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職探し中に読んだ本をならべて感想を書いてみる

 どうも。ご無沙汰しております。

 退職してから三ヶ月くらいは晴れやかな気持ちで意気揚々としていたのですが、それ以降は、無職であることへの罪悪感やら仕事が見つけられない不安やらで鬱々としていました。

 時間はありますから、いくらでも映画を観られるはずなのですが「働いてないのにそんな分不相応なことをしてはいけない」というセルフ抑制がかかり、ゲームに熱中しようと思っても「仕事も見つかっていないのに生活を楽しんでいいはずがない」という罪の意識ですぐ閉じてしまうんです。神様はわたしにどういう初期設定を施したんでしょうかね。

 とはいえ不思議なもので、活字はいくら読んでも許されるような気がするんですよね。ということで、この6ヶ月間は人生でもっとも多くの書籍を読んだかもしれません。

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・三体シリーズ

 でました。三体シリーズ。全5巻すべて一気読みしました。うわさに違わぬ濃密な読書体験。文化大革命の逃げ場のない空気の中から物語が始まることや、人間を深く掘りさげて描いていることが予想外でした。なんでしょうね。まるで初めての美術館を歩くような感覚でした。展示エリアを移るたびに世界が変わっていくような。はやく次のエリアを見に行きたい、そんな感じです。

・人口戦略法案

 たぬ£さんがTwitterで紹介していたので読んでみました。優秀な官僚や有識者たちが、総理の振るうタクトのもとで人口問題について本気で議論します。小説という形態をとっていますが、議論が中心でストーリーはほぼ展開しません。ハードルの低い論文だと思って読む感じです。こういう法案が本当にできたらいいなと思うからこそ、希望と失望がないまぜになりますね。

・同志少女よ、敵を撃て

 小さな山村の少女の物語です。独ソ戦に巻き込まれ、見習い猟師のセラフィマは狙撃兵として生きてくことを余儀なくされます。敵とはなんなのか、主人公が迷い続けているのが良いですね。狙撃手としての腕があがることを成長と呼んで良いのかもわからない。こんなふうに生きたいとは一瞬たりとも思っていなかったから。登場人物の感情の動きとか、生命を拒むほどの外気の冷たさとか、そういったものが地の文から感じ取れるともっと没入できたかなと思わなくもないです。

・無数の銃弾シリーズ

 我らが逆噴射小説大賞から始まったパルプ小説の合同雑誌です。おかげさまでVOL.4は無料期間中になんと45部もダウンロードされてまして、パルプの衝動が全地球を揺さぶっているのを感じます。個人的には「遠山キナコ」の爽快さが病みつきになります。なにしろ、金槌を持った女子高生がヤクザのあのあたりとかそのあたりとかをパキンコキンしまくる話なのですから。3回読みました。ええ。

・ロストマンの弾丸

 冒頭3ページを試し読みしただけで一気に引き込まれてしまいました。逆噴射小説大賞でその大切さを骨身に染みて知っていますから、理想的な冒頭に出会って興奮気味です。現代よりやや近未来の異能バトルものです。全部含めてわずか数日間の出来事なので、展開のスピード感が素晴らしいぶん、人物の関係性に深みが生じないのが難しいところだなと思いました。しかし、書き手として参考になるところがたくさんありました。

・黒牢城

 これ、鬱々としているときに読むもんじゃないなと思いましたよ。なにしろ、有岡城に立てこもっている荒木村重の話なんですもん。そもそも村重が鬱っぽいし、牢内の黒田官兵衛もいい感じに熟成してるし、読んでるわたしもそうだし。鬱の三重奏を銀河の深淵に向かって合奏するところでしたよ。ただ、部下の表情やリアクションや声質から、外で起きていることの手がかりをつかんで手を打っていく村重の、管理職としての有能さには舌を巻きました。

・統計から読み解く色分け日本地図

 これは面白いですよ。物理本で買いました。子どもの頃から社会科の白地図やらなんやらが好きだったので、列島に色が塗られていると嬉しくなります。ただ、よくある都道府県単位の地図ってあんまり信憑性ないんですよね。県庁所在地とそれ以外では住環境がおそろしく違いますから。これは市町村単位まで塗り分けているので、その地域内でのグラデーションがしっかり浮き彫りになってます。

・動物農場

 これもたぬ£さんが紹介されていたので、それきっかけで読んでみました。ちょうどKindle Unlimited加入中だったのでそちらで。農場で、きつい労働をさせられていた動物たちが反乱し、人間を追い出すことに成功したそのあとの話。なんというか、なにごとにも献身的なボクサーという古馬が印象的です……。あと、一緒に収録されている短編の『象を撃つ』が秀逸なので、こちらメインで読んでもらってもいいくらいです。

・一九八四年

 おなじくジョージ・オーウェルの代表作。これもKindle Unlimitedで無料です。ディストピアの教科書的な取り上げられ方をしてるわりには、意外とキャラクターの行動の自由があるなと思ったんですよ。それこそが支配の要諦だったんですね。心ですよ。心。ドアは二箇所の蝶番さえおさえれば支配できますからね。書いた本人が「暗い」って言っちゃってるくらい陰鬱な名作です。

・こばなしけんたろう

 これも物理本で買いました。電車の中のおとも。あえてカバーをつけずに読んでます。ラーメンズのコントの原型が詰まっていて、こばやしけんたろう氏の思考がじわじわ脳に侵食してきます。心地いい。個人的にンンーンが好きですね。しわふー。

・あなたの人生の物語

 初テッド・チャン。ハヤカワ書房のKindleセールで買いました。短編集とは知らなかったんですけど、わたしにはこれくらいの長さが丁度よかったです。なんていうか、ものすごく頭の良い人が好きで書いてるんだろうなぁ、という印象でした。商業っぽくないというか。

・わたし、定時で帰ります。

 買ってはいたものの、積んでいました。当時はまだ前職で働いていたので、途中で辛くなって読めなくなってしまったんです。働きすぎると人って死んじゃうじゃないですか。これをふたたび手に取れたということは、ずいぶん回復したってことで、それ自体が嬉しかったですね。発売から五年経って、社会が大きく変わったんじゃないでしょうか。結衣の働きかたと、晃太郎の働きかた、世間の支持はずいぶん前者寄りになったような気がします。いいことです。

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 この記事のためにヘッダー画像を作ってみて改めてわかったんですけど、他の書籍と並べても「無数の銃弾」の表紙はまったく遜色ないということです。どこに出しても恥ずかしくない。書店に平積みで置いてもおかしくない。ということで、みなさん、素敵な読書ライフを。

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