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着物について

私は、幼い頃から着物が大好きだ。
七五三・3歳で着た時は「脱ぎたくない!」と泣いたほどである。

生まれ育った実家は昔、仕立て屋さんだったらしい。私が生まれた時はすでに辞めていたが、祖母の代までやっていたと聞いた。
古い箪笥の中には、鯨尺の物差しや袖の丸みの型・象牙のチャコ・胴裏の生地が詰まっていて、くけ台が何台もあった。幼い頃は、その道具が何なのか知らずに遊んでいたが、今でも大切に持っている。

母に着付けてもらったのは、浴衣で帯は兵児帯。半巾帯は結べなかった。10歳くらいになると半巾帯に憧れて、本を見ながら練習した。

母は着物を自分で着られず、兄や姉の入学式や卒業式・結婚式の時は近所の〈京子さん〉が着付けをしに来てくれていた。
〈京子さん〉の手さばきの美しさ・速さにうっとりしながら、着付けられていくのを見るのが大好きだった。

「私はいつか、京子さんの手さばきの様に、自分でスルスルスルスル〜っと着物を着られるようになりたい!」


実家にある着物を、本を見ながら一人で練習していた20代前半。
何かある時は着物で出掛けたい。下手くそな着付けでも、家にある物を引っ張り出して着ていた。
私の周りの大人達は(母を除く)自分でさらさらと着られる方が多く、着付けのポイント・季節やTPOなどを教えてくれた。また、お下がりの着物をいただたりした。

着物雑誌を見たり憧れたりしているうちに、
「着物に携わる仕事をしたい」
と思いながらも、生活面を考えると経済的な仕事は辞められなかった。

それでもコツコツと着物に携わることをやってきて、気がつけば25年になる。
しかし、私の知識は聞きかじりと本や雑誌からのものであり、きちんと学んだわけではない。着付けも自己流。
「これから先、きちんと着物を着て仕事をしたい。ならば今、きちんと学ぼう!」
と思い、車で1時間強のところにある【着物学院】に5月から週1回通い始めた。

まずは3級取得へ。
試験は筆記と〈黒留袖〉を自分で着ること。
7月に入ってから毎日、自宅で着付けの練習をしている。暑い中、クーラーと扇風機を自分にあてて、汗をかきながら黒留袖を羽織る。
始めたばかりの頃は、焦りと不安で汗が大量に流れていた。最近は時間内に着られるようになり、汗もそんなに出なくなっている。練習用に買ったリサイクルの黒留袖と長襦袢は、私の汗でちょっと重くなっている様な気がする…

着物はリサイクルショップで購入
帯は母がよく締めていたもの
これで毎日練習している



今週、いよいよ試験がある。
昨日の朝、目が覚めた時にふと思い立ち、神社に行って合格祈願をしてきた。
鳥居をくぐると宮司さんにばったり会った。これは良い兆候だと信じている。試験のことを話し「頑張ってください」と言われ、自信を持った。そしてお守りもしっかり買った。

これで、心は準備万端!
試験日まで毎日着付けして、本番に強くなる様に鍛えていくだけだ。(意外とあがり症なんです…)

51歳で試験を受けるなんて想像していなかったけど、久しぶりに味わう緊張感が今後の自分の役に立つと感じている。


【母の帯 新たな〈しみ〉をつけ背負う 重み感じて進む未来へ】

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