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最近読んだ本の感想を書いていく

西の魔女が死んだ (新潮文庫) / 梨木 香歩

西の魔女の魔法と、その生きていく上でのルールは、本当はすべての人間にとって大切なことなのかもしれない。発刊から30年近く経った今読むと、我々の生きるこの世界と物語の中に生きる人々の姿を比較してそんなことを考えてしまう。とても落ち着いた、細やかな感情の機微を蔑ろにしない素敵な物語だ。

脱北航路 (幻冬舎単行本)(Kindle) / 月村了衛

脱北する北朝鮮兵の話。日本人拉致被害者の問題とも絡めて、非常に緊張感があり、微妙なテーマを扱っている。物語が一貫して潜水艦内で進むという構成に物足りなさを感じる部分はあるが、その分人間の心の動きが描かれることに重きが置かれていて楽しめる。

おいしいごはんが食べられますように / 高瀬 隼子

軽妙で、かつ人の心を鮮明に表現する文章が上手い。そう思って読んでいたら芥川賞候補作だった。ハッピーエンドでもバッドエンドでもない微妙な味わいのストーリーに、現代社会と若い人たちのリアルを感じられる。瑞々しい感覚の作家である。

妻はサバイバー / 永田 豊隆

過去にトラウマがあり、過食症とアルコール依存症に陥ってしまう妻を看護しながら仕事を続けた著者の人生を綴ったドキュメンタリー。壮絶な内容ながら、それを淡々と語る著者はやっぱり生粋の新聞記者だったのだろう。悲惨な話ではあるが、その愛の深さには感動すら覚える。

「自分だけの答え」が見つかる 13歳からのアート思考 / 末永 幸歩

アートへの向き合い方を、武蔵野美術大学卒で美術教育研究科である著者が提案するような形で記している一冊。13歳というのは中学生が美術の授業と出会う頃の年齢であるが、学校で教わる押し付けの美術鑑賞ではなく、自分で感じて、考えるアート思考を示してくれる。日常的に絵や音楽と接しているとよく納得できる話ではあった。


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