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『無垢なる証人(2019)』を観ました。

ある静かな街で殺人事件が起きます。
その家の家政婦が主人を殺したのか? または、主人が自殺しようとして家政婦はそれを止めようとしたのか?
この事件を向かいの家に住む少女が見ていた。そして、その少女は自閉症だった。

今作は、家政婦側の弁護をする弁護士のスノ目撃者の15歳の自閉症の少女ジウのお話です。
ハラハラドキドキして見て最後は感動(泣)の、やさしさに溢れた作品でした。

今まで裁判もので見たことあるのは、目撃者の証言がこちら側の勝ち負けが決定してしまうくらい重要な証拠能力を持っていて、それによってその目撃者の奪い合いが起きてしまう。不利になる側は「証言に出て来るくらいなら消してしまってもかまわない」となり、有利になる側は「なにがなんでも目撃者を守って証言してもらう」となって、このぶつかり合いによって緊張感ある場面となる。しかし、今作はそれとは違いました。

自閉症の少女ジウを裁判に証人として出てきてもらっても、彼女はどちらかに有利になるような証言をするようなことはしない。彼女にはどちら側につくという感覚がなくて「見たままの真実を言う」しかできない人なのです。
こうなると彼女の証言は「やっぱり家政婦が主人を殺したのだ」側「家政婦は自殺を止めようとしただけで殺してない」側どちら側にも転ぶ可能性が出てきます。例えたら、サイコロの出る目によって人生が左右される状態で、なんの目が出るかわからないサイコロがころころと自由に転がるのです。これって目が離せないとてつもなくスリリングな場面になります。私はこの最初の証言の場面でガッツリとこのお話に引き付けられてしまいました。
よくできたお話だと思ったら、今作は「第5回ロッテシナリオ公募展」で大賞を獲得したシナリオを映画化したのでした。

中央がキム・ヒャンギさんが演じる少女ジウ

15歳の自閉症の少女ジウの演者さんは実際に自閉症の方が演じているのかと思ってしまうほどでした。この少女ジウ役のキム・ヒャンギさんを私は他の作品で既に見ていたのです。

なんと『神と共に 第一章:罪と罰』『神と共に 第二章:因と縁』霊界の使者として出てきた小柄な女の子の役がキム・ヒャンギさんでありました(コミカルな演技が見てて楽しかった)。この事実を知っても私は同じ人が演じてるとはどうしても思えなかったです。なんだかこの役者さんスゴすぎます。


『損得やお金や地位でしか動かない人』 VS
損得関係なく真実を明らかにしたい人』。この対比が明確に描かれていて、どう見てもいい人に見える弁護士のスノさんがどっち側に転ぶか(ダークサイドに落ちるかどうか)も見どころです。

あまりに善悪をはっきりとさせて描くと、「一方的で偏った見方をしている」とか言われたりして叩かれることがある
ので、「どちらが善か悪かはわからないけれど、結局この作品の登場人物はこう選択しました」みたいにぼやかす描き方が多いような気がします。
なので、今作のようにあえて善悪ををはっきり描くのを、そのままやってしまえるのが韓国映画のスゴいところのようにも思いますし、なんだか羨ましいような気持ちになりました。

「じゃあお前は、金のために動くのは悪だって言うんだな、お金や地位のためには絶対動かないんだな」とか言って怒らない怒らない、一休み一休みです。今作みたいな作品は今の世の中を風刺した、ただの作り話なのですから。


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