山茱萸(さんしゅゆ)
『「一番!」と天に突き出す山茱萸の花が希望を運ぶ午後』
庭に山茱萸の木を植えて、3年が経つ。
秋になると赤い実がなり、それを果実酒にするのが目標である。
昨年は一つだけ実がなった。
小さな赤い実は、甘酸っぱくて懐かしい味だった。
今年は…
天に向かって枝が一本だけ、ぐい〜っと伸びていて、そこにぽこっと花がついている。
その姿は、空から降ってくる爆弾を偵察するかのように、我が家を守っているように見える。
平和の祭典で、アスリートが
「一番!」
と喜ぶ姿がふさわしいかもしれない。
同じ空の下で、争い事が1ヶ月続いている。
多くの市民が亡くなり、街は崩れ、住む家を失ったり、文化的な建物も破壊されたりと、報道を見るたびに心が痛む。
私の出来ることはなんだろう。
何かあるはずだと、考えながら過ごす日々。
庭の草木や畑をいじりながら、自分の置かれた平和な生活を後ろめたくも感じてしまう。
午後になり、二カ国間の停戦協議が始まり、少し進展があったようだ。
もうこれ以上、壊して欲しくない。
安心して眠れる夜を迎えられることを、心より願っている。