坂爪圭吾

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    怒涛に生きると書いてドトール。

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    家なし生活(2年間)の日々をまとめました。

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  • 【壇珠×坂爪圭吾】『男と女の往復書簡』

    • 167本

    壇珠×坂爪圭吾

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ホームをレスした話(1)

2014年のバレンタインデーに、私は、ホームをレスした。 当時、私は東京の渋谷界隈で彼女と同棲をしていた。この日、彼女から「話がある」と言われ、私は「バレンタインデーだから、チョコかな?」などと呑気に構えていた。が、彼女の口から出た言葉は「あなたとの未来が見えない。だから、別れたいと思う」という、チョコよりもビターな別れ話だった。小一時間程度の話し合いを経て、私たちは別れることになった。私は、渾身の哀愁を漂わせながら「じゃあ、俺が家を出るよ…(ふっ…)」とワントーン低めのボ

    • 自分らしさを壊し続ける。

      私と坂爪圭吾は別物で、坂爪圭吾は乗り物みたいなもので、私が生きる意味は「坂爪圭吾を愛し抜き、坂爪圭吾と添い遂げること」である。これは、出会う人々から学んだ。悩み苦しみ重苦しい波動をばら撒いている人は、本来別物の自分が一つになってしまっている。だから苦しむのだろうし、だから自分を責めるのだろうなと思う。私と圭吾ちゃんは別物なので、私は圭吾ちゃんを手放しで褒める。圭吾ちゃんは素敵だね。圭吾ちゃんは本当に素晴らしいね。そんな自分褒めを当たり前のようにしているが、それをやると「あなた

      • 俺に惚れるな。自分に惚れろ。

        ストーカー被害に遭って困っている。なぜ、女をストーカーにさせてしまうのか考えた。おそらく、私が初めてを奪ってしまったからだと思う。ほとんどの女性が肉体的な処女は捨てて来る。だが、精神的には処女だった女性が、私に痛いところを突かれて「こんなのはじめて!」となり、初めての男認定される。誰も見てくれないところを、この人(俺)は見てくれる。誰にも見せていない部分を、この人(俺)にだけは見せることができる。そんな感じで、愛着が行き過ぎてストーカーになっている気がする。 だが、私は私の

        • 俺が来たから大丈夫だ。

          愛知県在住の男性T様が「自分を大事にできていないから、人のことも大事にできていない」と言った。誤解を恐れながら言うと、私は、こう言うことを言う人が好きではない。自分を深掘りした人で、魅力的な人を見たことがない。自分を深掘りする人は、自分に集中し過ぎるあまり、目の前の人間を無視しがち。目の前の人間を道具にしがち。くれくれになりがち。コミュニケーションがテンプレになりがち。嫌われたくないとか言いながら、いい人を演じがち。罪悪感を感じることで、何かをやった気になりがち。罪悪感に逃げ

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        ホームをレスした話(1)

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          167本

        記事

          嫌いなもののために死ぬなよ。

          シングルマザーの女性M様から「息子の高校の入学式に来て欲しい」とご連絡をいただいた。学校が苦手な私たち親子に坂爪パワーを分けてくれと。よかろう。私の正しい使い方である。数億年ぶりに学校に行ったら「北朝鮮じゃねえか」と思った。軍だ。軍国だ。監獄だ。刑務所だ。何が憲法九条だ。絶賛戦時中じゃねえか。ロックンロールが大好きなM様は革ジャンで来るだろうと踏み、私は毛皮のコートで行った。他の保護者や教員を「やばい夫婦がいる」と戦慄せしむるのだ。鼻息荒く、のっけから戦闘モードで保護者席とい

          嫌いなもののために死ぬなよ。

          ちゃんと恋愛をしなさい。

          旦那以外の男と付き合ってみたいと話す新潟在住の女性K様にお会いした。学生時代に今の旦那と出会い、そのまま結婚をしたために男性経験がない。旦那は優しい。家族のために仕事も頑張っている。旦那に文句があるわけでも、離婚をしたいわけでもないのだが、このまま枯れて行くのは女としてどうなのかという思いもある。当然、夜の営みはない。そのようなことをK様は話した。話を聞くと、K様には幼少期から死にたい願望が強くあったことが判明した。笑顔で、柔和で、優しい雰囲気のK様だが、無理をしているように

          ちゃんと恋愛をしなさい。

          幸せになら一秒でなれる。

          知らない人に会うことは、知らない国に行くみたいだ。ハワイに呼ばれて、マウイ島に八日間滞在した。事前に決まっていたことは、朝晩三十分の瞑想だけ。それ以外は自由行動で、渡航費と滞在費は全額を出していただいた。ハワイに行く前、有り金をおはなに変えて東京で配った。女性A様から「おはなと旧米ドル紙幣を交換しませんか?」と連絡をいただいた。A様は化学物質過敏症で、なかなか遠出をすることができない。最近の調子はどうですかとお聞きしたら「実は今、人生で一番どん底の時期にいます」と言って、A様

          幸せになら一秒でなれる。

          もう、頑張らなくていい。

          バイク事故に遭って左半身がおかしくなり、歩くこともままならなくなってしまった。幸い命に別状はなく、昨日は喫茶店でお茶も飲めた。左半身を引き摺るように歩くために、速度も出ない。だから、健康な人に道を譲る。階段の上り下りが難しいから、よいしょよいしょと言いながら一歩一歩ゆっくりと上る。優しい人が、時折微笑みかけてくれる。体の自由が効かないことは不便だが、不幸ではないと思った。変な言い方だが、怪我人になったことで「もう、頑張らなくていい」と自分に言うことができたような気がした。もう

          もう、頑張らなくていい。

          お前はお前のファンになれ。

          新潟で開催されたトークイベントに出た時、参加者の女子高生から「私は不登校で家で本を読んでいることが多いのですが、坂爪さんの話を聞いていたら体を動かしたくてたまらなくなったので走って帰ります!じゃ!」と言われた。大阪で開催されたライブに出た時、参加者の若い男性から「実はライブの途中に帰りました」と後から連絡をもらった。最初はオーディエンスとして演奏を楽しんでいたのだが、だんだんと「なんで俺は客席側にいるんだ」と疑問が湧き出して、ハイリスクノーリターンという曲を聞いた時にいてもた

          お前はお前のファンになれ。

          生きることも死ぬことも全部祭り。

          女性S様に誘われて京都の街を歩いていた時、八坂神社の前を通った。S様が「ちょっといいですか」と言って、鳥居の前でお祈りをした。私はそれを黙って見ていた。数十秒後、祈りを終えたS様は「スサノオノミコトから力を貰いました」と言った。そして、意を決した表情で「坂爪さん、私を抱きませんか」と言った。私は、その、あまりにも露骨な展開に大笑いしてしまった。スサノオノミコトは破茶滅茶な神様で、皆様ご存知の通り、数々の武勇伝がある。S様は「実はホテルも調べてあります」と言った。時刻は午後一時

          生きることも死ぬことも全部祭り。

          生きろ。生きてお前を見せてくれ。

          なまけもののT様が看病に来た。なまけものだから、私よりずっと横になっている。私がT様の布団を敷き、私がT様の料理を作る。「逆だろ」と思うのだが、愉快になる。元気になる。昔からめちゃめちゃな人が好きで、正解じゃないことをやる人に正解を感じる。T様にも一応人間の心はあるから「悪いね」と謝罪をしてくる。私は「別にいいよ。だけど、そろそろ洗濯をしなくちゃいけない」と言った。T様は「ジャンケンで負けた方が洗濯しよう」と、横になりながら言った。やる気の無さが凄いので、それだったら俺がやる

          生きろ。生きてお前を見せてくれ。

          愛の爆竹を鳴らせよ。

          著名なロックバンドのボーカルがライブ中に倒れ、五時間足らずで息を引き取った。脳幹出血だった。ロックンローラーとしてこれ以上ない大往生だと思うのだが、周囲のリアクションは「悲しい」「言葉にならない」「若過ぎる」など、湿っぽい。誤解を恐れずに言うと、お前ら全員馬鹿なのかと思う。若過ぎるってなんだ。五十七歳だぞ。十分生きたよ。大往生じゃねえか。お前らちゃんと音楽聞いてたのかよ。消費してるだけじゃねえか。甘えんなよ。安らかになんてねえよ。悲しむことでしか愛を表現できないなんてダサ過ぎ

          愛の爆竹を鳴らせよ。

          魂の成長なんて言葉に騙されるな。

          長崎で出会ったおでん屋さんがよかった。八十歳になるおばあちゃんが店主の、カウンター十席だけの小さなお店。壁にはデカデカと「酔っ払いお断り」と書いてある。入店した瞬間、おばあちゃんに「お前、何しに来た?」と睨まれた。私には、レビューの評価が最悪の店に行く趣味がある。最悪と最高は紙一重で、ある人にとっての最悪はある人にとっての最高になる。このおでん屋さんは、最高だった。何を頼むか迷っていたら「迷うな」と言われた。レビューにあった通りだ。油断していると刺される。隣のお客さんがおでん

          魂の成長なんて言葉に騙されるな。

          愛されるために、何かをしないでくれ。

          頑張り過ぎて疲れている女の子に、立て続けに会った。表面的には明るく元気で華やかな世界を生きているように見える人も、内面には「誰にも話せない苦しみ」を抱えている。ストレスを感じた時、一緒に楽しむ友達はいる。美味しい料理も、お洒落なお店も、たくさん知っている。だけど、本当に話したいことを話せる友達はいない。楽しいはずの場面でも、無理をしている自分を感じる。常に気を張って生きていて、期待されているキャラクターを演じている。やがて、小さなことにもイライラするようになり、人に対して優し

          愛されるために、何かをしないでくれ。

          俺たちはチームなんだ。

          クロアチアのザグレブで車を借りて、初日はスロベニアのノボ・メストに行き、二日目はプリトヴィツェ湖畔国立公園からシベニクを経由してスピリトに宿泊、三日目はボスニアのネウムを経由してドゥブロブニクに宿泊、四日目はモンテネグロのヘルツェグ・ノビまで車を飛ばして、四日間で四カ国に足を運んだ。スタンプラリーみたいな旅になったが、異国が面白く「一回外に出ないとわからないこと」を痛感した。一日一回は事件が起きた。喧嘩をしたりチケットを紛失したり、車が壊れたり食い逃げをして店員に追われたり。

          俺たちはチームなんだ。

          やめろと言われてもやめない。

          東京在住の女性N様に誘われて行った翡翠原石館が常軌を逸していた。翡翠の魅力に取り憑かれた館長が私財を投げ打ち、世界各地から石を集めた。商売するためではなく、純粋な蒐集のためだ。巨大な翡翠をくり抜いて翡翠風呂を作ったり、座ると体が冷えるから女性は絶対に座らない方がいい翡翠の座布団を作ったり、気が触れていた。狂い方がよかった。尋常ではない重さの原石を運ぶ際、脆い橋は壊れてしまう。だから、館長自らが道中の橋を補強しながら運んだ。原石が埋まっていると言われている伝説のある土地を買い取

          やめろと言われてもやめない。