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漫画「政談」荻生徂徠原作 近藤たかし氏著を読んで

先日、本居宣長の「うい山ぶみ」を読み、明治の天皇制軍事帝国主義の思想的下地がそこに流れていることを知り、忌避感を覚えた。そこで、宣長の論敵は誰かと探したら荻生徂徠が上がって来たので簡単な徂徠の思想を知っておきたいと思い「政談」という電子書籍を紐解いた。

そうしたら、なんと漫画であり「原作:荻生徂徠」になっているけれど主役はロックバンドのボーカルである。そして、時代と背景は弱体化した現代の日本である。行き詰まった日本の窮状を打開しようと政治家が奮闘するが解決の糸口が見いだせず、「SORAI」というAIに政治を任せることにしたと発表する。

それからは、オウエルの「1984」のように部屋に一つずつ備え付けられたテレビに政策発表と指令が映し出される。その政策によって、職業ごとに住居を決められるなど、いろいろと改革が進められる。その政策に怒ったり抵抗したりする人々もいたが、合理的な政策が実行され次第に国は安定し人々は生活に満足していく。そして、そうこうするうちにAIの基は何なのかを暴き出したジャーナリストがいたが、その「基」となっていたのは荻生徂徠の「政談」一冊であったという落ちであった。

そして、AIを破壊しようとするジャーナリストに対して一緒にいたボーカリストは今AIに居なくなられたら日本は混乱の極致に陥るので、このまま続けてもらい十年後に国民投票で決めようと提案し、その通りになる。これはAIが反省したり提案を受け入れるようになるか疑問ではあるが。

ここで、コンピュータに支配されることを是とするか、人間の自由を享受する代わりに競争と弱肉強食を是とするかが問われるわけだが、私は何事もバランスが重要で自由即ち弱肉強食ではないと思うしコンピュータの合理性も捨てがたいと思うのだ。そもそも「SORAI」の合理性は荻生徂徠の合理性であった訳だが、日本国憲法も合理的であり理想的であり、これが実行されたら素晴らしい国になれると思った。

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