプロダクトをすごいスピードで作っていくという優先順位が高かったこと。これらの背景もあって、社内では自分がMVVC浸透に関わることに否定的な声も多くありました。

当時はデザインチームの責任者だったこともあり、プロダクトよりもMVVC浸透に比重を置いていることへのデザイナーからの反発は強く、360°評価で「経営陣ばかり見て仕事をしている」と書かれたことも。みんなのために、デザイナーという職種のプレゼンスを高めるために取り組んでいるのに、なんで伝わらないんだろう...と悩み、心を閉ざし、信頼関係は失われ、みんなとの関係は悪化していきました。

今だったらなぜ必要だと思っているのかを繰り返し語り、みんなを巻き込みながら同じゴールに向かう努力をすると思いますが、マネジメント経験に乏しい自分は(全然みんなが分かってくれない)という他責思考になってしまっていました。

自分自身も「会社にとってMVVC浸透が絶対に必要なはずだ」「デザインの力を活かせるはずだ」という確信はありながらも、世の中の事例も多くなく、浸透を進めた先にどう良い効果が出るのか分からず、自信を持ってみんなに伝えることが出来ませんでした。全部自分がやらなきゃいけないと背負いこんでしまって、不安や悩みもまわりに伝えて頼っていいんだと思えていなかったのも失敗のひとつだったと思っています。

結果的にチームは解体し、自信を失い、そこから数年はもう二度とマネジメントをやるもんか!と思っていました。

オフィス移転プロジェクトで見つけた「Let’s make it!」

まわりを「巻き込む」重要性を理解したのは、2018年の本社オフィス移転プロジェクトです。MVVC浸透はまだ道半ばで、肯定的に捉えてくれているメンバーばかりではない中で、全社に向けて何かを発信することには勇気が必要でした。

何かを表明するとまた厳しい意見を言われるんじゃないか...。そんな気持ちになってしまっていたのですが、オフィス移転を一緒に進めたプロジェクトマネージャーが、みんなの意見を聞きながら色んな情報を積極的に開示していて、そのやり方がとてもうまくいっているように見えました。それを見て、自分は突っ込まれるのが怖くてクローズドにしてしまい、それが不信感につながるんだなということに気づきます。(このへん数年は反省ばかりしています笑)

そこで自分も、オフィスをつくっていく過程をすべてオープンにして、コンセプト作りから社内を巻き込んでいくことにチャレンジしました。

このときのオフィスのデザインコンセプトは「Let’s make it!」。
全社にアンケートを実施し、デザイナーのみんなやパートナーのデザイン会社に協力してもらいながら「世の中を巻き込みながら、みんなで創り上げていこう」という、私たちが大事にしたい価値観を抽出することができました。そして、コンセプトの通りみんなで創りあげていくために、竣工前のまっさらなオフィスをみんなで見学したり、会議室の名前を公募してみんなで投票したり、ひとつひとつの柱をみんなで塗り上げていきました。

みんなでオフィスを共創することができて、大きな学びを得たプロジェクトです。きれいな新築ビルだったという外的要因もありますが、みんなが構築プロセスに関与できたことへの満足度も高かったと思っています。

このときのコンセプト「Let’s make it!」は、その後会社の採用メッセージとして使われ、マネーフォワード初の海外開発拠点 Money Forward Vietnamの拠点コンセプトになり、今ではマネーフォワードのValuesのひとつでもいいんじゃないかと言われるぐらい、全社で大切にされる概念に昇華していきました。

これは、プロセスに巻き込むことで深く浸透できたというのもありますが、みんなでマネーフォワードらしさを考え、抽出できた言葉だったからなのではないかと思っています。

新たな価値観を手に入れたベトナムでのプロジェクト

マネーフォワードが全国に開発拠点を広げていくタイミングだったこともあり、その後一年は京都、大阪、福岡など立て続けにオフィスづくりに関わりました。その流れで、会社として初の試みである、ベトナムでの海外拠点の立ち上げ(のオフィスづくり)にアサインされます。

「海外に拠点をつくる」「そこでオフィスをつくる」というのは、それまでの国内でのプロジェクトとは全然違うテーマに向き合わなければいけませんでした。特に、「ベトナムにおけるマネーフォワードの在り方とは何か」ということを深く思考するプロジェクトになりました。

今も拠点のオフィスをつくるときに大事にしているのは、拠点を担っていくメンバー同士でどういう拠点にしていきたいのかを開示しあうことです。どの拠点でもマネーフォワードのMVVCが軸になりますが、その拠点ごとのカラーは異なります。どんなカラーにしていくのかを、その拠点で働くみんなと言語化してすり合わせていくのがこのプロセスです。

「ベトナムでどういう存在になっていくのか」を、拠点立ち上げメンバーで何度も何度も会話し、この時の経験が今も私たちの「海外開発拠点」の考え方の礎になっています。このあたりは詳しくはこちらの記事を読んでいただけたらと思います!

ベトナムでのプロジェクトに関わったことで、オフィスづくりを通して拠点のカルチャー構築をしていると気づけたこと、MVVCはそのままでは伝わらずにその国の文化や価値観などのコンテクストに沿って話す必要があることなど、多くの学びがありました。

また、それまであまり海外に興味がなかった自分が、知らない価値観に触れることの楽しさを知る大きなきっかけになりました。何もかもが思い通りにいかなくて、でもそれをみんな当たり前だと思っている。そんな状況を楽しめるようになり、「こうしなきゃいけない」という固定観念から解放されて自由に思考できるようになった気がします。ホーチミンにはプライベートも含めると10回以上訪れ、親や夫も連れて行き笑、私にとってとても大切な場所になっています。

Money Forward Vietnamのオープニングパーティー

想いを発信する文化をつくる社内報

オフィスの次に取り組んだテーマは「社内報」です。
辻さんは、社員がどんどん増え、全国、そしてアジアに拠点が広がる中で「自分の言葉や熱量が届きづらくなっているのではないか」という課題感を持っていました。社内ヒアリングを重ねていくと、「知らない人たちが増えていくと本音を出しづらい」「もっと相互理解をしたい」「もっと熱い話もしたい」という声がたくさん聞こえてきました。

会社のメッセージが刺さっていないとしたら、仲間同士の顔が見えづらくなり、会社への興味が薄れている状態になってしまっているということなのでは?と感じ、働くみんなのことがよくわかる社内報を立ち上げることに。

みんなのことを深く知ってもらうために、単なる出来事ではなく「想いや考えを知ってもらう」ことを大切にして記事を書きまくり、記事を書きたい人には書くのが得意な人たちでレクチャーを行って、書き手を増やしていきました。

シャイな人が多いマネーフォワードにおいて、それまで「会社や仕事への想いを語る」シーンはあまり多くありませんでした。でも、元々はミッションに共感して入社している方ばかりなので、熱い記事ほど社内で拡散され、たくさんの反響があり、それを見て自分の仕事やチームのことを発信したいという人が増えていき、社内報がきっかけになって(熱く語ってもいいんだ🔥)という風土が生まれたのかなと思っています。

社内での評判も良く、「社内報を外にも発信してほしい」というリクエストをもらって、広報部と一緒にnote編集チームも立ち上げました。それまでは「社内向けならOK」と取材を受けてくれていた社員も、「これをnoteに出したい」「自分でも書いてみたい」と、どんどん発信することにオープンになっていく姿にワクワクしました!

結果的に、たくさんの社員がnoteで発信するようになり、それによって私たちのカルチャーが外に伝わるようになり、採用候補者の方々に向けても会社理解を深めていただく流れを作ることができたなと思っています。

私自身、かつては発信や登壇がものすごく苦手でした。自分の想いを伝えきることができなかった失敗経験もあって、自分の考えを発信することに抵抗感があったのです。それが社内報のおかげで「会社のことやみんなのことならこんなに発信できるんだ」と気付きます。さらに社内報で取材したみんなが、自分の想いを発信することで自信が生まれたり、次のプロジェクトにつながったりする良い効果をみているうちに、自分の想いも発信したくなり、今ではすっかり苦手意識がなくなりました。会社の魅力が伝わることはもちろん、色んな人と知り合えたり、登壇や取材のきっかけに繋がったりしたので、発信するメリットは大きいなと思っています!

VP of Cultureを担うという決意

そして2020年、コロナのパンデミックが起こります。
日本中が不安に包まれている中で、「このような時こそミッションに立ち返って、世の中のために自分たちが出来ることを考えよう」というプロジェクトが生まれ、私の心も大きく動かされました。

ミッションを起点に、事業部や役割をこえて「自分たちは何ができるのか」とみんなで考えてアクションしていく。使命感と熱気が社内に満ちていて、まるで創業期のような雰囲気でした。ミッションに向かってみんなが共通の価値観を持って動けることの力強さを強烈に感じ、この時にはじめて「MVVCが浸透してきている」と実感することができました。

当時は社長室の「ひとりカルチャー芸人」みたいな感じで、人事や広報のみんなとプロジェクトベースで浸透施策を行っていました。でもこのコロナによるミッションプロジェクトで、やっぱりカルチャーは大事なんだ!これまでやってきたことはきっと間違ってなかったんだ!人が増えても、リモートワークになっても、失われちゃだめなんだ!と熱くなり、「People Forward」という人事 x Culture組織の立ち上げと、VP of Culture(カルチャー責任者)を担いたいと辻さんに提案しました。

もうひとつのきっかけは、辻さんから「まわりから何をやっているのか分かりやすくするために、役割を表す肩書をつけたら?」と言われたことです。自分の取り組んでいることをうまく言語化できず、自分はデザイナーと言えるんだろうかとモヤモヤした時期もあったのですが、VPoCを名乗ると決めて迷いがなくなったので、自分で自分のラベルを決めることは大事だったなと思っています。同時期にCDOにセルジオさんが就任し、ブランドとカルチャーは表裏一体で、両方をデザイナーが担っていることが自社の強みだと捉えてくれていたことも、大きな勇気になりました!

社員総会を憧れのプロジェクトにしたい

そんな背景で、2020年の年末にPeople Forward本部が立ち上がりました。人事組織の中で取り組んだことは色々あるのですが、社員総会を全社プロジェクトにアップデートできたのは良い取り組みだったなと思っています。

コロナ禍でリモートワークになり、それまで全国から東京の会場にみんなが集まっていた総会がオンラインになり、そのタイミングで総会のプロジェクトメンバーとして関わったのですが、これがめちゃめちゃ大変でした!笑

通常業務がある中で総会に関わるだけでも大変で、そのうえ全社員が参加する大事なキックオフなのでクオリティ高くやりたいし、経営の思いを伝えるので責任も重たい、だけど少人数で気合と根性でやりきらないといけない...!それまでは参加者としてのほほんと参加していましたが、運営側にまわってみて、先人たちへの感謝とともに、これはかなりハードだなと感じました。

総会は、マネーフォワードらしさが詰まった「マネーフォワードグループのメンバーで良かった!」という誇りを感じてもらえる場にしたい。そのためには、色んな人に関わってもらえるような仕組みにしたいけど、疲弊する運営メンバーを見ていたら誰も関わりたいと思わないだろうなと感じました。

・・・だったらみんなが関わりたいと思える憧れのプロジェクトにするところから考えてみればいいんじゃないか💡と思いついて、マネーフォワード全グループから公募を行うスタイルに。有志のお手伝いではなく評価に反映されること、目的を持ったメンバーが集まる成長の場であること、演出や企画からみんなで考えていけること、そして運営メンバーが黒子ではなくちゃんとスポットライトが当たること。運営メンバーが「関わってみたい」とワクワクするようなインセンティブを設計して、募集を行いました。

最初はこんな少人数だったけど
今ではこんな大きなプロジェクトに

結果的に、今では毎回40人をこえるメンバーが関わる大きなプロジェクトになりました。運営メンバーから半期MVPの受賞者が何名も生まれ、そんなメンバーと一緒に働きたいとさらに熱量が高いメンバーが集まり、ホットな人脈がつくれる場になっています。また総会をつくりあげる過程で「マネーフォワードらしいかどうか」という観点でジャッジしていくので、みんながカルチャーへの解像度を高めて自組織に持ち帰っていってくれるという、カルチャーを育むキャンプのような体験になっています。

大規模プロジェクトになったことでの課題も色々と生まれてきていますが、今後のカルチャー浸透を支える仕組みのひとつをつくることができました。

スポーツとの出会いで広がった「社会との関係性」という視点

2020年末のPeople Forwardの立ち上げと同じ時期に、マネーフォワードは横浜F・マリノスとのパートナーシップを発表しました。

この締結発表がびっくりするぐらいSNSで盛り上がり、たくさんのファン・サポーターの方がパートナー締結を喜んでくださり、社員の投稿にもたくさんコメントをいただきました。そして発表の翌日には冠試合「マネーフォワードDAY」が開催され、スタジアムで「新しい家族 MoneyForwardと共に もう一踏ん張り 前へ。もっと前へ。」という横断幕が出されているのを目にして、さらに驚くことになります。締結の翌日にこんなサプライズまで用意してくれているなんて...とその歓迎に感激し、私たちが大事にしている「みんなで創り上げるLet’s make it!の思想」との共通点を感じました。

感激してしまった横断幕

そこから担当者に名乗り出て今に至るのですが、このマリノスとの出会いは自分の視野を大きく広げるきっかけになりました。

ひとつは「自分たちのカルチャーはそのままパートナーシップに活かされる」という気付きです。

たくさんの社員が「パートナーシップを盛り上げよう」と関わることや、自社のPRだけではなくクラブや選手を後押しすることや、サポーターのみなさんを巻き込んで一緒に企画をつくりあげていくこと。自分たちのカルチャーに沿って行うパートナーシップを見て、マリノスに関わるみなさん、ひいてはサッカーやスポーツに関わるみなさんがとても好意的に反応してくださって、「マネーフォワードさんて素敵な会社ですね」と言ってくださることにとても驚きました。なぜなら、何か狙ってアクションしたというよりも、自分たちにとってはとても自然なことだったからです。(最初の頃はなぜ注目されるのか理解できずに、色んな人に何を素敵だって言ってくれるのか、これまでと何が違うのかを聞いてまわっていました笑)

カルチャーは「社内に深く浸透することで一貫した行動となり、それが一貫した世界観をつくり、外に染み出していくもの」と考えていましたが、まさにその効果を感じることができたのがこのパートナーシップでした。もちろんパートナー企業は総じて好意的に応援していただけるという、サポーターカルチャーも深く関係していると思っていますが、それを超えて自分たちの想いを受け取ってくださっていて、深い共感の関係を築けているのではないかと思っています。

サポーターのみなさんとさまざまな形で交流しています

もうひとつは、ステークホルダーとの関係性という視点を持てたことです。

パートナーシップは正解がなく、費用対効果を証明するのが難しいものだと感じています。単に認知や露出効果を狙うのであれば数字換算ができますが、同じ金額を払うのであれば、広く訴求できるCMなどの広告に投資しようという判断になってしまう可能性があります。であれば、露出効果だけに依存しない、マネーフォワードにおける「パートナーシップの正解」を見つけ出す必要があります。

自分たちの持つアセットを活かした、リーグやクラブのDX推進、選手を起用したサービスのプロモーション、会社のみんなと仕事を超えて接点を生み出せる場づくり、選手のセカンドキャリアを一緒に考える「人生をもっと前へ」な取り組み、ファンサポーターのみなさんやパートナー企業のみなさんと一緒に共創し、自分たちらしさを知っていただくイベント。施策のひとつひとつをどういう目的でやるのか、何に紐づけるのか、これは自分たちらしいのか、正解になりうるものなのか、悩みながらチームで色んなことを試してきました。

これまでは自分たちの大事にする価値観(MVVC)を、いろんな施策や体験で社内へと浸透させていくという、矢印が社内に向いている活動を行ってきました。でもパートナーシップで関わるのはマリノスを取り巻くあらゆるステークホルダーの方々です。

あらゆるステークホルダーとどういう関係を築き、何がお互いにとってハッピーな関わり方なのか。そんなことを考える中で、視点が「自社」から「自社とステークホルダーとの関係性」に広がったと感じています。そしてステークホルダーとの関係を考える中で、自分たちはサッカー業界や地域、社会にどういう価値を提供できるのかというところに向き合うようになっていきました。ものすごく端折って書いているので、話が飛躍していて「突然どうした」という感じかもしれませんが(笑)自分にとっては世界が広がる大きな変化だったなと思っています。

一度もサッカーを観戦したことがなかったのに、今では社内で「マリノスが好きで公私混同している人」みたいになるほど夢中になっています。公私混同している部分もあるかもしれませんが笑、夢中になることで初めて本気で取り組めると思っているし、「マネーフォワードらしいパートナーシップ」の正解を見つけ、スポーツへのパートナーシップの新しいカタチを示して、愛するクラブやサッカー業界を盛り上げていきたいなと思っています。

7年ぶりのMVVCアップデート

2023年には、策定から7年ぶりにValuesとCultureのアップデートを行いました。元々世の中の流れや会社のフェーズに応じて見直していこうという話をしていましたが、従業員数が2000名を越え、外国籍メンバーが多く入社してくれるようになったことで、会社のフェーズの変化を感じて見直しすることを決めました。

最初の策定時も大変でしたが、社内が2000人をこえた中でのアップデートはまた違う大変さがありました。50名だった頃のように全員の意見を聞いてボトムアップで作っていくのはもう難しい人数です。それでも、みんなが大事にしてくれているValuesとCultureを「決まりました!」と決定事項として発表するのは違和感がありました。

どうしたらLet’s make itできるのか悩み、まさに今経営陣たちがどうしようと悩んでいる状態からみんなに知ってもらうのがいいんじゃないかと考えて、「なぜMVVCをアップデートしようと思っているのか」という社内セッションを行いました。辻さんや取締役のみなさんたちにざっくばらんに想いを語ってもらい、みんなの疑問やフィードバックに答えることで、アップデートする社内のムードを高めていけたのかなと思っています。

アップデートは辻さんとの対話をベースに、四半期ごとに実施される経営合宿に何度か持ち込みながら、経営陣を巻き込んでディスカッションをおこないました。その中で、CDOのセルジオさんやデザイナーの私からではなく、エンジニアやビジネスの役員たちから、「ValuesにDesignを入れたほうがいいんじゃないか」「Designはうちの競争優位性なんじゃないか」という意見が出たのは個人的にめちゃくちゃ胸アツでした!

会社として大事にする行動指針のひとつに「Tech & Design」という項目が入るなんて、10年前にあれだけ「デザインを理解してほしい」と悩んでいた自分はまったく想像できなかったなと思います。これは、これまで関わってくれたデザイナーひとりひとりが価値を生み出してきた成果だと思うので、心から誇りに思います✨

久しぶりに辻さんと長時間の対話を何度も行い、辻さんの熱い想いは昔と変わっていないけれど、見ている景色や感じている使命が7年前とは全然違うんだなというのを肌で感じて心が震えたのも良かったです!ちなみに無茶振りは変わっていませんでした笑。

さらなるマネーフォワードらしさをつくる

会社が大きくなり社会への責任が日に日に増していることや、私自身も「自社とステークホルダーの関係性」に視点が広がったことで、あらためてミッションがとても大事なものだと感じています。

社内に向けた企業文化の醸成だけではなく、「マネーフォワードは社会にどういう価値を提供していくのか」「マネーフォワードが社会とどういう関係を築いていくのか」というミッションに紐づく部分にもみんなで取り組んでいくために、昨年末にCorporate Identity推進室を立ち上げました。

Culture、Brand Experience、Sportsの3つのチームメンバーと一緒に、「マネーフォワードらしさ」を研ぎ澄ませながら、MVVCに沿った一貫した世界観を示し、社会からの期待と信頼を醸成していく部署です。壮大!

これまでもずっと「マネーフォワードらしい◯◯」を立ち上げることに関わってきました。マネーフォワードらしい行動指針やカルチャー、マネーフォワードらしいオフィス、マネーフォワードらしい社内報、マネーフォワードらしい社員総会、マネーフォワードらしい従業員体験、マネーフォワードらしいスポンサーシップ etc。どれも抽象度が高く正解が分かりづらいものですし、そこに労力を割くのは費用対効果が悪いと考える会社もたくさんあると思います。それでも、経営としてここに時間やリソースを投資してきたことは、今のマネーフォワードのゆるぎない軸を作っていると信じています。

そして、10年の節目で、今また経験したことがないテーマに向き合っていて、私のマネーフォワードでの人生の旅はまだまだ終わらなそうです。

さいごに

この10年で、色んなテーマに取り組み、たくさんの失敗と経験をして、デザイナーとしても人間としても大きく成長できました。仕事だけではなく、夫や親友や仲間と出会い、サッカーという趣味を手に入れ、英語を学び....、マネーフォワードに入社したことで「自分の人生がもっと前に」進んでいるのは間違いありません。

あれほど苦手だったマネジメントですが、ビジョンを語り、みんなを巻き込む努力を行うことで、共感してくれるメンバーがたくさん仲間になってくれています。まだまだうまくできているとは思えていませんが、みんなに向き合いながら、自分のポンコツな部分や悩みや失敗をさらけ出しながら、弱みと強みを補い合いながら、みんなと一緒にゴールに向かうことの楽しさを日々感じています。ひとりじゃないって、なんて勇気がわいてくるんだ〜。

あらためて、10年間、大好きだと思える会社で働けているのは幸せなことだなと思っています。スタートアップやベンチャーは人の入れ替わりが激しく、ひとつの会社で長く働くというのは今の時代珍しくなっているかもしれません。でも、デザインやカルチャーの浸透など、大きなテーマと向き合うというのはそれなりに時間がかかるものだと思っています。過去の取り組みが数年後に成果になり、「ああ...こういうことだったんだ」と点と点がつながる瞬間が何度もあって、これは長く働いているから感じられるご褒美みたいなものかもなと思っています。

これからも自分の信念を貫きながら、マネーフォワードが自分も含めた関わる人たちにとって誇らしい会社であり続けられるように貢献していきたいなと思っています!私の人生ももっともっと前へ★

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