未来の翼

主婦です。美味しいものを食べることと、読書が趣味です。

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最近の記事

漫画「政談」荻生徂徠原作 近藤たかし氏著を読んで

先日、本居宣長の「うい山ぶみ」を読み、明治の天皇制軍事帝国主義の思想的下地がそこに流れていることを知り、忌避感を覚えた。そこで、宣長の論敵は誰かと探したら荻生徂徠が上がって来たので簡単な徂徠の思想を知っておきたいと思い「政談」という電子書籍を紐解いた。 そうしたら、なんと漫画であり「原作:荻生徂徠」になっているけれど主役はロックバンドのボーカルである。そして、時代と背景は弱体化した現代の日本である。行き詰まった日本の窮状を打開しようと政治家が奮闘するが解決の糸口が見いだせず

    • 小説「パチンコ」ミン・ジン・リー を読んで

      この物語は、1910年日本による韓国併合の年から始まるある朝鮮/韓国人の家族の物語である。それは、釜山、済州島、平壌、大阪、横浜、東京、長野が舞台の家族四代にわたる壮大な物語だ。 この100年前の朝鮮と日本の関係は、現在の日本とアメリカの関係と相似形だ。 例えば、無能な政治家や無責任な支配階級が国を宗主国に売り払う。 例えば、正直な朝鮮人が(重税と接収により)日々財産を失っている。(現在、円ドルの為替相場で超円安により、国富が海外に流出している) 日本語の読み書きができなく

      • 映画「花束みたいな恋をした」土井裕泰監督作品を観て

        麦くん(菅田将暉)は価値観がピッタリの少女絹ちゃん(有村架純)と出会った。感じること、考えること、読む本、観る映画、遊ぶゲームまでそっくり同じだった。一緒に居酒屋に行けば、履いていたスニーカーがお揃いだったり、恋に落ちるまで時間はかからなかった。 二人は親の反対を押し切って一緒に住むことにした。調布駅から歩いて三十分の多摩川に面した部屋だった。そこで二人は桃源郷のような時を過ごした。 大学を卒業し、生活費を手に入れるために、絹ちゃんは事務を、麦くんは物流関係の営業をするこ

        • 「歴史の話 日本史を問い直す」網野善彦氏、鶴見俊輔氏対談 を読んで

          「日本」とは、七世紀以降、小帝国を志向し、東北・南九州をふくむ周囲の地域に対して侵略によって版図をひろげることにつとめた、いわゆる「律令国家」の確立したとき、その王の称号「天皇」とセットで定められた国号であることは、研究者の多くにほぼ認められた事実である。(網野) 狭義の日本の資本主義の萌芽は14世紀頃から見られるというような興味深い歴史が次々と繰り出されるが、私には「所謂日本史」の脱構築のような感じがした。 歴史学のみならずマルクス主義、民俗学、韓国・朝鮮文学、中国文学

        漫画「政談」荻生徂徠原作 近藤たかし氏著を読んで

          「太平洋戦争への道」半藤一利、保阪正康、加藤陽子鼎談を読んで

          鼎談の要所をまとめ一部感想を述べた。 満州事変に関して国際連盟のリットンが報告書を書いて、中国、日本の和解案を示した。だが、中国も日本も双方不満を持った。 報告書では、日本の経済的権益に対して中国の国民政府が組織的ボイコットをやったと認めています。ただ、日本側が、満州族の民族自決によってつくられたと主張する満州国は、日本の官僚と軍隊の援助なしにはできなかったはずだとの調査団の側の判断を明らかにしています。 1931年の鉄道爆破(柳条湖事件)に対する関東軍の反撃は、自衛権

          「太平洋戦争への道」半藤一利、保阪正康、加藤陽子鼎談を読んで

          映画「羊たちの沈黙」を観て

          ジョナサン・デミ監督 クラリス:ジョディ・フォスター レクター博士:アンソニー・ホプキンス ここには、常軌を逸した人間が2人出てくる。並外れた知能を持ち、カニバリズムという罪を負った精神科医レクター博士と猟奇殺人鬼バッファロー・ビルだ。 そして猟奇殺人の解決に白羽の矢が立ったのがFBI捜査官実習生のクラリスだった。 高い知能を持った同士のためかレクター博士とクラリスは奇妙な魂の交流のようなものを介して、レクター博士は自由を、クラリスは猟奇殺人事件の解決をかけて、お互

          映画「羊たちの沈黙」を観て

          映画「イコライザー」「イコライザー2」「イコライザー ファイナル」を観て

          CIAを退任し、死んだことになっているロバート(デンゼル・ワシントン)は、世界中の市井の民を苦しめる犯罪組織と対峙して民を救う、という筋書きは世界を股にかける水戸黄門のようである。 ただ、ロバートは恰もパソコンゲーム「ディアブロ」の戦士のように容赦なく激しいバトルを繰り広げ、犯罪組織の中枢に迫って行く。 ピューリタン的几帳面さを忘れない生活態度は見習わなければならないと思う反面、その几帳面さで相手を殺していくシーンは何度も中断しなければならない程、目を覆いたくなる惨状が繰

          映画「イコライザー」「イコライザー2」「イコライザー ファイナル」を観て

          「浴槽」ジャン・フィリップ・トゥーサンを読んで

          「されどわれらが日々ーー」と並行して読んでいた。 引きこもりのパリジャンの話かと思っていたら、「されどわれらが日々ーー」と同じく青春のさなかにあり、死すべき人間の長い猶予期間をもて余すという物語だ。 「浴槽」の主人公は、自分がいずれ死ぬことで、死刑囚の死刑執行までの猶予期間のようでありながらそれは長すぎると感じている。何事にも意味を見出だせない。「どうせ死んでしまうのだから」 彼はバスタブで一日の大半を本を読んで過ごす。 崇高なき日常を生きる 大文字の他者の不在 自由

          「浴槽」ジャン・フィリップ・トゥーサンを読んで

          アマゾンプライムビデオでG.W中の特別企画で「ゴジラ-1.0」が観れます。 ゴジラは日本人にとって破壊神なのでしょうか。 恐怖とともに畏怖を、そしてその死には崇高を感じさせる何かがあります。 あとはネタバレになるので控えます。

          アマゾンプライムビデオでG.W中の特別企画で「ゴジラ-1.0」が観れます。 ゴジラは日本人にとって破壊神なのでしょうか。 恐怖とともに畏怖を、そしてその死には崇高を感じさせる何かがあります。 あとはネタバレになるので控えます。

          「されどわれらが日々――」柴田翔著を読んで

          柴田翔の滋味あふれる文章に私はかつて気づかなかったのだ。「そうね、そういうこともあるわよね」という自分の同棲時代を回顧するような感想しか十数年前には抱けなかった。青春時代の何たるか、学生運動の何たるかを知らず、物語の解像度が低かったのだ。その間どういう新たな経験をしたというわけでもなくただ馬齢を重ねただけの私に彼の文章の豊かさが染み渡るのである。 大江健三郎の帯文はこう書いている。「そして今日の日本文学は この真摯な秀作を必要とするばかりか この作品に別れを告げ 現実と未来

          「されどわれらが日々――」柴田翔著を読んで

          「されどわれらが日々-」柴田翔著を読みながら回想した。

          それは、1997~8年の出来事だったと思う。 夫が私の単身赴任先に遊びに来て夜になった。自衛隊の基地のあるその町の古本屋の店先で夫はハンナ・アーレントを選んで買い求めた。そのときの店主の眼が「されどわれらが日々-」の古本屋の店主の佇まいとそっくりだったのだ。一言「ハンナ・アーレント」と言って夫と私の顔を眼鏡越しに一瞥した。それ以上何も言わず、顔も何も語っていなかった。 自衛隊の基地の町とハンナ・アーレントのそぐわなさは、基地の町と古本屋のそぐわなさにもつながっていた。異世

          「されどわれらが日々-」柴田翔著を読みながら回想した。

          土砂降りでも構わず飛んでいく その力が欲しかった 人が宣う地獄の先にこそ わたしは春を見る 繋がれていた縄を握りしめて しかと噛みちぎる 口の中はたと血が滲んで 空に唾を吐く 生まれた日からわたしでいたんだ 知らなかっただろ 米津玄師の「さよーならまたいつか!」の歌詞

          土砂降りでも構わず飛んでいく その力が欲しかった 人が宣う地獄の先にこそ わたしは春を見る 繋がれていた縄を握りしめて しかと噛みちぎる 口の中はたと血が滲んで 空に唾を吐く 生まれた日からわたしでいたんだ 知らなかっただろ 米津玄師の「さよーならまたいつか!」の歌詞

          このところ、心が温まるような投稿をしていないことに気づいた。 戦争は終わらないし、日本は円安で物価高が止まらないし、春だというのに心は浮き立たない。 せめて私生活は優しく暖かくありたいと思う。

          このところ、心が温まるような投稿をしていないことに気づいた。 戦争は終わらないし、日本は円安で物価高が止まらないし、春だというのに心は浮き立たない。 せめて私生活は優しく暖かくありたいと思う。

          雑誌「世界」5月号「ガザ攻撃はシオニズムに一貫した民族浄化政策である」早尾貴紀著をメモした(少し感想)

          (以下本文抜粋)〈10.7〉以降もおよそ半年にもわたり、世界の衆目を浴びながらも、なぜ大虐殺と大規模破壊が止められないのだろうか。逆に、このイスラエルの暴虐なガザ侵攻を、さらには占領そのものをいかに止めることができるのか。 この白人至上主義・ヨーロッパ中心主義は、自らを「進んだ文明」と位置づけることで優越性を訴え、外部を「遅れた野蛮」とみなし、その支配を正当化した。 ※(感想) 遅れた野蛮の人びとがなぜ支配されなければならないのか、理屈が分からない。「支配の正当化」?どこ

          雑誌「世界」5月号「ガザ攻撃はシオニズムに一貫した民族浄化政策である」早尾貴紀著をメモした(少し感想)

          保阪正康氏著「近代日本の地下水脈」(2)を読んで

          第4章 戦争が「営利事業」だった日本型資本主義 軍事が先導する日本型の資本主義は国家社会主義に近い性質のものであり、その地下水脈は現代の日本経済にも流れている。 日本企業の終身雇用、年功序列は多分に藩による武士の禄を食むという風潮を継承したものと思われる。 しかし、明治期の新政府は全国の武士を召し抱える金銭的余裕はなく、不満をなだめながら、リストラをし、一時金にて雇用関係を清算した。 一時金はすぐに生活費に消えてしまったが、それを元手に商売を始める者が出現した。その大

          保阪正康氏著「近代日本の地下水脈」(2)を読んで

          雑誌「世界」4月号「米中東政策の綻びはどこに向かうか イスラエル もうひとつのトランプ旋風」を読みながら

          この論考を読んでいて私の脳裡に立ち上がったイメージがあった。 それはバイデンのようにイスラエルにエスカレートさせないような忠告なしに、トランプはイスラエルをスポイルドチャイルドのようにすべてを肯定するので、トランプは米国内のカトリック教徒や福音派のみならず、あるとすれば世界ユダヤ資本のようなものまでも味方につけているのだ。これがトランプの手強さなのだ。 ではイスラエル版「トランプ旋風」とは何か。それは、イスラエル国内にもトランプのような暴言・煽動をする政治家が支持を拡大して

          雑誌「世界」4月号「米中東政策の綻びはどこに向かうか イスラエル もうひとつのトランプ旋風」を読みながら