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【図解】知れば知る程面白い"TENET/テネット" 徹底解説・考察 -「TENET」の意味やラストシーンを解説 ※ネタバレ有り

*本noteは全て無料です!
**以下、ネタバレを含みます!『TENET テネット』の観賞がまだの方は、ネタバレにならない解説部分と感想を抜粋したこちらのnoteをご覧ください。

映画『TENET テネット』を見てきました。

「よく分からない」という感想が多いTENETですが、知れば知るほど「そういうことか!?」という発見が沢山あります。自分も例に漏れず、映画が終わった直後は「どういうこと!?意味分からない!」という感想でしたが、映画を観て数時間経た後もこの世界から離れられませんでした。このnoteも2,3時間で書くつもりが、いつの間にか6時間書き続けていました笑。それだけ観た後も夢中にさせてくれる面白い映画だったのだと思います。

本noteでは、『TENET テネット』の内容を考察・解説します。全体のあらすじやストーリー、登場人物についてはこちらのnoteでよく解説されているので、ここでは省きます。代わりに、回転ドアの仕組み、TENETの意味、ラスト・クライマックスシーンの解説等をしていきたいと思います。

特に、クライマックスシーンである最後の戦いは、図で時系列を整理して全体像が見えるととても面白いです!

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知れば知るほど超面白い!『TENET テネット』の世界をご堪能あれ。

考察1. 時間を逆行するための「回転ドア」解説

人は空間を行き来できるのに、時間を行き来できないのは何故だろう?

これは今まで幾多もの物理学者が取り組んできた疑問でもあり、数々の映画でテーマとされてきた題材でもあります。

監督のクリストファー・ノーランはこれまで、「時間の不思議さ」を上手く利用した傑作をいくつも出してきました。「インセプション」では、 夢の中で時間の長さが20倍になる世界を描き、「インター・ステラー」では相対性理論に基づき時間の歪みを描きました。自分は13歳の時に映画館で「インセプション 」を見ましたが、初めての世界観に圧倒された鮮烈な体験でした。

そして『TENET テネット』ではついに、時間が逆に進む世界が描かれました。しかしそれは、他の映画でよく見られるタイムスリップではありません。過去のある時点に瞬時にワープするタイムスリップとは異なり、主人公は周りの全てのモノや生き物が逆再生しているように見えるリアルの世界で時間を逆行をしていくことになります。

この時間の逆行を実現したのが、TENETの中で登場する回転マシーンです。この回転マシーンの仕組の複雑さが、見る人を混乱させる一因であったと思います。回転ドアの使い方には2つあるため、順に解説していきます。

回転マシーンは、増大するはずのエントロピーを減少させ、時間が順行している時に使えば逆行させることが、逆行している時に使えば順行させることができます。そして回転マシンの現象は、「マシンを使っている本人」と「第三者」とでは全く違って見えます。

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まず、時間を順行している人が回転マシンを使うと、「対消滅」の現象が生じます。マシンを使った本人にとっては、順行していた時間が急に逆行することになります。

一方で、第三者から見ると、二人の同一人物が同時にそれぞれのドアから回転マシンに入っていき、なんと二人とも突然消えたように見えるのです!

だから、カーチェイスの後にセイターが主人公を脅しているシーンでは、回転ドアに入ったセイターが急に消えたように見えたのです。

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一方で、逆行している人が回転マシンを使うとどうでしょうか?
第三者からしてみれば、二人の人物が突然出現するように見えます。

これは、飛行場のFREEPORTで名も無き男とニールが実際に体験しています。この場面では、ドアからいきなり2人の謎の男が現れます。一方の逆行している男は、名も無き男と戦います。もう一方の順行している男は、ニールと戦います。この謎の人物はは、2人とも未来からきた名も無き男だったのでした。

逆行した人物と名も無き男のアクションは、単純な逆再生とは一味異なる、不思議で刺激的で、個人的にはめちゃめちゃ面白い『TENET テネット』のシーンの一つでした!


考察2. "TENET/テネット"の言葉の意味を解説

「“TENET” この言葉だけは覚えておけ」

冒頭に主人公がこう言われたように、この映画の題名でもあるTENETという言葉は作中で非常に重要なキーワードとなっています。

このTENETという言葉は、最後のクライマックスシーンである「10分間の時間挟撃作戦」を意味しています。

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「順行する10分間=TEN」「逆行する10分間=NET」の二つに分かれ、2チームで敵を挟撃するという作戦が、TENETという言葉に象徴されているのです。

また、TENETという言葉は、Sator Square(セイター四角形)という有名なラテン語の回文に出てくる言葉でもあるようです。

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https://en.wikipedia.org/wiki/Tenet_(film)

この回文に出てくる5つの単語は、全てTENETの映画内で重要な意味を持っています。面白いですね。

Sator :セイター(敵の武器商人)
Arepo:贋作の絵の作者の名前
Tenet:テネット(映画の題名)
Opera:映画の最初のシーン
Rotas:空港のFREEPORTを建てた会社

さらにTENETには、この「10分間の時間挟撃作戦」以外にも様々な意味や含みがあるようですが、これについては自分もまだよく分かっていません笑。

考察3. ニールは死亡する!?クライマックスシーン解説

『TENET テネット』のクライマックスである、時間挟撃作戦について解説・考察します。このシーンのラストでは、ニールが名も無き男に対し、「僕を任務に誘ってくれたのは未来の君だ」と告白します。そしてニールは、「洞窟の鍵を開けられるのは自分しかいない」と告げて過去に逆行していきます。

このラストシーンの後、過去に逆行したニールは名も無き男を助け、なんと自分は死ぬことになります!

映画での出来事を時系列に並べると、下の図のようになります。

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主人公とニールの視点に分けて順に解説していきます。

時間を順行し続ける主人公の視点はシンプルです。洞窟への侵入に成功するも、入口が爆破で塞がれてしまいます。構わず前に進みますが、今度は鍵のかかった柵に行く手を阻まれてしまいます。絶体絶命と思われたその時、柵の向こう側にいた死体がいきなり蘇り、鍵を開けてくれるのです。プルトニウムを取り返すも、入口は塞がれていて帰れない。そこにが現れて、10:00の爆発の瞬間で脱出に成功します。

一方、逆行チームに属していたニールは、途中で順行に切り替え、最後にまた逆行します。その結果、同じ空間に3人のニールが同時に存在するという現象が起きています。

まず、逆行していたニールは、入口に爆弾トラップが設置されたことに気づきます。これを主人公に知らせようと時間を順行し、車に乗ってクラクションを鳴らすも失敗。そこで、脱出のための作戦を変更。洞窟の上に回り、車に繋げた縄を投げ込んで10:00の爆発の瞬間に名も無き男を助けます。

その後もう一度時間を逆行すると、洞窟に入って鍵を閉めた後、敵に撃ち殺されて死んでしまいます。名も無き男を助けた蘇る死体は、なんと逆行して死亡したニールだったのです。

ただし、この順行と逆行の入り混じる世界では、因果関係が交差するため違和感が残ります。「鍵は元々閉まっていた。」だから、ニールは時間を逆行して鍵を開けなければなりませんでした。しかし見方を変えれば、「逆行したニールが鍵を閉めたから鍵が閉まった」とも捉えることができます。

三次元空間に住み、時間の流れで因果関係を捉える人間には理解できない矛盾・パラドックスなのかもしれません。


※ニールと主人公の出会い

自分は、「ニールの死亡」には映画を見ている間は全く気づきませんでした笑。それよりも、ニールを誘って時間挟撃作戦の実行部隊を作ったのは「未来の名も無き男だったのか!?」という事実が衝撃的でそっちに気を取られていました。

未来の名も無き男はニールを誘い、ニールは過去へ逆行する。そして、インドで初めて名も無き男がニールに出会った時、ニールは「任務中にお酒は飲まないんでしょ?」とコーラを頼む。早くTENETをもう一度見直して、このシーンでニールが一体どんな表情をしていたのか、見てみたいです。

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さらに、ラストシーンでニールと話す名も無き男のこの表情

涙目になっていたのは、「ニールはこの後死んでしまうのだ」と気づいたから。同時に、「自分はニールと未来でまた出会うことになる。そして、死んでしまうことを分かっていながら、ニールを任務に誘うことになるのだ」という運命を感じたのでしょう。今思えば、もの凄い深い意味のあるシーンでした。

※ニール=キャットの子供説

ネット上でTENETのことを調べると、ニール=マックス(キャットの子供)説というものが出てきます。
自分が映画を見た後は全く気づきませんでしたが、確かにそれを匂わせるところが多々あるようです。TENETのラストシーンも、名も無き男がキャットとその子供を守るところですし、ニールとセイターだけエストニア語を話すという事実もこの説を匂わせています。

これ以外にも、てネットの中には自分自身まだ気付いてすらいない謎が沢山ありそうです。二回目を見るのがめちゃめちゃ楽しみになります。

4. 感想-『TENET テネット』の面白さとは!

さて、他にも整理・考察したいシーンや謎はいっぱいありますが、まとめるのが大変なのでここまでにさせてください!笑

最後に、『TENET テネット』を観た自分の感動と感想を、皆さんと共有させてください!

感想①:時間が逆行するという未知体験が楽しすぎる!

正直TENETは、物語の中盤にかけては退屈でした。名もなき男がなんのために任務に取り組んでいるのかも良く分からないし、ストーリー自体はよく有るスパイもの。”時間が逆に進む(逆行)”とか、"第三次世界大戦”とか、キャッチーな言葉を並べただけで、ストーリー自体はさほど面白くない。途中で眠くなってました笑

それが時間の逆行が始まってからは一変!見たことのない刺激的な世界観と、複雑な描写に圧倒されました。「逆再生の動画と順再生の動画を同時に流す」というクリストファー・ノーランの操る手法が、TENETの映像に未知の迫力と物語の複雑さをもたらし、後半はずっと大興奮でした。

「時間を順行する世界と逆行する世界が同時に存在する」という状況は、誰もが初めての驚き溢れる未知体験だったと思います。

特に初めて主人公が回転ドアで”逆行”を体験するシーンは鮮烈。元に戻っていく水しぶき、後ろに飛んでいく鳥に後ろに進む人間と車。これがリアルにあったらどんなに面白いだろう!?とワクワクさせられました。

感想②:頭が嘘みたいにごちゃごちゃに掻き回される

時間が逆行するという人間にとって未知なる現象が入り乱れることで、TENETの物語には異様な複雑さが生まれます。

伏線が気持ちよく回収され、「そうか!」とパズルがはまる面白さもあれば、いつまで経っても「分からない!意味不明!」と混乱させられ、頭が揉みくちゃにされる面白さもあります。

一度映画を観れば、次の日までこの映画の世界からは抜けられません。

感想③:いや、これどうやって撮影してるん!?

逆行する人物と順行する人物が絡み合うアクションシーンやカーチェイス。
見たことのない刺激的で面白い映像に、気づけば心を奪われてしまいます。

そしてその滑らかな映像は、撮影した映像の単純な合成やCGだけで作られている訳ではありません。『メイキング・オブ・TENET テネット』を読んでみると、ノーランが実写にこだわり、できる限りCGを使わないために大変な労力を使っていることが分かります!少し高い本ですが、この映画の裏舞台が凝縮された一冊になっているので、TENETをもっと楽しみたい方にはオススメです。

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知れば知る程、面白い!

『TENET テネット』は、一度見るだけでは到底全てを理解することはできません。映画を見た後に考察してみると様々な発見と驚きがあります。一度見た瞬間から、2度目、3度目が楽しみになる映画です!

*参考
自分は過去に、時間論に関する本を読んだことがありエントロピー増大の法則など、時間の概念に触れたことがあったので、TENETの世界観は比較的すんなり入ってきました。映画を観て、今の物理学が説明する『時間』とは何なのか、興味を持った人は是非読んでみてください。

執筆者:養田峻介


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