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【本の感想 vol.004】『生物はなぜ死ぬのか』小林武彦さん 2023/05/28

生物学者である小林武彦さんの「生物はなぜ死ぬのか」という本を読んだので、感想を書いていきます。
本書では生物学の細かい話も含まれますが、私は生物学には疎いのでさらっと流しており、理解できた気になった部分だけピックアップしております。
もし誤りなどありましたらコメント等でご指摘ください。

はじめに

本に出合ったきっかけ

落合陽一さんのWEEKLY OCHIAIというWeb番組で、小林武彦さんがゲストで「なぜ、死ななければならないのか?」というテーマで対談されていました。
その話が面白く、テーマのもとになった本書に興味を持ち、読むことにしました。

著者のプロフィール

生物学者である小林武彦さんのプロフィールをamazonより引用します。

小林 武彦

1963年生まれ。神奈川県出身。九州大学大学院修了(理学博士)、基礎生物学研究所、米国ロシュ分子生物学研究所、米国国立衛生研究所、国立遺伝学研究所を経て、東京大学定量生命科学研究所教授(生命動態研究センター ゲノム再生研究分野)。前日本遺伝学会会長。現在、生物科学学会連合の代表も務める。生命の連続性を支えるゲノムの再生(若返り)機構を解き明かすべく日夜研究に励む。海と演劇をこよなく愛する。著書に『寿命はなぜ決まっているのか』(岩波ジュニア新書)、『DNAの98%は謎』(講談社ブルーバックス)など。

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本の概要

原始の地球から生命が誕生したときの原理から、時間をかけて多様な生物が生まれては消えていき、多様な進化の中で現在の生き物がいる過程について説明していく中で、生き物の「死」について様々な観点から深く考察されています。
最後は今後のAIとヒトとのかかわりにも触れられていました。
amazonより本の紹介文を引用します。

すべての生き物は「死ぬため」に生まれてくる。
――「死」は恐れるべきものではない。

【死生観が一変する〈現代人のための生物学入門〉!】

なぜ、私たちは“死ななければならない”のでしょうか?

年を重ねるにつれて体力は少しずつ衰え、肉体や心が徐々に変化していきます。
やむを得ないことだとわかっていても、老化は死へ一歩ずつ近づいているサインであり、私たちにとって「死」は、絶対的な恐るべきものとして存在しています。
しかし、生物学の視点から見ると、すべての生き物、つまり私たち人間が死ぬことにも「重要な意味」があるのです。
その意味とはいったい何なのか――「死」に意味があるならば、老化に抗うことは自然の摂理に反する冒涜となるのでしょうか。
そして、人類が生み出した"死なないAI"と“死ぬべき人類”は、これからどのように付き合っていくべきなのでしょうか。

遺伝子に組み込まれた「死のプログラム」の意味とは?

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感想

「死」は生命の連続性を維持する原動力

新しい生物が生まれることと、古い生物が死ぬことが起こって、生物の「進化」が起こります。
つまり、生物界のリストラ(死)が進化の原動力となっています。

今の生物は過去の生物の死によって形成されています。
例えば、恐竜の時代が終わったことで哺乳類が爆発的に増え、変化と選択の上で進化して哺乳類の時代が来ました。
このようにして生物が変化し、選択される循環の中で現在の生き物が誕生しました。
つまり、今の生物は過去の生物の絶滅=死によってもたらされたものと言えます。
これまでの生物の進化の中で、死ぬことは次の世代の生命のために必要なことだと理解しました。

高度な社会を持つヒトは多様性を損なわない教育が必要

種として生き残るためには多様な個性が必要となります。
ヒトのような高度な社会を持つ生き物は、単なる保護的な子育てに加えて社会の中で生き残るための教育が必要と考えられます。
子供たちに教えるべきは、遺伝的な多様性を損なわない教育。
つまり、社会全体で多様性を認め、個性を伸ばす教育が重要であるということです。
今の日本の教育は若者の個性に寛容でないことも触れらえており、その点は私も強く共感しました。
子供は親より遺伝子的に優れているという点も興味深く、若者が個性を発揮できる社会になることが日本、そして人類のためだと強く感じました。

ヒトとAIが共存する未来

AIはこれまでの生物とは異なり、死なないので成長し続けます。
進歩したAIはもはや「エイリアン」のようなもので、私たちが理解できない存在になっていく可能性があります。
死なない人格を持つAIはヒトと価値観を共有するのは難しいでしょう。

その中で重要なのは人間が主体でAIを使っていくということです。
著者が「人を本当の意味で理解したヒトが作ったAIは、人の存在を守るために自分で自分を破壊するかもしれない」という趣旨のことを書かれています。
AIは死なないので生物ではない特別な存在で、その扱いには慎重になるべきだというメッセージを感じました。

さいごに

生物学の観点から、「死」の必然性について考えさせられました。
また、人間に個性があるのも、多様な進化の結果と考えると納得しました。
今後の人類を考えるに、個性を大事にして多様な社会を作ることの重要性や、AIとの付き合い方など非常に勉強になる本でした。

生物学の教養がある方であれば、本書はより深く理解でき、楽しめるかと思います。
この記事で書ききれなかった興味深い話もたくさんありますので、少しでも興味を持たれた方は、ぜひ全文をお読みいただければと思います。

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