【映画】レジェンド&バタフライ

以下はFaceBookにあげた内容。

https://legend-butterfly.com

とても面白かったです。

「バカのふりして実は大物」といえば信長ですが、バカのふりではなく大物要素は濃姫がインストールしたものであったというアイディア。
「日本史を陰で動かした女性」ものは昔から割とありますが、「内助の功で出世」みたいなことではなく、それより大きく踏み込んで、信長のビジョンが濃姫のものであったとすることで現代的な物語に感じられるようになってます。

最初はコメディ調で、初夜で二人が喧嘩して「お前の国なんか滅ぼしてやる」って言い争うところでその面白さにシビレました。
そのあとドタバタになるのですが、綾瀬はるかのアクション演技が素晴らしく、知力だけでなく体力でも信長を圧倒しているというのがまた面白い。

脚本もかなりしっかりしていて(史実とのギャップなどについては詳しくないので良くわかりません)、30年にわたる史劇を3時間弱におさめる手際も優れていました。

特にミッドポイントを構成する重要なシーンでは、市場->西洋音楽と踊り->貧民窟でのバトル->そして……
と流れるような展開に唸りました。
濃姫が最初に人を殺す場面では、その前の訓練シーンと同じ動作をしていることがわかり伏線のわかりやすさなどが非常に丁寧です。
ただ貧民窟の場面はおそらく、主人公たちのその後の行動に大きく影響を与えていると思うのですが、それについてはあまり明確に語ってないなと思い、もうちょっと前面に出して社会派要素を強調してもいいんじゃないかと思いましたね。

この二人がもっと生きて活躍したら違う日本になっていただろうと思うような話になるのかと思ったのですが意外にもそうでもなく、その動機はもっと個人的なものであると明かされました。
そこは、社会派というより恋愛ものとしてまとめるほうに注力したのでしょう。

クライマックスのある展開は、いま最新作が公開中のある監督のある恋愛映画を思わせる手法で泣かせる仕掛けになっているので、これはこれで良いとは思います。
本能寺の変を起こした明智光秀の動機についても、映画のストーリーとしても歴史解釈としても面白くて、これもすごく良かったですね。
光秀の視点を通じて、信長という人物の変化がしっかりと感じられる展開でした。
有名な合戦は描かずその前後の描写で話を進めながらも、貧民窟でのバトルや延暦寺焼き討ちなどに力を入れて撮ってます。

コメディで始めながらも残虐な要素をしっかりと重く描くし、合戦後の屍体にたかる美しい蝶、という複雑な場面設定もかなり露骨に描きます。
これだけ振幅が激しくても、違和感なくまとまっていると思いました。
振幅という点では、木村拓哉の若い時から晩年までの変化がものすごくて驚きました。
若い時は本当に若いし晩年は見事に「あの」信長らしさが出てます。
ちゃんと年相応の深みをだし、しかし時に若返る。
綾瀬はるかはもう少し年齢変化を出してもいいかなとは思うものの、アクション俳優ぶりが印象的でした。
中谷美紀らの脇も素晴らしく厚いのに、主演二人にここまで求心力があるとはさすがの二大スター共演なんだなと思いました。

ラストカットはこれか……と思いましたがすぐに曲をかけることなく効果音だけを聞かせ続けて無常感と寂寥感をしっかり出すセンス。
現代的ながら無闇に軽くしない。

南蛮船のシーンとかもっとイメージ的に処理してもいいんじゃないって思うけど、しっかり金をかけて映画的に処理している点も良かった。

こういう作品は、金かかってる感じはとても重要ですね。

というわけで、すごーく楽しませてもらえたと思います!

この記事が参加している募集

映画感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?